「僕のヒーローアカデミア」堀越耕平インタビュー|“ヒーローとはなんなのか?”自問しながら描く

原作では描けないデクとオールマイトの共闘が劇場版に

──ではここからは8月に公開される映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」についてお話を伺っていければと思います。映画化が決定した際、どのようなお気持ちでしたか?

映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」のビジュアル。

またまた嘘でしょ、みたいな感じでした。実は映画化するかも……という話は前からあったんですけど、なかなか信じられなくて。話がだんだん進んできてスタッフの方たちと会議をするようになっても、どこかで企画がなくなっちゃうんじゃないかなと半信半疑でした。映画のためにいろいろな人に時間を割いてもらっているのに、僕が全然信じていなかったのは今考えると失礼な話なんですが。

──堀越先生は映画に総監修、キャラクター原案という形で関わっていらっしゃいますが、具体的にはどういう仕事をされたんですか。

  • 堀越耕平が描いたメリッサの設定イラスト。
  • 堀越耕平が描いたデヴィットの設定イラスト。

メリッサやデヴィット、敵〈ヴィラン〉のウォルフラムといった映画オリジナルキャラクターのデザインをさせていただいたり、映画をどんな物語にするか、何をするのか、長崎(健司)監督はじめスタッフの方と話し合ったりしましたね。あと上がってきた台本を読んでそれらの方向性について意見出しもしました。

──映画スタッフとはどういったことをお話されたんですか?

原作第1話のリフレインじゃないですけど、デクがきちんとがんばる話にできたらなと伝えました。あとは「僕のヒーローアカデミア」を知らない人が映画単体で観ても楽しめるようなものにしたほうがいいよねというのと、映画だからデクたちをどこかに出かけさせたいっていう(笑)。

──舞台になるのは海外に浮かぶ巨大都市で、若きオールマイトが留学していたという設定でアメリカの町並みも出てきますね。

映画には若き日のオールマイトのエピソードも盛り込まれる。

僕の中でキャラクターごとに年表を作っていて、オールマイトにはアメリカ留学という経歴があったので、そこの部分を膨らませた形です。

──拝見させてもらった予告映像の中だと、やはり戦闘シーンの作画に力を入れているんだろうなと感じました。

そうですね。僕も完成版はまだ観ておらず、ラッシュ映像を観た限りでの感想なんですが、キャラがめちゃくちゃ動いていたので、ぜひ映画館で観てほしいです。あとは原作では描いてこなかった、デクとオールマイトの共闘も見どころです。

──原作のオールマイトは力を失ってしまったので、デクと共闘するというのは現在の時間軸では描けないシーンでもありますよね。

はい。映画はオールマイトとオール・フォー・ワンが戦う前のお話で、共闘シーンは今後の原作では見られないシーンになっているので、楽しみにしてほしいです。

厳選した4つの質問に回答

──実は映画のプロモーション企画の一環として、Twitter上で堀越先生への質問を募集したのですが、今回はその中から厳選した4つの質問にお答えいただければと思います。

あっ、選ばれた4問なんですね。事前に企画については伺っていたのですが、4つしか来なかったのかと思っていました(笑)。

──100問100答ができる以上に集まっていましたよ(笑)。では最初の質問です。「雄英高校にも部活動はあるんですか? また1-Aの子達が部活動に所属しているとしたら何部だと思いますか?」。

雄英高校の普通科に所属している心操人使。

雄英高校には普通科とか経営科もあるので、一応部活はあります。ただヒーロー科の子たちは、普通は入りません。もちろん入るのは自由なんですが、なかなか活動に参加できないので。もしかしたら普通科に所属している心操絡みで、今後本編にも少しだけ部活の話題が出るかもしれません。

──例えばデクや勝己は堀越先生の中では何部だと思いますか?

デクは映像研究会とかでしょうか。勝己は何部だろうな……喧嘩部?

──ボクシング部とかではないんですね(笑)。

ルールに縛られるのを嫌がりそうですし、ボクシングはしないんじゃないかな。そもそも部活にも入らないかもしれません。

──では続いての質問です。「堀越先生ご自身の体験が基になった心の動きや台詞などはありますか?」。

オールマイトの家庭訪問に際し、息子との過去を回想するデクの母。

これはもうめちゃくちゃあります。例を挙げると、11巻に幼い頃のデクがお母さんとごっこ遊びをするシーンがあるんですが、それは僕が実際に母親とやっていたことなんですよ。ちょっとシチュエーションは違うんですけど、当時のデクと同じくらいのときに公園に遊びに行って「ジャングル大帝」ごっこを母親としていたんです。母がジャングルジムの中に入って「助けてレオー」って叫んで、レオ役の僕がそれを助けるっていう遊びが印象に残っていて。その思い出を描いています。読んでいる人にとってはなんでもないコマですけど、僕はこのコマを描きながら泣いてました。

──「僕のヒーローアカデミア」の中には、堀越先生の体験がちりばめられているんですね。

そうですね。16巻に出てくる天喰の転校のエピソードも僕の実体験を元にしています。

──転校してきたばかりでクラスに馴染めなかった天喰が、ミリオと仲良くなったのをきっかけにクラスの輪に入っていく話ですね。

ミリオは机に突っ伏す天喰に声をかける。

僕は小学校から中学校に上がるときに、学区外の中学校に通うことになったんです。学区外なので知ってる人が1人もいないような状況だったのと、ほかの人は持ち上がりだったのでグループができあがってしまっていて、独りで机に突っ伏しているような悲しい時代があって(笑)。

──そこからミリオのような存在の友人ができたと。

はい。「君はそんな暗い人間じゃないはずだ」って言ってくれて、クラスの輪に入れてくれた子がいて。なんかこの話気持ち悪いですよね(笑)。

──そんなことないですよ!

天喰が好きな読者からしてみたら、こんなエピソード聞かされるの嫌じゃないかな。「堀越の思い出だったのかよ」って。でもそういうふうにキャラに自分の思い出を入れると、すごい気持ちが乗ってくるんです。

──では3つ目の質問です。「堀越先生が『この“個性”あったら使ってみたい!』と思うのは誰のどんな“個性”ですか? ちなみにどんなところで使ってみたいですか?」。

轟は「右で凍らせ左で燃やす」という半冷半燃の“個性”を持つ。

これは轟です。僕は暑いのが苦手なので、暑いときに周りを冷やしたいです。轟を描くときはよく「この“個性”いいな」と思っています。

──すごく実用的な内容ですね(笑)。それでは最後は「マンガ家を目指したきっかけを教えてください」という質問です。

ちっちゃいときから絵を描くのが好きで、当時絵を描く職業といえばマンガ家しか知らなかったんで、「マンガ家になるぞ」と思っていたんですよ。エピソードを挙げるとすれば、僕は小学生時代「ロックマンX2」に出てくる、クリスター・マイマインっていうキャラを描くのが好きだったんです。その絵を友達が褒めてくれて「この絵ちょうだい!」って言ってくれたのがめちゃくちゃうれしくて、そのときになぜか「将来マンガ家になろう」と思った記憶があります。

ラストに向けて意味のある内容を描いている

──では最後に今後の「僕のヒーローアカデミア」の展開についても教えてください。堀越先生は以前、「僕のヒーローアカデミア」がSUGOI JAPANのマンガ部門を獲得した際の贈賞式で「なるべく短くまとめたいと思っている」とおっしゃっていましたが(参照:堀越耕平がSUGOI JAPAN贈賞式登場「弱い人から見た強い人を描きたかった」)、今は物語全体の何割くらいを描いたことになるのでしょうか。

堀越耕平

今後も連載を続けさせてもらえることを前提としたときに、自分の中で「これくらいで終わりたい」っていう巻数は30巻ちょっとくらいなんですよ。

──ではもう3分の2程度は描いているということなんでしょうか。

そのつもりだったんですが、少し前にあとどれくらいエピソードが必要かラストから逆算したら、「30巻だと無理だな」ってなりました(笑)。ただ、今やっているエピソードはすべてラストに向けて意味のある内容になっていて、最終回を意識したものになっているので、折り返しには来ています。

──本日のインタビューの冒頭で「『インターン編』では最終的に描きたいことに必要になってくるキャラクターを登場させた」とおっしゃっていましたが、終盤に向けてキャラクターも出揃ってきていると。

文化祭のエピソードでは、A組が耳郎を中心に出し物をすることになる。

役者は揃ってきていて、ここからキャラたちが動き始めていきます。まだ最終決戦ではないですが、僕の中ではラストを意識して描いています。

──19巻は文化祭など明るいエピソードも増えてきますが、新刊の見どころについてもメッセージをお願いします。

文化祭では耳郎というA組の女子にスポットが当たるんですが、かわいい顔をたくさん出せるように意識して描いたつもりなので、耳郎が好きな方はもちろん、これまでそんなに彼女を意識していなかった方も楽しんでもらえればと思います。

堀越耕平「僕のヒーローアカデミア⑲」
2018年7月4日発売 / 集英社
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コミックス
432円

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Kindle版
410円

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学校っぽいと言えば文化祭!! 最近、敵〈ヴィラン〉事件が続いてたからさ、ウチらの出し物で盛り上げてこうよ! 正直、ウチが役に立てるか不安だけど、ロックにキメてくよ! “Plus Ultra”!!

映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」
2018年8月3日(金)全国公開
「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」
あらすじ

白熱の期末試験が終わり、夏休みの林間合宿を控えた雄英高校メンバー。

デクとオールマイトは、ある人物からの招待を受け、海外に浮かぶ巨大人口移動都市〈I・アイランド〉を訪れていた。

世界中の科学研究者たちの英知が集まったまさにサイエンスハリウッドのような島で、“個性”やヒーローアイテムの研究成果を展示した〈I・エキスポ〉が開催される中、デクは“無個性”の少女・メリッサと出会う。

メリッサに、かつて同じ“無個性”だった自分を重ね合わせるデク。

その時、突如鉄壁のセキュリティを誇るアイランドの警備システムが敵(ヴィラン)にハッキングされ島内全ての人間が人質に獲られてしまう!

いま、ヒーロー社会の構造を揺るがしかねない【ある計画】が発動する──。

その鍵を握るのは、平和の象徴(ナンバーワンヒーロー)・オールマイト!

スタッフ

原作・総監修・キャラクター原案:堀越耕平(集英社 週刊少年ジャンプ連載)
監督:長崎健司
脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
音楽:林ゆうき
アニメーション制作:ボンズ

キャスト

緑谷出久:山下大輝
オールマイト:三宅健太
メリッサ・シールド:志田未来
デヴィット・シールド:生瀬勝久
爆豪勝己:岡本信彦
麗日お茶子:佐倉綾音
飯田天哉:石川界人
轟焦凍:梶裕貴
八百万百:井上麻里奈
切島鋭児郎:増田俊樹
峰田実:広橋涼
上鳴電気:畠中祐
耳郎響香:真堂圭
ウォルフラム:小山力也

テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」
毎週土曜17:30より読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネットで放送中
※一部地域を除く
堀越耕平(ホリコシコウヘイ)
堀越耕平
1986年愛知県出身。2006年に「ヌケガラ」で第72回手塚賞の佳作を受賞し、2010年に「逢魔ヶ刻動物園」で週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載デビューを果たす。その後2012年に同じく週刊少年ジャンプにて「戦星のバルジ」を連載。2014年より3作目の週刊少年ジャンプ連載作品となる「僕のヒーローアカデミア」をスタートさせた。同作は2016年よりアニメが放送されているほか、劇場アニメ化、小説化、ゲーム化など幅広いメディア展開が行われている。

2018年7月4日更新