30代の女性が読む魔法少女もの

──「猫と私の金曜日」ともう1本、メロディ（白泉社）でも新連載「31☆アイドリーム」が始まりました。こちらは中高生が対象の「猫金」よりもさらに大人の、20代、30代に向けたマンガです。

「アイドリーム」は、とにかくトーンを貼らないように、目を小さくするように、私らしいコミカルなシーンを入れないように、「種村さんらしさを全部取ってください」と編集さんに言われたんです。新しい、私のマンガが読みたいとおっしゃってくださって。

──背景も効果が中心だったりぼんとは違い、写実的でとても新鮮でした。

トーンが少ない代わりに背景が多いので、アシさんには苦労させてますね。でもアシさんも20代後半から30代の子が多いので、楽しんでやってもらえてます。いただく感想がリアルですね（笑）。あとファンの子もそれなりに育ってきているので、20代後半の読者さんには割と好評をいただいてます。

──「アイドリーム」は30代のこじらせ女子がモテていた15歳の頃に若返るというお話ですが、この着想はどこから？

編集さんが最初に「30代の女性が読む魔法少女ものが読みたい」とおっしゃられたんです。それってなんだろうっていろいろ考えてたときに、テレビでアイドルの女の子が歌ってて。それを見て「私があと15若かったらなー」って思って、「逆変身少女ってどうだろう」ってふと思いついたんです。普通、変身ものって「クリィミーマミ」みたいに10歳くらいの子が16歳くらいに変身するのが王道じゃないですか。でもいまどきの子は10歳でデビューできるので、別に大人になりたいとか思わないんです、きっと。女だったら、変身するなら絶対若くなりたいって思うはずじゃないですか！ お肌もツルツルだし、ちょっと走ったくらいじゃ疲れないし（笑）。

「猫金」と「アイドリーム」は補完関係

──若返りは女性の永遠のテーマですね。主人公の千影も、また種村先生の主人公にはいなかったタイプです。気弱で言いたいことがはっきり言えない性格という。

私がいままで描いてた女の子って、かわいくてモテる子だったんです。それは、私がブサイクな女の子を描きたくなかったという理由なんですが。私は、自分が好きになれる子じゃないと描きたくなかったんです。最初は千影も私みたいに気が強い、1人でバリバリ仕事してるキャリアウーマンにしようと思ったんですけど、担当さんに共感できないと言われてたのでひ弱な感じにしました。もう、ずっと千影にイライラしながら描いてます。「お前、言い返せよ！」って（笑）。こんな主人公描いたことなかったので、まさにチャレンジですよ。

──髪も短くて、見た目もこれまでの種村先生のキャラにはいなかったタイプですね。

メロディさんでやらせていただくときに「やっと髪の短い子が描ける！」と思いました。やっぱり小学生の女の子はとにかく髪が長い子が好きなので。桜姫なんて床に付くくらい長いじゃないですか。あれはもう、とにかく作画が大変なんです。あとりぼんだとほかの登場人物もとにかく美形揃いじゃないと人気が出ないので、美形で固めてたんですが、今回、やっと上唇があるキャラが描けました。こういうの、りぼんじゃ怒られるんですよ。ちょっとでもリアルな線とか、鼻の穴も描いちゃいけないんです。思い切ってかわいくない子が出せるのも楽しいですね。

──新しい発見がいろいろありますね。

そうなんです。「猫金」でできないことを「アイドリーム」でやって、「アイドリーム」でできないことを「猫金」でやったりもしてますね。「猫金」は気持ちを描いていくマンガで、「アイドリーム」は出来事を描いていくマンガなので、使っているマンガ脳がまったく正反対なんです。また「猫金」はライトに、モノローグも凝らずにやっているんですが、「アイドリーム」はモノローグも凝ってみたり。きちんと分けて描けるので、いい気分転換になってます。

──補完関係にあるんですね。

「猫金」が詰まってないとか、物足りないなと感じる人は「アイドリーム」を読んでもらいたいし、「アイドリーム」で萌えが足りないとか、キュンキュンしないっていう方がいらっしゃったら「猫金」を読んでもらいたいですね。