コミックナタリー Power Push - 「テラフォーマーズ リベンジ」

バトルやギャグ描写から生まれる“生き様感”

週刊ヤングジャンプ(集英社)にて連載中の貴家悠原作、橘賢一作画「テラフォーマーズ」。同作のアニメ第2期にあたる「テラフォーマーズ リベンジ」の最終話が6月24日に放送される。第2期ではクールで重厚感のある演出のもと制作された第1期とは打って変わり、コミカルな演出も交え親しみやすい表現をもってストーリーを描いてきた。

コミックナタリーでは最終回の放送に合わせ、福田道生監督と大森啓幸プロデューサーの対談をセッティング。2人が考える作品の魅力から、「“生き様感”を見せたかった」という2期の裏話、同時期にメディアミックス展開された実写映画版「テラフォーマーズ」についてや、アニメDVD-BOXを超安価でリリースする意図について聞いた。

取材 / 宮津友徳 文・撮影 / 松本真一

福田道生監督×大森啓幸プロデューサー対談

「リベンジ」では親しみやすい表現を目指した(福田)

──第1期終了から「リベンジ」放送まで約1年3カ月と期間が空きましたが、1期の時点で2期を制作するというのは決まっていたんですか?

(奥から)大森啓幸プロデューサー、福田道生監督。

大森 決まってないです。とはいえプロデューサーって誰しも、1期で完結しなかったアニメは常に続きを作りたいものだと思うんですよ。でも自費で作れるものでもないですし、多くの力を集結させないといけないので。幸い「テラフォーマーズ」は2期が決まり、制作会社さんや集英社の方と「監督は誰にしよう」って相談して。「この方はどうだろう」という話し合いがあって、福田さんに連絡するという流れになったんです。福田さんは最初に監督の依頼があったとき、悩みませんでした?

福田 そりゃ悩みますよ!

大森 やっぱりまっさらじゃなくて前作があると、余計に悩みますよね。

福田 ただ1期でもちょっとだけ絵コンテでお手伝いした手前もあるし、大森さんなり集英社のプロデューサーの篠崎さんなりに口説かれてしまいまして(笑)。

──2期の監督を受けることになり、「こういうふうにしたい」という具体的なイメージはあったんでしょうか。

「テラフォーマーズ」より。

福田 まず1期の浜崎(博嗣)監督と違う人間が呼ばれている以上、やっぱりテイストを変えるというのは大前提なんだろうなと思いました。個人的に1期というのはとてもクールで、ホラーテイストで重量感のある作品だなと感じていて。そこからちょっとだけクールさを減らして、ベタな感じにするのがいいのかなと。だからキャラクターなんかに関しても、マンガ的と言うか、親しみやすい形になればいいなという解釈でやってますね。

大森 お客さんにとってはもうちょっとストレートでわかりやすいというかね。浜崎さんのアニメは、シーンごとの迫力がすごくて、カッティングエッジ(最先端)な感じが強かったんですよ。そこはやっぱり浜崎さんや、一緒にやってきたスタッフの持つ強さとか力量なのかなと思います。ただ2期ではそれよりも、往年のジャンプマンガのアニメみたいな、わかりやすい感じにしたかった。叫びとか怒りとか、根源的な感情が大事なんじゃないかと思って。福田さんからもそういう話が出たときには、なんとなく心がリンクしたのかなって思ったんですけど。

福田 もうなるべくシンプルなほうがいいなと。

原作の2人からは「熱くやっていただければ」と(大森)

──1期との違いとしては、SDキャラが出てきて喋ったりするのも特徴的です。

「テラフォーマーズ リベンジ」より。

福田 原作にはコマの端っこでキャラがボソッとギャグっぽいことを喋るシーンもあるじゃないですか。そういうテイストをアニメの中にも入れ込みたいと思ったんです。

──2期ではそういうギャグっぽい演出が増えてますよね。

大森 増えるっていうか、1期にはほとんどなかったですからね。

福田 ハードなストーリーの中に、ところどころにギャグの描写が挟み込まれているっていう原作の世界観を見せるために、ちょっとだけ盛り込んでいるっていう感じですかね。

──2期を作るにあたって貴家悠先生、橘賢一先生から何か要望はあったんでしょうか。

大森 2人ともあれやこれやおっしゃる方ではないんですよ。「熱くやっていただければ」ぐらいで。

福田 そうですね。実際進めているシナリオの中で間違っている部分があれば、「これはこういうふうに思っていて」みたいな方針を教えてもらう感じ。

「テラフォーマーズ リベンジ」より。

大森 「このキャラクターはマンガで描かれてないときは、どこで何をしてるの?」っていうことってあるじゃないですか。そこをアニメで勝手に描いてしまうと、将来整合性が取れなくなってしまうこともあるから、そういった部分を正してもらったり。

福田 あとは細かい部分で、「マンガのこのシーンは、ぜひこういう演出でやってほしいんですよ」ってオーダーもありました。例えば第9話で爆が操る脱出機を、ジョセフが小型航空機で追いかけるシーンですね。航空機がウイリーして、脱出機の後輪を利用してビューンって上に飛ぶんですよ。マンガでも描いている部分ではあるんですけど、「もしかしたら伝わりづらかったかもしれない」ということで、「ぜひアニメでは詳しく描いてください」と。

──確かにあそこは原作よりわかりやすく、派手になっていました。

大森啓幸プロデューサー

大森 俺ね、あのシーン好きなんですよ。ハリウッドの映画みたいでしょ。

福田 あそこは撮影さんがいい感じにがんばってくれました。あの臨場感って撮影さんの力なくしては出ないものですね。

大森 力量が問われそうですよね。録画してる方はもう1回観直してほしいです。

アニメ「テラフォーマーズ リベンジ」

テラフォーマーズ リベンジ」

⻄暦2620年。火星生まれの致死率100%の病原体、エイリアンエンジンウィルスのワクチン製造のため、異常な進化を遂げた人間大のゴキブリ、通称「テラフォーマー」のサンプルを確保するべく、膝丸燈らは火星へと降り立った。

想定外のアクシデント、テラフォーマー達の猛攻を受けながらも何とか生き延びた燈達であったが、任務遂行の裏で人類同士の争いが勃発する……。火星を舞台にした極限のサバイバル、その第2ラウンドが今始まる!

放送局

TOKYO MX、ABC朝日放送(ABC)、テレビ愛知(TVA)、BS11、テレ朝チャンネル1

キャスト
  • 膝丸燈:細谷佳正
  • 小町小吉:木内秀信
  • ミッシェル・K・デイヴス:伊藤静
  • マルコス・エリングラッド・ガルシア:石川界人
  • アレックス・カンドリ・スチュワート:KENN
  • 鬼塚慶次:小野大輔
  • 三条加奈子:たかはし智秋
  • 柳瀬川八恵子:豊崎愛生
  • シルヴェスター・アシモフ:石塚運昇
  • イワン・ペレペルキナ:赤羽根健治
  • リュウ・イーウ:小村哲生
  • ジョセフ:石田彰
  • 蛭間一郎:杉田智和
Blu-ray Disc「テラフォーマーズ リベンジ Vol.1」 / 2016年6月22日発売(以降毎月リリース、全7巻) [Blu-ray Disc+CD] 6912円 / ワーナー・ブラザースホームエンターテイメント / 1000603669
「テラフォーマーズ リベンジ Vol.1」
Amazon.co.jp限定 初回仕様版
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イベントチケット優先購入抽選申込券(出演:細谷佳正、伊藤静、木内秀信、KENN、たかはし智秋ほか)、オリジナルミニドラマCD VOL.1「オーバー ザ トップ6」ほか豪華特典付き。

福田道生(フクダミチオ)

アニメーション監督。代表監督作品は、テレビアニメ「テラフォーマーズ リベンジ」「ぬらりひょんの孫~千年魔京~」「Hybird Child」「迷い猫オーバーラン」(第5話)など。

大森啓幸(オオモリヒロユキ)

アニメプロデューサー。2012年春よりワーナーブラザース ジャパン合同会社に所属する。2016年6月現在担当している作品は、テレビアニメ「テラフォーマーズ リベンジ」、テレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」ほか。