コミックナタリー Power Push - 松本テマリ&芝村裕吏「キュビズム・ラブ」

前代未聞の「箱」ヒロインを生んだ 原作者と作画者が語るコミカライズの裏側

ヲタポンは、ボールとしては豪速球

──割ともう気心が知れた関係だったんですね。キャラクターデザインはすべてテマリさんが?

篠田先生の設定ラフ。篠田先生(上)とノリコ(下)の設定ラフ。

松本 そうですね。設定は芝村さんからいただいて。

芝村 篠田先生はなるべく医者らしくないのがよかったんですけど、最初のラフからイメージどおりのものが上がってきて、すごいな、と。

松本 前髪がうっとうしいという設定だったので。篠田先生はかわいらしい性格なので、描いていて楽しいですね。毎回愛でるように描いています。

芝村 そうですね、読者さんにも篠田先生を舐め回すようにいろんな角度から愛でていただけたら(笑)。

ヲタポンの登場シーン。

──篠田先生を愛でるマンガであると(笑)。あの、キャラデザで異彩を放っているのは、やはり篠田先生の友人・ヲタポンですが……。

芝村 ヲタポンは最初見たときびっくりしました。いくら篠田先生を引き立てる役とはいえ、ねえ。これは勇気ある決断であるな、と(笑)。

松本 大きな人、デブっていう設定だったので、素直に描いただけだったんですけども……。

芝村 このキャラデザは俺も想像してなかった。点数で言うなら120点ですよね。でも少女マンガなのに大丈夫? って。

松本 まあそうですよね(笑)。ギークみたいな人なので、こういう感じかなと。

ヲタポンの設定ラフ。

芝村 ああ、外見とかを全然気にしないで自分の趣味を突き進んだらこういう感じになるかな、というイメージはよく出てますよね。

──他人と共同作業するときは、そういう驚きとか意外性が出てこないと、やっぱり面白くないんじゃないですか?

芝村 もちろんそうですね。相手から「こうきましたか」っていう球が放られてこないとキャッチボールのしがいがないもので。

──その意味では、ヲタポンはボールとしては……。

芝村 もう豪速球でしたね(笑)。

松本 私はいつも豪速球を投げてるつもりで力いっぱい描いてます!

同じシーンでも、与える影響が違う

──芝村さんが同じく原作を担当されている「公僕の警部」(WEBコミック「コミックビーズログ エアレイド」連載)と「キュビズム・ラブ」は作品がリンクしていますよね。それこそヲタポンは両作で状況説明役として出てきます。

芝村 そうです。ヲタポンは便利ですねー。お話にあまり絡まないで、かつ客観的に話してくれるので。

「公僕の警部」1巻。作画は秋月壱葉。

──お互いのキャラクターが出てきたりはしますが、話の主軸は全然違いますね。「キュビズム」は恋愛もので、「公僕の警部」はサスペンスもので。

芝村 どっちも技術をベースにしてはいますけどね。「キュビズム」は技術による医療の問題で、「公僕」は技術と技術の戦い。「キュビズム」に「公僕」のキャラクターが出てきたときも、あくまでそれがノリコと篠田先生の仲にどう影響を与えるかが問題なわけで。まあせっかく同じ原作者がシナリオ書いてるわけなので、ちょっと面白いことやろうかなとは思っていて。

──どんな試みですか?

芝村 原作の文章が一言一句ほぼ同じシーンを設けて、それを2人の作画家さんに描いてもらう、という。

「キュビズム・ラブ」に登場した「公僕の警部」のキャラクター、夏美とテル。

──それはぜひ読み比べてみたいです。

芝村 その部分は「キュビズム」の2巻に収められる予定です。まあ、あくまでファンサービスという感じで、2作品とも読まないと面白みがありませんっていうことにはならないので、安心してください。

──テマリさんは、「公僕」のキャラクターを描くのはいかがでした?

松本 やっぱり他人様のキャラクターを描くのはちょっと緊張しますね。本格的にリンクする部分は、今まさに作画中なんですが。

芝村 いいと思います。その緊張を読者は喜んでくれるんじゃないかと。

松本テマリ 原作:芝村裕吏 / 「キュビズム・ラブ」1巻 / 2011年6月1日発売 / 651円(税込) / エンターブレイン / B's-LOG COMICS

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あらすじ

陸上の試合に向かう途中で、事故にあったノリコ。目が覚めるとそこには、ノリコを心配そうに見つめる青年医師・篠田の姿があった。笑うと子供っぽくなる篠田に好感を持つノリコ。 だが、篠田の口から、衝撃の事実が伝えられる。事故に遭ったノリコは肉体を失い、小さな黒い箱に入った“脳”だけになってしまったのだと──!? 松本テマリ×芝村裕吏の豪華クリエイターがお贈りする、究極のピュアラブストーリー。

松本テマリ(まつもとてまり)

松本テマリ

4月8日生まれ。2000年12月に発売された「今日からマのつく自由業!」(著:喬林知、角川書店刊)に始まる「まるマ」シリーズの挿絵とコミカライズを担当。現在はコミックビーズログ キュン!(エンターブレイン)で「キュビズム・ラブ」を、月刊ASUKA(角川書店)で「今日からマのつく自由業!」を連載中。

芝村裕吏(しばむらゆうり)

4月30日生まれ。ゲームデザイナーにして原作者。「高機動幻想ガンパレード・マーチ」「絢爛舞踏祭」などのゲームを手がけ、高い評価を得る。現在はコミックビーズログ キュン!(エンターブレイン)で「キュビズム・ラブ」を、電撃マ王(アスキー・メディアワークス)で「ガンパレード・マーチ アナザー・プリンセス」を連載中。