コミックナタリー PowerPush - 濱田浩輔 はねバド!
少年ジャンプからgood!アフタへ バドミントン青春マンガ制作の裏側
週刊少年ジャンプ(集英社)で「どがしかでん!」「パジャマな彼女。」を連載していた濱田浩輔が、good!アフタヌーン(講談社)に発表の場を移し「はねバド!」の連載を開始。前作のラブコメ色を払拭し、女子高生たちの熱い戦いを描くバドミントン青春マンガだ。
コミックナタリーでは1巻発売を記念し、濱田にインタビューを敢行。バドミントンを通して描く青春群像劇の魅力や、これまで歩んできたマンガ人生、そして少年ジャンプ作家からの転向についても深く聞いた。
取材・文/かーず
部活をやっていない人間に感情移入できない
──週刊少年ジャンプ(集英社)で連載されていた前作のラブコメ「パジャマな彼女。」から一転して、「はねバド!」はスポーツマンガですね。
はい。もともと僕は小さい頃から家でマンガを描いていたわけではなくて、小3から高3まではバスケットボール漬けの部活少年だったんです。「パジャマな彼女。」の反省点として、主人公が最初は部活をやってなかったので、部活に入らず恋愛をしている男の子にイマイチ感情移入できなかったというのがありまして……。
──部活をやってない人間が、その時間に何をしていたのか分からなかったんですね。
そうなんです! 僕にとっての学生生活って全部部活絡みの思い出で、友達も部活で一緒の仲間でしたし、学校の風景で真っ先に思い返すのも体育館だったり。なので、そういう部活にすべてを賭けるような雰囲気の青春スポーツマンガを描きたかったんです。そんなとき、ちょうどテレビでロンドンオリンピックのバドミントン準決勝をやっていて、藤井瑞希・垣岩令佳ペアに見入ってしまい……。
──藤垣ペアの、女子バドミントンのどんなところに魅入られたんでしょう?
もうラリーがめちゃくちゃ激しくて! それに実況がつくとさらに盛り上がったりして、とにかくすごいんです。この熱量をマンガにしたら面白いんじゃないか?と思いついたのが、「はねバド!」を描きはじめる最初のきっかけですね。
分かりにくいバドミントン描写は切り捨てる
──ただバドミントンはどちらかと言うとマイナーな競技です。試合を見たことがない人にも伝わりやすくするための工夫などはされてますか?
テニスや卓球など球を打ち合う競技全般に言えることなんですが、ラリーの中では複雑な駆け引きがいくつも起きているんです。ロブ(注:ネット際から相手のコートの奥へ高く返球すること)を打ったり、狙いが交錯したり……。ただそれをそのまま描いても伝わりにくいかなと思ったので、そういう複雑な部分はバッサリ切り捨てて、デフォルメして描いてしまおうと。例えば「このラリーのキーはロブ」と単純化することで、バドミントンを分かりやすく描こうと意識するようにしています。
──実際の選手に取材したりもしているんでしょうか。
試合を見に行ったりはしています。ただ、逆にプレイヤーに話を聞きに行くのはやめたほうがいいんじゃないかという担当さんのアドバイスもあったり。
──えっ、それはなぜ?
高度な次元に行き過ぎちゃって、読者には伝わりにくいんじゃないかと思うんです。それは「どがしかでん!」のときの経験談なんですけど……。僕、部活人間だったので10年くらいバスケをやってきたんですが、もうバスケの常識と非常識が分からなくなっちゃってるんです。全然客観的に見れてないんですよね。ある競技を描こうとするとき、その面白いところと退屈なところを把握してないといけないと思うんですが、僕はバスケの面白いところしか分からない。ほら、マニアが自分の好きなところを一生懸命話しても退屈されちゃう、みたいな。
青春時代は出来事と背景をセットで記憶している
──その点、バドミントンではちゃんと客観的に見れているんですね。
そう。それでバドミントンの退屈な部分はバッサリ切り捨ててしまおう、と。
──ほかにも心がけている描写はありますか?
うーん、そうですね……。「パジャマ」のときから意識していることですが、人物の後ろに広がっている背景で空気感を演出しようとしています。青春時代を思い返してみると、例えば「あの日の放課後に夕日を見たなあ」とか、大体空や匂いみたいなものを僕らはセットで記憶していますよね。
──確かに、真っ先に風景が頭に思い浮かんできます。
青春ものを描くなら、そういう部分って外せないところだと思うんです。白い背景だと舞台のセットみたいになってしまう。なので、真夏だとこういう雲の形だろうとか、夕日の影の伸び方など、光と影の描き方で季節感を出すようにしています。実は主人公の綾乃も、読者が「中学のとき好きだった子が、部活をやっていてこんな髪型だったなあ」っていう郷愁感を感じられるような見た目にしてみました。
県立北小町高校バドミントン部のコーチになった立花健太郎。部員数が足りず団体戦にも出られない部を立て直せないかと悩む中、校庭の大木を難なく駆け上る運動神経抜群の少女「羽咲綾乃」を見つけ、なんとか勧誘しようとするが、彼女はなんとバドミントンが嫌いだった! 目指せ100倍青春、バドミントン部ストーリー開幕!
濱田浩輔(はまだこうすけ)
赤マルジャンプ2006年SPRING号(集英社)に掲載された「リライト」でデビュー。その後、週刊少年ジャンプ(集英社)にて2008年より「どがしかでん!」を、2012年より「パジャマな彼女。」を連載する。2013年6月よりgood!アフタヌーン(講談社)に活躍の場を移し、バドミントン部ストーリー「はねバド!」の連載を開始。