コミックナタリー Power Push - 松本テマリ&芝村裕吏「キュビズム・ラブ」

前代未聞の「箱」ヒロインを生んだ 原作者と作画者が語るコミカライズの裏側

イレギュラーというか、デモンストレーション

──「キュビズム」と「公僕」は提案した中でいちばん通らなさそうな企画2本だったと、「公僕」1巻のあとがきに書いてらっしゃいましたが。

芝村 ああ、もう絶対通らないと思ってました。企画案っていつも3本出すんですよ。その中から選んでください、と。その中から選ばれなければまた3本出して。大体9本出すうちに1回くらいは当たる、という感じなんですが。

──打率1割くらいで。

芝村 「キュビズム」も9案くらいだしたんです。まあ最初からハズレ的な案も入れるんですよ。これは無理だろうとか、通らないだろうとかいうイレギュラーなものを。

──「キュビズム」はイレギュラーだったわけですね。

芝村 イレギュラーというか、デモンストレーションですよね。「こんなものもワタクシ思い付きますわよ」みたいな(笑)。そしたら編集部的には「もうこれしかありません」と。出しといてナンだけど、こっちとしては「大丈夫か?」と。そしたら担当さんは「箱が恋愛できたらもう身体なんていらないってことだから、これは究極の純愛だ」っておっしゃったんですね。なんとも冒険心のある編集部で……。

松本 でもギャルゲーや乙女ゲームでは主人公の顔が見えないのってよくある話で。顔が見えない分、感情移入しやすいかなっていうのはあるかと思います。

芝村 確かにゲームの世界ではよくある話ですね。でもそれをマンガにするのはなかなかの技術が必要で。テマリさんの技術があるからこそ具現化できたと思います。

松本 私もそんなに余裕ぶっこいてやってるわけではないですよ……。難しい題材ですが、芝村さんのファンだったこともあるので、きちんとしたものをお届けしたいと思って毎回緊張して描いてます。

芝村 まあ、松本テマリの無駄遣いにならないように一同がんばりたいですね(笑)。

等身大ノリコを持ち上げ、「ヲタポンだよー!」とおどけてみせる芝村。

松本テマリ 原作:芝村裕吏 / 「キュビズム・ラブ」1巻 / 2011年6月1日発売 / 651円(税込) / エンターブレイン / B's-LOG COMICS

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あらすじ

陸上の試合に向かう途中で、事故にあったノリコ。目が覚めるとそこには、ノリコを心配そうに見つめる青年医師・篠田の姿があった。笑うと子供っぽくなる篠田に好感を持つノリコ。 だが、篠田の口から、衝撃の事実が伝えられる。事故に遭ったノリコは肉体を失い、小さな黒い箱に入った“脳”だけになってしまったのだと──!? 松本テマリ×芝村裕吏の豪華クリエイターがお贈りする、究極のピュアラブストーリー。

松本テマリ(まつもとてまり)

松本テマリ

4月8日生まれ。2000年12月に発売された「今日からマのつく自由業!」(著:喬林知、角川書店刊)に始まる「まるマ」シリーズの挿絵とコミカライズを担当。現在はコミックビーズログ キュン!(エンターブレイン)で「キュビズム・ラブ」を、月刊ASUKA(角川書店)で「今日からマのつく自由業!」を連載中。

芝村裕吏(しばむらゆうり)

4月30日生まれ。ゲームデザイナーにして原作者。「高機動幻想ガンパレード・マーチ」「絢爛舞踏祭」などのゲームを手がけ、高い評価を得る。現在はコミックビーズログ キュン!(エンターブレイン)で「キュビズム・ラブ」を、電撃マ王(アスキー・メディアワークス)で「ガンパレード・マーチ アナザー・プリンセス」を連載中。