コミックナタリー Power Push - 少年マガジンR

2015年の新創刊マンガ誌が放つ、今が“読みどき”の新作 城平京×片瀬茶柴による本格ミステリ「虚構推理」に迫る

2015年4月に創刊された少年マガジンR(講談社)。「絶園のテンペスト」の城平京が原作を担当する「虚構推理」、創刊号の表紙を飾った「欲鬼」、Web発の話題作「まじめ系クズの日常」、発売即重版が決定した「今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね」と、早くもR発の単行本が出揃ってきた。

コミックナタリーでは、いずれも1、2巻が発売されたばかりの少年マガジンRの6作品を紹介。「虚構推理」のマンガを手がける片瀬茶柴へのインタビューをはじめ、「欲鬼」の色原みたびと「まじめ系クズの日常」のナンキダイに、自作の見どころを語ってもらった。

取材・文 / 三木美波

「虚構推理」

読みどきマンガ①「虚構推理」

原作:城平京 漫画:片瀬茶柴

怪異たちの知恵の神になった少女と
怪異に恐れられる青年に降りかかる、奇想天外な事件

怪異たちにさらわれた11歳の少女・琴子は、彼らの願いを聞きそのものたちの知恵の神になる。成長した琴子は、とある理由から怪異に恐れられる青年・九郎に一目惚れ。結婚を前提に付き合ってほしいと告白する。

それから2年後、九郎の元カノで警察官の紗季は、ドレスをまとい鉄骨を携えた顔のない女性「鋼人七瀬」の都市伝説を聞く。紗季は帰宅途中に「鋼人七瀬」と戦っている琴子と出会い、死んだアイドル・七瀬が関わる事件解決に向けて3人はそれぞれ動き出す。

片瀬茶柴インタビュー

どうやってこの作品をマンガ化するんだろう?

──初単行本発売、おめでとうございます! 発売直後に重版が決まったとも聞いております。今の率直な気持ちをお聞かせください。

ありがとうございます。うれしいという気持ちと、やっぱり城平先生の作品はすごいなあという気持ちです。でも、先々の不安も大きいです。

10月に発売された「虚構推理」1巻。

──「虚構推理」は城平京先生の小説「虚構推理 鋼人七瀬」のコミカライズ作品ですが、片瀬先生はこの作品をもともとご存じだったんですか?

実のところ城平先生の作品は読んだことがなくて、コミカライズのお話をいただいてから初めて読みました。

──読んでみていかがでしたか?

なぜもっと早く読んでいなかったんだ! と後悔するくらい惹きつけられてしまいました。読み終えた満足感の後、「どうやってこの作品をマンガ化するんだろう?」とも思いましたが(笑)。

──妖怪、都市伝説、恋愛とてんこ盛りな内容ですものね。

「虚構推理」は恋愛、伝奇、ミステリーを軸にした物語。

はい。「虚構推理」のキャラクターと世界観の設定がとても魅力的で、一気に引きこまれて、その設定が生かされた斬新な物語に終始わくわくしながら読み終えました。城平先生は現在「天賀井さんは案外ふつう」を月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)で連載されていますが、いつも自分の原稿後の楽しみにしています。

──すっかりファンになったということですね。城平先生とはマンガを描くにあたり、どのようなやり取りをされているんですか?

初めての打ち合わせの際に「面白いと思うことを、面白いと思うように描いて下さい」と言われまして。実は城平先生の監修はなしになったんです。

──なるほど。1巻のあとがきに掲載されている城平先生の挨拶文を拝読すると、マンガ版「虚構推理」をとても楽しんでいる様子が伝わってきました。

いつも編集さんを通して丁寧な感想を送ってくださって、楽しんでいただけているようでとてもうれしいです。私としては未熟な点には文句を言ってもらって、ネーム作りのヒントをもらえないだろうかという下心は常々持っているのですが、なかなか聞き出せません(笑)。

──監修なしだと、やはり城平先生の感想が気になりますよね。

先生との打ち合わせの後、監修なしという現実を私の精神の安定のためにひとまず忘れようとしたのですが、時間の経過とともに本当に忘れてしまい……。その後もネームくらいは見てくれるはずだとなぜか思い込んでいました。後日編集さんに「見ないって言ってましたよね」と言われたときは大変驚いて……。都合のいい記憶を捏造してたみたいです(笑)。

小説をそのままの流れで描くものと思っていたんです

──城平先生から全幅の信頼を寄せられているということだと思います。マンガ独自のアレンジなどはしていらっしゃるんですか?

ところどころ変更点はありますが、ほぼ原作通りです。1巻だと、1話で落ち武者やタヌキが出てくる場面と、九郎と琴子が図書館で妖怪を退治するシーンがオリジナルの展開ですね。

──落ち武者やタヌキはかわいかったですし、妖怪退治のシーンは迫力満点でしたね!

「虚構推理」第1話より。

実は連載前は認識の甘いことに、小説をそのままの流れで描くものと思っていたんです。でも編集さんに「1章は省くか、描くなら盛り上がりを入れてください」と言われてしまいました。

──マンガに適した構成をするにあたり、独自の盛り上がりが必要になってくるんですね。

はい。原作は静かに始まりますし、マンガ連載の1話目だから盛り上げてと言われるのも納得なのですが、やっぱり難しくてうなりながらネームを描いていました(笑)。変更点についてはこんな感じで編集さんに助言をいただくことも多いです。

──なるほど。コミカライズするにあたり、心がけていることを教えていただけますか?

城平先生に言われたことを前提に、原作を未読の方にも、既読の方にも楽しんでいただけるのがいいのではないかなと思っています。

──「面白いと思うことを面白いと思うように描いて下さい」というアドバイスですね。

ええ。とは言いつつ原作の文章を気にしすぎたり、なかなかうまくいかないところもあります。難しいですが非常に楽しいことをさせてもらっているなあと思います。

少年マガジンRの“読みどき”マンガ6作
原作:城平京漫画:片瀬茶柴「虚構推理」2巻
色原みたび「欲鬼」1巻
ナンキダイ「まじめ系クズの日常」1巻
原作:要マジュロ漫画:榊原宗々「今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね」1巻
樋口紀信「ディクテーターズ―列島の独裁者―」1巻
加藤元浩「Q.E.D. iff―証明終了―」2巻

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片瀬茶柴
片瀬茶柴(カタセチャシバ)

少年マガジンR1号にて「虚構推理」連載スタート。今作がデビュー作となる。