コミックナタリー PowerPush - 小山愛子「ちろり」インタビュー
華やかなりし明治の喫茶店から着物と珈琲にありったけの愛を
文明開化に華やぐ明治の横濱・海岸通りのはずれにある喫茶店で働く少女の物語「ちろり」。カフェで過ごす特別な時間と、四季の情緒を丁寧に描写した人物劇が好評を博しているゲッサン(小学館)の注目株だ。
最新3巻発売に合わせて、コミックナタリーでは著者の小山愛子を直撃。取材に小山は着物姿で現れ、「ちろり」への思い入れを赤裸々に語ってくれた。インタビューでは作品誕生の背景を掘り下げ、加えて「小山愛子プレゼンツ美味しいコーヒーの淹れ方」を描き下ろしのイラスト付きでお届けする。
取材・文 / 門倉紫麻 撮影 / 唐木元 編集 / 淵上龍一
喫茶店「カモメ亭」は、ちろりと店主のマダムで営む小さなお店。ゆったりとした空気が店内には流れているが、主人公ちろりの日常は決して退屈なものではない。物語を盛り上げ、暮らしのエッセンスとなる舞台装置がいくつも用意されている。
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着物
ちろりのトレードマークは、矢がすり柄のキモノに純白のエプロン。身支度の描写にページの大半を割くエピソードもあり、著者のこだわりが強く表れている。
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コーヒー
淹れ方だけでなく、シチュエーションによって味わいが変わるコーヒー。人が行き交う喫茶店では、コーヒーがオーダーされた数だけドラマも生まれる。
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出会い
ちろりのことを優しく見守るマダム、常連のおじいさん、外国から渡来した客。出会いの数だけ「ちろり」の物語は膨らんでいく。インタビューでは、マダムのモデルとなった人物についても語られる。
小山愛子インタビュー
──ふだんからお着物を着ていらっしゃるんですね。半衿もお着物も羽織も、みんな違う柄で、すごくかわいい組み合わせです。
ありがとうございます。古着屋さんに行くと、安くてかわいい着物がたくさんあるので、楽しいです!
──「ちろり」は、着物をはじめとして、小山さんのお好きなものがたくさん散りばめられている作品ですね。好きで好きで、描いてしまったのだろうなあ……と見ていて思うコマがいくつもあります。愛がほとばしっているような。
はい。私の愛が伝わっていたらうれしいです。
──第1回では、主人公ちろりが、朝起きて、顔を洗って着物に着替えて……という身支度の流れを、8ページにわたって描いていますね。執拗に、というくらい丁寧に。
本当にそうですね(笑)。実は第1回は、最初は全然違う話だったんですよ。何回もボツになってるうちに、編集さんから「普通に1話目を描く、という気持ちではなくて『描きたいものを描く』というつもりで描いてください」と言われて。それで、いいんですね? 本当に、と(笑)。マンガにはならないかもしれないけど、何も考えず私がひたすら描きたいことを描こうと思いました。
──やはり着物は描きたいもののひとつでしたか。
とにかく着物着物! みたいに、着物の話が描きたかった。
──コーヒーや喫茶店、というよりまずは着物だったんですね。
着付けを1年くらい習ってから連載を始めたんですが、習っている間にコーヒーもいいな、喫茶店もいいなとそのほかの要素もどんどん追加されていった感じです。舞台は私の地元の横浜にして、だったら異人館とか出したい、だったら明治時代の話かな……というふうに。その時に私が「いいな」と思っていたものが全部入ってしまいました。
- 小山愛子「ちろり」(3)/ 2013年2月12日発売 / 840円 / 小学館
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作品解説
時は大開港時代の明治。文明開化に沸く港町・横濱。海岸通りの小さな喫茶店で働く……少女がひとり……その名は、ちろり。
1、2巻発売と同時に大反響!今度のちろりは、どんな景色の中に……!! 連載開始前に大反響だった読切作も特別掲載の第3巻!
小山愛子(こやまあいこ)
12月28日生まれ。2001年にまんがカレッジ努力賞を受賞し、2001年に「日常戦線」が少年サンデー超増刊へと掲載されデビュー。ゲッサン2011年7月号より「ちろり」を連載開始。