コミックナタリー Power Push - 絹田村子「さんすくみ」

「最注目新人」が愉快に描く 寺・神社・教会ジュニアのゆるふわデイズ!

いくつかの条件に合致するとロックオンするんです

──コミックナタリーでは2010年の2月に、武者さんにインタビューしてるんです(Power Push「月刊flowers」)。その取材のとき「絹田村子ってのがいてね、いいんですよ。すごくいいんですよ」っておっしゃっていましたね。あれはどこがピンと来たんですか。

武者 話せば長くなりますけど、長年(編集者を)やってるうちに「こういう人」っていう、ピーンと来るポイントっていうのが僕の中にはあって。ひとつには姿勢ですね。本人のマンガに対する姿勢。周囲に言われたからやるとか反対されたから止めちゃうとかじゃなくて、もっとこう作家的な、作家魂みたいなものがちゃんとあるかどうか。

──テクニックじゃないわけですね。

武者 テクニック面で言うならセリフですね。セリフがいかに自然かっていうのを。吹き出しの中のセリフとコマ割が自然に流れてれば大体もう大丈夫っていう。絵柄ももちろん見ますけど、絵はみなさん、放っといても上手くなっていくんで。あと人柄が謙虚で熱心な人っていうのかな。そういういくつかに合致するとロックオンされるんです、僕に。

絹田 ロックオン。

武者 一度見始めると、ずーっと僕は見続けるんですよ。デビュー前、デビュー後、10年後、20年後。絹田さんは見始めたのは2年ぐらいですけども、担当じゃなくなっても、いまあの雑誌で描いてるな、いまごろネームだろうな、取材行ってるのかなーとか、いつもどこかで思ってる。

絹田 ありがとうございます。

住職の息子・孝仁は霊感が強いが、オカルト方面は大の苦手。

──なるほど、武者さんの心のウォッチリスト入りしたわけですね。では真島さんは連載前の絹田さんの印象ってどんなでしたか。

真島 とにかくアンケートが良かったんですよね。「読経しちゃうぞ!」のときの読者の反応が。それで絹田さんを連載作家にしようという話になったんですけど、実はそのとき、「読経」を連載にするか「花食う乙女」(flowers別冊凛花でのシリーズ連載)にするか、っていうのがあったんですよ。

絹田 そういえばそうでしたね。凛花のほうを連載にするかっておっしゃってましたね。

真島 それで「読経」に決まったのはやっぱりキャラクターだと思うんです。私もこの3人がすごくいいと思っていて。ああ、ただ、どのくらい(の話数が)作れるのかなってのは考えましたね。その頃はあんまり取材無かったですよね?

絹田 ええ、取材はなくて1人でやってたんで。まあ今は資料がいろいろあるんで、ネタは何かしら見つけていたんですけど。

聞いたら「コーヒーとスイカに要注意」って

真島 っていう話を聞いて、連載で毎月描くとなるとこれはちょっと、ネットとか本からの取材ではすぐ限界が……というか大変なことになると思ったので、編集長に取材に行く許可をいただいて。それからはかなり頻繁に行きました。

──頻繁っていうのはどんなペースでしょう。

絹田 私が上京したときに一気にまとめて行くって感じだったんですよ。神社→お寺→教会→神社!みたいな。

真島 連日の神社→寺→教会です(笑)。最初はどこに連絡したものかわからなかったのですが、この代々木八幡さんはどうやら過去にも取材を受けたことがあるらしいと聞きつけまして、まずはここに申し込みました。

──実績があるところに(笑)。やっぱり断られたりするものですか?

真島 それが、もう15カ所は行ってるんですが、一度も断られたことはないんです。最初の心配は杞憂でした。

──やっぱり取材するのとしないのとでは、ぜんぜん違いますか。

インタビュー写真

絹田 それはもう。行事とかうんちくは本にだって載ってるんですよ。でも普段のことというか、「こういう人がいて」とか「こういうことがよくあって」みたいな、本に載るはずもないちょっとしたことが、実はネタになったりするんで。

真島 最初は真面目なお話から始まるんですが。話が盛り上がってくるとですね、結構うちとけていただけるみたいで楽しいエピソードを話して下さるんですよ。

絹田 今月号(2011年6月号)でもう使っちゃったんですけど、お寺にはお盆の時期に檀家さんを巡る棚経っていうのがあって、家を回るごとに絶対にお菓子を出されるんだけど、お腹壊しそうになったり。お坊さんはやっぱり出されたものは残しちゃいけないので、絶対に食べないとだめなんです。中でも「コーヒーとスイカは要注意」って。

武者 家庭訪問の先生みたいですね。

絹田 ほかにもお経を上げてたらバチに猫がとびついたり、子供に後ろからポカって叩かれたとか。坊主頭が珍しいから。

──あれがおかしかったです。神社の子の家では、ファストフードを食べちゃダメだっていう。

絹田 あれは私が適当に考えた創作です(笑)。家が厳しいとこんなかな、とか。

──あと自動卒塔婆削り機。あんなのどこかの取材で見たんですか?

絹田 あれはこの前行ったお寺で、神社仏閣の業務用品カタログをもらったんです。もう要らないからあげるって。それに鐘鳴らし機とかも載ってるんです。

「さんすくみ(2)」 / 2011年5月10日発売 / 420円(税込) / 小学館 フラワーコミックス

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「さんすくみ(1)」 / 2010年11月10日発売 / 420円(税込) / 小学館 フラワーコミックス

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あらすじ

神社の息子“ヘタレ”恭太郎、寺の息子“ビビリ”孝仁、教会の息子“ホラーマニア”工。そろいもそろって宗教法人ジュニアの同級生というズッコケ3人組が織りなす、愛と感動と祝福の爆笑コメディ!

「読経しちゃうぞ!」 / 2011年3月10日発売 / 420円(税込) / 小学館 フラワーコミックス

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絹田村子(きぬたむらこ)

絹田村子

9月24日生まれ奈良県出身。第36回コミックオーディション銀の花賞受賞を受賞した「道行き」が、月刊flowers2008年9月号(小学館)に掲載されデビューした。読み切りシリーズをまとめた初単行本「読経しちゃうぞ!」を2010年に刊行。月刊flowers2010年4月号から、「読経しちゃうぞ!」の設定を引き継いだ「さんすくみ」を連載している。月刊flowersの増刊誌・凜花でも「花食う乙女」を連載中。