コミックナタリー PowerPush - 濱田浩輔 はねバド!

少年ジャンプからgood!アフタへ バドミントン青春マンガ制作の裏側

コニーはパッと咲く花、綾乃は根を張り巡らせる花

コニーと綾乃の対照的な描写が見られるシーン。

──中学時代の同級生のような、身近な見た目の綾乃とは逆に、ライバルのコニー・クリステンセンは現実離れしたスーパースターですね。

淡々と勝ち続けて記録を積んでいく綾乃とは違い、コニーは魅せるプレイができる選手です。華やかな瞬間があって、観客を盛り上げることができる。……プロスポーツの世界では、高い技術ももちろんですけど、観客を楽しませることができるというのも、才能のひとつだと思うんです。観客が盛り上がって、その競技をエンターテイメントまで持っていけるスーパースター選手と、ただ上手いだけの選手の差はそこなんじゃないかって。「はねバド!」には「花」というキーワードが何度か登場するんですが、それが作品のテーマのひとつにもなっています。

──ここで言う「花」とは、「才能」という意味なんでしょうか。

才能の形ですかね。パッと花が咲いてる状態のコニーとは対照的に、見えない所で根を張り巡らせているのが綾乃。知らぬ間に追い込んで「気づいたらこんなところにも根が張っていた」って、相手に恐怖を与えるんです。

濱田が感情移入しているというなぎさ。

──インターハイで綾乃に完敗したなぎさのように、じわじわと。

そうですね。ただ、冒頭であっさり負けちゃってますけど、なぎさも体躯に恵まれてるという意味では才能あるんですよ。僕が部活をやっていたときに、一番の才能は身体だと言われていました。

──それは努力でどうにかなるものではないですしね。

そういう高身長と身体能力に恵まれている子が、綾乃という天才の壁にぶち当たって、悩んで、頑張って成長していく姿をドラマティックに描きたいと思っています。1巻の続きである第5話からは、なぎさメインの話が始まりますので、その辺りも期待しててください。

志波姫唯華は気持ちに余裕があるタイプ。

──先生、なぎさにかなり思い入れがあるように見受けられます(笑)。

感情移入できるのはなぎさですね。現状うまくいってなくて、何が原因か分からない苦しさみたいなのは、僕自身とても共感できます。あ、あと地味に好きなキャラは志波姫唯華。この子は能ある鷹は爪隠すタイプで、気持ちに余裕がある。周囲の評価も気にしない。自分はそういうタイプではないので、この子には憧れます。

唯一の男キャラはハーレム化しないように

熱血コーチの立花健太郎。

──女性キャラが多く登場する一方で、男性のメインキャラは今のところ立花健太郎コーチだけです。

はい。なので、健太郎がラブコメの主人公みたいにならないようには常に意識しています。女の子たちのコーチをやっているので、一見すると健太郎がハーレム状態に見えてしまうんですが、健太郎がほかの女性ばかり見ていると、「大人のくせに恋愛が目的で体育館に来てるんじゃないのか?」って不健全に見えてしまいますよね。なので健太郎は常にバドミントンへの熱い情熱を持ち続けさせるようにしています。

──前作の「パジャマ」とは違い、「はねバド!」には一切恋愛要素がないんでしょうか?

いや、僕の中では作中で恋愛を描きたくないというわけではないんです。ただ、ラブコメは物語の性質として、出会った瞬間から恋の相手になってしまいますけど、「気づいたら好きになっていた」という方が、自然な恋愛をイメージしやすいのかな、と。なので、このマンガで恋愛を描くとしても、それは自然な形で描くんじゃないかな。その形が違うだけだと思っています。

県立北小町高校バドミントン部のコーチになった立花健太郎。部員数が足りず団体戦にも出られない部を立て直せないかと悩む中、校庭の大木を難なく駆け上る運動神経抜群の少女「羽咲綾乃」を見つけ、なんとか勧誘しようとするが、彼女はなんとバドミントンが嫌いだった! 目指せ100倍青春、バドミントン部ストーリー開幕!

第1話の試し読みはこちらから!

濱田浩輔(はまだこうすけ)

濱田浩輔

赤マルジャンプ2006年SPRING号(集英社)に掲載された「リライト」でデビュー。その後、週刊少年ジャンプ(集英社)にて2008年より「どがしかでん!」を、2012年より「パジャマな彼女。」を連載する。2013年6月よりgood!アフタヌーン(講談社)に活躍の場を移し、バドミントン部ストーリー「はねバド!」の連載を開始。