コミックナタリー PowerPush - サイボーグ009[カラー完全版] 石ノ森章太郎

「正義とは何か」徹底して描く不朽の名作 「009 RE:CYBORG」の神山健治監督インタビュー

SFマンガの金字塔であり、あらゆるサイボーグものの原点である石ノ森章太郎の傑作「サイボーグ009」。その“幻”のカラー完全版全3巻が、史上初のB5判、そして雑誌連載時を忠実に再現した仕様で復刊ドットコムから8月下旬より刊行される。

また10月27日には、同作を原作としたアニメーション映画「009 RE:CYBORG」が公開。「攻殻機動隊S.A.C.」「東のエデン」などで知られる神山健治が監督を務めるとあって、大きな注目を集めている。コミックナタリーでは時を同じくしてこの作品にスポットが当たる偶然に着目し、神山を直撃。「サイボーグ009」への思いやカラー完全版の魅力、映画の最新情報などを訊いた。

取材・文/岸野恵加 編集・撮影/唐木元

 
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ヨミ編はとても完成度が高くて、ラストまで計算して作られている

──神山監督は1966年生まれで、現在46歳。「サイボーグ009」の連載が始まったのは1964年でしたが、いつ頃から作品に接していたか覚えていますか。

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マンガの存在はもちろん子供の頃から知っていたんだけど、ちゃんと読むようになったのは……。うーん、中学生ぐらい、雑誌はなんだったかな、冒険王(秋田書店)って何年ですか?

──冒険王に載ってたのは、1967年から1969年までですね。

それじゃ3歳くらいだから、違うな(笑)。印象に残っているのはマンガよりどちらかというと、昭和版と言われるアニメ(1979-1980年放送)を観ていた記憶がいちばん強いかもしれない。どのゼロゼロナンバーが好きかとか、友達とサイボーグたちの能力で盛り上がったりして……。僕は全身サイボーグの004が特に好きでした。小さい頃はそういう表面的なカッコよさのほうに惹かれてて、ストーリーの流れはあまり理解してなかった。

──全体像を理解したのはいつ頃ですか?

もう、だいぶ後ですよ。飛び飛びに読んできたので、ずっとうろ覚えな感じで。今回映画をやるにあたって再度読み直して、はっきり時系列がつながったくらいの感じです。

──では全体を通して、特に印象的なエピソードを教えてください。

いちばん印象に残ってるのは、(地下帝国)ヨミ編(1966-67年、週刊少年マガジン連載)ですね。

──ヨミ編は「009」ファンの間でも特に傑作と言われてますね。今回刊行される完全版でも1巻目に収録されます。監督にとっては、どのあたりが魅力だったんでしょう。

子供の頃にはわからなかったんですけど、実にしっかりとした伏線を張っていて、テーマも深いですよね。ブラック・ゴースト(黒い幽霊団)の正体も……。

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──巨大な翼竜のザッタン族にブラック・ゴーストと、サイボーグ戦士たちにとって倒さねばならない敵が二重に出てきたり……確かに子供には、構造を理解するのがなかなか難しいエピソードかもしれないですよね。

そう、40年も前にここまでポリティックなテーマを内包した作品だったんだなと驚いたんです。それにマンガって描きながらお話が作られていることが多くて、強引につじつまを合わせたりすることも少なくないと思うんですが、これはとても完成度が高くて、ラストまで計算して作られている印象を受けました。

──伝説的と言われるラストシーンは、002と009がブラック・ゴーストを倒したあと、自らを犠牲にして流れ星となって……。

緻密に構成が決められていたんだろうと思わせる、美しいラストですね。でも連載当時熱狂的に「009」を読んでいた某プロデューサーによると、もちろん流れ星になったこともショックなんだけど、その後2人が生きていた設定でしれっと連載が再開したので、それにもまたかなりショックを受けたらしいですね(笑)。

自分の中に、ヨミ編の構成が刷り込まれていた

──ほかにヨミ編で、ここは名シーンだなというところってあります?

冒頭がすごく好きでしたね。世界中にバラバラになっていたメンバーが1人ずつ集まってくる感じとか、映画っぽくて。それぞれのゼロゼロナンバーサイボーグたちの普段の生活が描かれるのもいい。

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──パリでバレリーナとして成功していた003が、「ぜったいいやよっ また…また殺しあいなんて!」と嘆いてみたり。

うん、いつも戦っているわけではなくて、ゼロゼロナンバーそれぞれの人生があって。……実は今回の映画の導入部は、この冒頭を参考にさせてもらっています。

──へえー!

参考にしたというか、無意識のうちにそうなっていたというか……。映画のプロットを立てるときに、原作に引っ張られ過ぎないようにするために、構成ができるまでは原作を読み返さないようにしていたんです。で、完成してから読み返してみたら、全体のバランスや構成が結構ヨミ編に引っ張られていて、自分の中にヨミ編の構成が意外と刷り込まれていたんだなあと思いました。

──そんな神山監督にとって特別なエピソードがカラー完全版で復刻されるのと、映画の公開が近いタイミングであるというのは奇遇ですよね。

そうですね。潜在的に一番好きだったエピソードが、再びこういう形で世に出てくることはすごくうれしいです。本のサイズやページ割りなどが原典に忠実で、カラーページも再現されていて、スペック的にも申し分ないですし。当時の手触りで読めるのがいちばんいいと思います。

初版完全限定商品「 サイボーグ009[カラー完全版]」 / 全3巻/B5判(雑誌原寸大)/フルカラー/ソフトカバー/美麗化粧箱入り / 全巻セット 予価38745円 / ※各巻ごと単品(各12915円)でも購入可能

刊行スケジュール
  • 第1弾「地下帝国ヨミ編」:2012年8月下旬配送予定
  • 第2弾「誕生編/暗殺者編」:2012年10月下旬配送予定
  • 第3弾「ベトナム編/ミュートス・サイボーグ編」:2012年12月下旬配送予定
石ノ森章太郎(いしのもりしょうたろう)

石ノ森章太郎1938年1月25日宮城県登米郡生まれ。本名は小野寺章太郎(おのでらしょうたろう)。1954年、漫画少年(学童社)にて「二級天使」でデビュー。1964年に週刊少年キング(少年画報社)にて「サイボーグ009」を連載開始。繰り返しアニメ・映画化され、長期にわたる大ヒット作となる。1971年に週刊ぼくらマガジン(講談社)で 「仮面ライダー」、翌年週刊少年サンデー(小学館)で「人造人間キカイダー」を連載。ともに短期連載だが高い評価を得た。1988年「HOTEL」にて第33回小学館漫画賞を受賞。1986年にはデビュー30周年を記念して、ペンネーム石森章太郎を石ノ森章太郎へと改名した。1998年、東京お茶の水順天堂病院で逝去。生前の業績に対し、勲四等旭日小綬章、日本漫画家協会賞、手塚治虫文化賞および特別賞を授与された。

神山健治(かみやまけんじ)

神山健治1966年生まれ。埼玉県出身。高校卒業後、アニメの自主制作に関わった後、背景美術スタッフとしてキャリアをスタート。美術出身の演出家として注目を集める。「ミニパト」で初監督。「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズでは、国内外に熱狂的なファンを獲得。続く「精霊の守り人」では一般層・高年齢層にも大きな評価を得る。「東のエデン」では、初の完全オリジナル作品として高視聴率をマーク。「攻殻機動隊S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D」は“誰も観たことがない3D立体視”をテーマに、興行収入2億円を超える大ヒットを記録。「009 RE:CYBORG」を2012年秋に公開予定。