芸人の仕事に大事な“全部”がある、ダブルヒガシとアインシュタインが語るよしもと漫才劇場 (2/2)

仕事のやりがい・モチベーションは?

──せっかくの場ですので、ダブルヒガシからOBのアインシュタインへ聞いておきたいことはありませんか?

大東 やりがいはどこにありますか?

河井 俺は昔から変わってなくて、「楽しい」ってことに尽きるかなあ。「バイトしてたときの大変さを思ったら……」っていつも思うな。まあバイトしてた頃もそれはそれで楽しかったけど。

──お笑いだけをやれていること自体が楽しい?

河井 そうですね。あとは、「劇場があってくれる」っていうのもデカいです。全仕事の中で一番、劇場の出番が基礎やなと思うので。それに出させてもらえていることがめっちゃありがたい。

稲田 僕は昔めちゃくちゃお金なくて、肌が荒れたときに皮膚科にも行けなかったんですよ。そのために、まだあんまり面識のなかったかまいたち山内さんにお金を借りたりもしていて。あれから一生懸命やってきたから、今はいつでも皮膚科に行けるようになりました。

大東 それがやりがいですか?(笑)

稲田 この前なんか、皮膚科行って、眼科行って、耳鼻科行った。「ハシゴできるようになったやん」って褒めてあげたいです。

河井 え、保険証ないんか?

 全部10割の人?(笑)

稲田 保険証あります。マイナ保険証です。

アインシュタイン

アインシュタイン

──躊躇せずに医者にかかれるようになったわけですね。東さんからは何か質問ありますか?

 今のモチベーションを聞きたいです。けっこう上のほうに上り詰められているじゃないですか。その中で日々どうがんばっているのか。将来やりたいことがあるのか、とか。

河井 全然上り詰めてないし、たまにロケ先で「よく見るよ」とか「よう出てるね」とか声かけてもらうけど、謙遜とかじゃなくて、ほんまにまだまだ全然やと思ってて。だってまだ「こんなにスベんねや!?」っていう日あるもん(笑)。あかんやん、同じ仕事20年もやっててそんな日あったら。

稲田 自慢じゃないけど、俺のほうが多いで!

河井 それはほんまに、こいつのほうが多い(笑)。

稲田 思い切ったことやったときがことごとく裏目に出る。

大東 みんな知ってるのに、まだスベるときあるんですか?(笑)

稲田 ある! スベったときはこう言おうっていう小手先の技も増えてしまってる。

大東 あっはっはっは!(笑)

稲田 ライブがやっぱり好きなんですよね。お客さんがいるところが好き。普段お笑いをあんまり見ない人たちのところに行くのも好きで。そういう意味で、テレビに出させてもらえてよかったなって思います。

 アインシュタインさんでも「まだまだ」なんですね。

ダブルヒガシ

ダブルヒガシ

アインシュタイン

アインシュタイン

音響さんに“ウケさせていただく”

──「マンゲキのここがいいところ!」を教えてください。

河井 こんなに(チケット代が)安くてこんなにいろんな芸人が観られるって、普通にめっちゃいいやんって思います。昔バイトしてる頃、お客さんにライブを勧めていたんですけど、大人の方のほうがハマるんですよ。「見たことない子ばっかりやったけど、この値段であんなおもろいんやね」みたいな。一番、気軽でわかりやすいエンタメな気がしますね。

大東 僕は、プロの集まりだと思ってます。芸人もそうですけど、スタッフさんがエグい。特にマンゲキは1個抜けてプロだと思います。

河井 確かにな! リハでこっちが1言ったことを、マジで10やってくれる。たまに音響さんがウケてるときあるもん。

大東 こっちがウケさせていただくときもあります(笑)。

稲田 察する能力がほんますごいんです。

河井 めっちゃ簡単な、抽選箱からくじ引いて「ジャン!」って鳴らすみたいな段取りがあったときに、芸人が順番にボケたりする中、例えば山内がやる番になったら音響さんが「ジャン!」を鳴らさないとか。あの能力って異常よな。

稲田 「こういう場合は鳴らさないで……」とか、誰かが教えたわけでもないと思うんですけど。

──みんなで笑いを作っているんですね。

河井 いや、すごいですよ。進行さんが作ってくれる小道具のクオリティもめちゃめちゃ高いし。

大東 僕の破れたズボンを急いで縫ってくれたり(笑)。めっちゃ助かってます。マジで、プロのみで運営されている劇場です。

ダブルヒガシ

ダブルヒガシ

──では逆に、「ここは直してほしい!」というところはありますか?

大東 便器が少ない!

河井 芸人の数に対してな。6階に1台、5階に1台。そんなわけない(笑)。

大東 そんな少ない便意で成り立ってないです(笑)。あとは、「クーラーがビル管理」とか。

一同 ああー。

稲田 すぐ温度を変えられへん。

大東 めっちゃ寒かったりめっちゃ暑かったりするときもある。

 自転車置き場がほしいとか。

河井 4階のカフェをよしもとの経営で社食とかにしてほしい。

大東 全部設備やん(笑)。板の上でのことに関しては、なんにもないです。

ダブルヒガシ

ダブルヒガシ

アインシュタイン

アインシュタイン

感謝感謝、ツー感謝です

──改めて、よしもと漫才劇場はみなさんをどう成長させたと思いますか?

河井 今、仕事でやっていることの基礎は全部、劇場にあるのかなと思います。テレビでの立ち振舞いもそうですし、仕事の大元となる大事なことが全部。少なくとも僕はそうです。「あのときあんなライブ打っといてよかったな」と思うこともありますし、「こんなライブ打ちたいな」と今も思いますし。

大東 僕らはまだテレビにそれほど出ていませんけど、たぶん劇場の経験が生きるんやろうなと思っています。舞台で活躍していた人が軒並みテレビでもトップ張っていらっしゃるので。結局舞台でがんばった人が日の目を見るんやろうなと思います。

 いろんなことを経験させてくれますからね、劇場は。単純に舞台数も多いですし。

河井 劇場を持っていない他事務所の子に聞くと、年間で10回とか。俺らだと1日で10ステあるときもあるから。

 そういう部分でもほんまにありがたいです。

稲田 僕は、先輩方がボコボコにイジってくれて鍛えられた気がします。それこそ河井さんやかまいたち濱家さん、僕を見つけたときの目が一番輝いてたと思います(笑)。

ダブルヒガシとアインシュタイン。

ダブルヒガシとアインシュタイン。

──最後に、劇場はみなさんにとってどういう場所でしょうか?

河井 おうちみたいな感覚ですかね。帰って来る場所。大事にしたい場所。

稲田 鍛えてもらったという気持ちがすごく強いので、シックスパッドですね。劇場ってシックスパッドです。

大東 ちょっと楽してません? 腹筋せえよ(笑)。

河井 ジムとかやったらわかるけどなあ?

 僕は、シンプルに2文字。感謝。

河井 すごいやん(笑)。

 自分も感謝してますし、観に来ているお客さんも「笑かしてくれてありがとう」という感謝。感謝と感謝。ツー感謝。感謝感謝、ツー感謝です。

河井 「感謝感謝、ツー感謝」で、ファイナルアンサー?

 ファイナルアンサー。

河井 はい。これ全部文字にしといてください。

──わかりました(笑)。では大東さんにラストを飾っていただきます。

大東 (右足をピーンと伸ばしながら)オール・オーバー・ザ・ワールド。

 右足ピーンな?(笑)

──どういう意味ですか?

大東 すべての劇場に色があって、国と一緒なんです。すべてにおいて色が違います。すべてが国。オール・オーバー・ザ・ワールドで、ファイナルアンサー。

河井 「(足ピーン)」も絶対書いといてください(笑)。

ダブルヒガシとアインシュタイン。

ダブルヒガシとアインシュタイン。

イベント情報

マンゲキ夏祭り2025

日時:2025年7月26日(土)16:00開場 17:00開演(19:00~19:30に休憩を挟み21:00終演)
会場:大阪・万博記念公園 お祭り広場
料金:一般5500円 子供2500円

<出演者>
中田カウス(上方漫才協会 会長)
アインシュタイン河井(上方漫才協会 副会長)
カベポスター / ダブルヒガシ / ドーナツ・ピーナツ / 天才ピアニスト / フースーヤ ほか
ゲスト:アインシュタイン / 見取り図 / ミキ / ロングコートダディ / マユリカ / ニッポンの社長 / ビスケットブラザーズ ほか

プロフィール

アインシュタイン

稲田直樹(イナダナオキ)
1984年12月28日生まれ、大阪府出身。

河井ゆずる(カワイユズル)
1980年11月28日生まれ、大阪府出身。

2010年11月にコンビ結成。河井はNSC大阪校26期生、稲田は28期生で稲田が2期後輩にあたる。「オールザッツ漫才」(MBS)では2011年にフットカットバトル、2014年にドリームジャンボ1分バトルで優勝した。大阪・よしもと漫才劇場のオープンと同時に発足した上方漫才協会が主催する「上方漫才協会大賞」の初年度(2016年)大賞受賞者で、2025年、河井が協会副会長に就任。2018年には「NHK上方漫才コンテスト」最優秀賞を受賞。2020年4月に活動拠点を東京に移し、テレビや舞台で活躍中。

ダブルヒガシ

大東翔生(オオヒガシショウイ)
1993年1月16日生まれ、大阪府出身。

東良介(ヒガシリョウスケ)
1992年8月25日生まれ、大阪府

高校の同級生コンビ。NSC大阪校に36期生として入学し、2014年4月にデビューした。芸歴3年目で「Kakeru翔グランプリ」初優勝するなど早くから頭角を現す。2023年には「ytv漫才新人賞」と「ABCお笑いグランプリ」で優勝を果たした。2024年、「上方漫才協会大賞」大賞を受賞。同年7月、「千鳥のぼっけぇTV!」「ろくでなしミトリズ」などが放送されたGAORA伝統の枠で冠番組「推してまえ!ダブルヒガシ」がスタートした。ラジオ関西のポッドキャストとして配信されている「はちくちダブルヒガシ」が人気。