リアルなネタ合わせを演じた
──お互いの演技をご覧になって、女優としての評価はいかがですか？
加納 2人がやり合うシーンはすごいなと思ったし、私には2人の役はできないと思いました。自分が一番イージーモードというか、そのままやらせてもらった（笑）。サーヤと麻貴ちゃんはそれぞれ演技の感じが全然違う気がする。
福田 どう違う？
加納 フラットな演技が麻貴ちゃん。演技をしていない感じにしている。演技が始まってるのか始まってへんのか。顔も、起きてるのか起きてへんのか（笑）。その自然体がリアリティとマッチしたときに引き込まれます。サーヤはもともと、漫才コントが憑依型で惹きつけられて、「おお、怖っ！」とか「今のすご！」とか、1個1個の打撃が強い感じがします。
福田 サーヤがめっちゃ演技うまかったんで、なんでそんなうまいん？って聞いたら子役をやっていたんですってね。「プロやな」と思いました。加納ちゃんは前半から普段漫才してるときと変わらん感じなんですよ。最後にもうちょっと演技っぽいところがあって、終わって、映像で観たらめっちゃうまくて「うまいんかい！」って（笑）。
サーヤ 福田さんは叫ぶところがめちゃくちゃよかった。なんか過去にあるんじゃないかと。リアリティがすごかったです。加納さんは前半、めっちゃ加納さんですもんね。後半の豹変っぷりがすごくてビックリしました。現場でちゃんと怖かったです。
──映画の前半には3人でネタ合わせをしているシーンがありますが、演じてみていかがでしたか？
福田 リアルなネタ合わせの感じでした。私はもともとトリオやし、こんな感じで普段立ってるわと。
加納 私は立ち位置が真ん中やったんですけど、「狭っ！」って思いました（笑）。パーソナルスペースがない。
福田 それは私のほうが普段から思ってるけどな（笑）。あの人たち（かなでとゆめっち）、自分が思ってるパーソナルスペースより幅あるからな。
加納 それは離れたらええがな。私は「あ、こっちにもこっちにもいるんや。こんな窮屈にやってるんや」って。
サーヤ 私、相方が男なんで「女性とやったらこんな感じなんだ」って。最近、（ニシダが）柔軟剤臭いことがあるんで、「いいなー、女性コンビは」って思いました。
──では、最後にお笑いナタリー読者に向けて、作品の見どころなどを改めて教えてください。
福田 上田監督の作品を好きな方だと「ここ、上田慎一郎！」という部分があります。それと私たちの新しい一面を見てもらえたら。私たちがいかにトガッていなかったか、わかると思います。作品にめっちゃなじんでいます。
サーヤ トゲトゲを観ている人にとっては「あ、トゲトゲっぽいね」と気づくポイントが結構あると思います。それで見入っちゃうと後半、すごいどんでん返しが待っていると思う。
加納 たしかに、2回、3回くらい観られるかも。
福田 お笑いファンって映画とかエンタメ好きな人が多いと思うんですけど、100パー刺さります。1回再生したら絶対に最後まで観てほしいです。
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加納 サーヤと麻貴ちゃんを本気で殴っている（笑）。今後あのような「痛みを笑う」ということはなくなると思います。
福田 この“寝言回”は「ギャラクシー賞」を月間で受賞するのは逃したんですけど、まだなんか可能性はあるんじゃないかなと。斬新です。
サーヤ 加納さんがちゃんとビビってる。温度差がすごかった。
上田慎一郎監督 インタビュー
──どういうところから着想を得て「ウワキな現場」を作られたのですか？
上田慎一郎 「キス」と「トゲトゲ」というワード、3人＋1人の男性の4人でできる話、ということで考え始めました。お笑い芸人だからこそできる唯一無二の映画を作りたかったです。
──3人とも「キャラクター設定が自分たちに合っていたのでやりやすかった」とおっしゃっていました。
上田 完全に当て書きです。
──もともとトゲトゲのファンということで、この作品の監督をお引き受けになられたということですが。
上田 そうですね。トゲトゲのファンであり、3人のファンでもあります。
──ファンになられたきっかけは？
上田 3人ともYouTubeです。Aマッソは（公式チャンネルの）「面接官加納」をよく観ています。「ウワキな現場」では、そんな3人があまり演じなくてもいいように、ということを考えました。たとえば銀行員とか、セレブとか、大きく離れたところを演じると、演技力に左右される部分が大きくなる。できるだけ等身大で、その本人と近い役にしようとしました。
──芝居は実際どうでしたか？
上田 素晴らしかったです。想像以上でした。皆さんが真剣に演技をしているのを観られました。3人の距離感もあると思います。そもそも阿吽の呼吸みたいなものが番組の中で作られていると思うので、そこにすごく助けられました。めちゃくちゃ自然でした。
──それぞれに感じたいい部分を教えていただけますか？
上田 サーヤさんは役者としての色気みたいなものがすごくあるんですよ。ずっと観てしまうような。目力（めぢから）と集中力が大きい気がします。あと、声が好きなんですよ。「怖い」ということを表現するときに、ドスを効かせたような声を出すとか、わかりやすい怖さに振らない塩梅もいいなと思いました。「ボソッと言うのも怖い」ってわかっている。福田さんは“受け”の表情がよかったです。普段やったらツッコむじゃないですか？ ツッコまずに自分の中にしまい込むという福田さんを観られたのは新鮮でした（笑）。3人の中では福田さんが一番常識人なのかなって勝手に思っていて、観ている人が共感しやすいというか、親近感がある。
──福田さんは自分の女優魂が一番炸裂したのはキスシーンだともおっしゃっていました。
上田 演じているようには見えなかったです（笑）。このキスシーンに関して言うと、本番に入って初めてキスをしたんですよ。新鮮なものを撮りたかったので本番まで取っておいた。虚実ないまぜな感じだとは思います。福田さんの照れみたいなものも入っちゃっているでしょうし。そして加納さんは、本当は一番ヤバいヤツだよなって勝手に思っています（笑）。表面上、気さくで穏やかだけど常にトガリがあるというか。それを見事に演じてくれた。本人は「演技力がない」と心配していましたけど、めちゃくちゃ自然にやれていましたし、間合いやトーンが抜群でした。3人ともコントや漫才をやっていて、バラエティである程度、演技を求められることもありますし、場数を役者よりも踏んでいるかもしれないですからね。
──配信ベースの作品になりますが、媒体の形に合わせて気をつけたことなどはありますか？
上田 アップをたくさん撮りました。媒体に合わせて、というよりは、ファンとして「3人のどアップをあまり観たことがないな」と。バラエティでは、あんまりどアップにならないじゃないですか。なので、自分が観たいものを撮る。あと3人のトリオ芸人という設定についても、ファンとしては「夢のトリオだな」と思っています。
──気が早いですが次回作の構想などは？
上田 まだないですけど、「ウワキな現場」の特に前半はリアルに見えるので、もし次やるならもう少しフィクショナルなものを作りたいです。3人の女スパイとか（笑）。コントにならないようにするのが難しいですね。「カメラを止めるな！」などはワークショップを経て、半分以上が演技経験の乏しい、もしくは初経験の人もいながら作ったものなんです。演技ができるできないも大事なんですけど、役者以外の、人間として魅力があるというところを引き出せれば映画は作れると思っているので、芸人さんだからこそできるものってあるんだな、って今回作って思いました。
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上田 「こんなことテレビでやる？」みたいな攻めた感じが好きです。
プロフィール
福田麻貴（フクダマキ）
3時のヒロインのメンバー。1988年10月10日生まれ。大阪府出身。2017年にゆめっち、かなでとトリオを結成し、2018年にバラエティ番組「ウケメン」（フジテレビ）のレギュラーメンバーに選ばれる。翌2019年に「女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝した。吉本興業所属。
加納（カノウ）
Aマッソのメンバー。1989年2月21日生まれ。大阪府出身。幼なじみの村上とコンビを結成し、2010年にデビューした。2016年に冠ネット番組「Aマッソのゲラニチョビ」がスタート。2020年には「女芸人No.1決定戦 THE W」の決勝に進出した。ワタナベエンターテインメント所属。
サーヤ
ラランドのメンバー。1995年12月13日生まれ。東京都出身。2014年に大学のお笑いサークルでニシダとコンビを結成した。「ラランド・月の兎」（TBSラジオ）にコンビで、「ラランド・サーヤの虎視舌舌」（文化放送）にピンでレギュラー出演中。2021年2月にはサーヤが社長を務める個人事務所・レモンジャムを設立した。
上田慎一郎（ウエダシンイチロウ）
映画監督。1984年4月7日生まれ。滋賀県出身。初の劇場用長編作「カメラを止めるな！」は口コミによる大ヒットを記録し、流行語大賞へノミネートされるなど社会現象となった。
TELASA（テラサ）
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- テレビ朝日系 毎週月曜26:16～26:36
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