お笑いナタリー PowerPush - もっとたりないふたり
番組演出・安島隆が語る山里&若林
山ちゃんがあそこまで反撃するっていうのは若林くんも知らなかった
──ネタ帳企画(#10、#11)は、どの段階で生まれた企画なんですか?
ほんとに終盤。最初と最後の漫才以外、今回ずーっとゼロでやってきたんです。たりないふたりって、2人がほんとに熱を持ってできることしかやらせられないし、やっても面白くならないんですよね。毎回そうだったんですけど、今回特にそうだなと思いました。シーズン1は2人が世の中に対して、「こういう人間がいたっていいじゃないか」っていう熱を放ってたんですけど、今は2人ともテレビで活躍して、なんなら世の中の大多数側になっていってると。そんな中で残ったのがお互いへの熱で、若林くんは山ちゃんに興味があって、山ちゃんは若林くんに興味があって。そういう熱から生まれたのがネタ帳の企画ですね。
──2週にわたって放送されましたが、もともとは1回の予定だったんですか?
ほんとに1回でした。次の企画も用意してたんですよ。なんとなく「ベストアンサー Part2」かなって。だけどネタ帳の収録で、どうやらこれは相当話が盛り上がってるけど、まだ6割くらいしかいってないぞと。これから一番面白い、2人がオードリー、南海キャンディーズをそれぞれ見つける瞬間があるのに全然たどり着かないから、別の回にしようと思ってカンペで「ここで閉じましょう」って出しました。2人はなんで止められたのかわからないから憮然としてましたけど、あとで説明してやっと「ああ」って納得して。もうほんとにその場その場で作ってましたね。
──止めた甲斐があったというか、2回目には山里さんの元相方さんからメッセージまでもらって、1回目がきれいな振りになってました。
相方さんが書いてた詩って“芸人山里”の成長の物語として大きいじゃないですか。ああいうことがあってしずちゃんに出会って、しずちゃんにも同じようなことをしてしまって。それをうまく解消させてあげたかったというか。実際に相方さんは「山ちゃんはすごく面白くて、コンビ組んだことを後悔してない」って言ってたから、そのことを山ちゃんに教えてあげたかった。
──そんな紆余曲折を経て最後の漫才(#12)となりましたが、見終わったときのお気持ちは?
山ちゃんがあそこまで反撃するっていうのは若林くんも知らなかったんですよ。ちんあなごを若林くんにやらせるってところまではト書きにあって、山ちゃんに「そこが肝だから長くなってもいい。ひっくり返す形にしないと」って話だけしてて。あそこからじゃないですか、山ちゃんのスイッチが入ったのは。「もっとこうしろ」みたいなところからはまったくのアドリブです。
なんかもうお互いのこと好きすぎるんじゃないですか
──全12回を通じて、若林さんの予測不可能な動きや裏切りが多かった気はしていて、それが溜まり溜まって最後の漫才で、山里さんから若林さんへの反撃に繋がったのかなと感じました。
そうですね、なんかもうお互いのこと好きすぎるんじゃないですか。若林くん、好きな子だからきっとああいう意地悪なことしちゃうんでしょうね(笑)。山ちゃんもやられて嫌じゃないんですよ。好意はわかってるから。でもあんまりやられすぎると怒るっていうところが最後の漫才に出たのかなと。
──山里さんが急にすごくボケだす様はとても興味深かったです。
そうそうそう。ネタ帳の回でも、元々しずちゃんとダブルボケで3人目のツッコミを探してたっていう話があったから、ここに至るまでに本当はああいうことがやりたかったんでしょうね。あそこに正統派のツッコミがいればよかったんですね(笑)。
──2人の貴重なシーンを見られたと思います。今後の「たりないふたり」についてはどう考えてますか?
今回の企画にもあった「結婚」(#8)じゃないですけど、2人に何かしらあって何かが変わったり、興味の持ちようが変わったりしたらあるかもですね。
──何かが起きそうですか?
わかんないですね。起きそうでもありますし、そのまま何事もなく60歳とかになってる可能性もありますね。
──このまま60歳になったら、それはそれでたりてないですね。このまま何事もなく40歳っていうのもどうかと。
そうですね、確かに(笑)。40歳になったら、ありかもしれません。
──2人のお兄さん的存在の安島さんから見て、2人に結婚という変化は必要だと思いますか?
したほうがいいんじゃないですか、2人は。2人ともすごく面白い人たちですけど、違うきっかけがあるとさらに面白くなるんじゃないかなっていうくらいですかね。それが結婚じゃなくてもいいんですけど。個人的には彼らの結婚観にまったく興味ない(笑)。
──「結婚」がテーマの回では、2人が共同戦線を張ったり、逆に恋愛遍歴から上下関係の張り合いを見せたり、まだ少年のようなやりとりを見せていましたね。
リアルでしたね。2人のアンケートの似方とズレ方とかも。演出では絶対にできない。2人ともいい歳なんですけどね(笑)。結婚して子供もいる人からしたらほんとにダメな2人ですよね。子供のいるサラリーマンの方には、ぜひ上から見て笑っていただければ(笑)。
- DVD「もっとたりないふたり」/ 2014年8月22日発売 / バップ / VPBF-10997
- [DVD5枚組(本編4枚+特典1枚)] 12096円 / VPBF-10997
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収録内容
本編:オンエアバージョンのほか、未放映シーンを加えたロングバージョンを収録。
特典映像:「たりふた日誌2014」(メイキング)、公開収録後説、座談会の模様を1枚のディスクに収録。
収録時間:本編823分+特典映像
安島隆(アジマタカシ)
生年月日:1973年5月30日
出身地:東京都
日本テレビ制作局所属。これまでに「コレってアリですか?」「潜在異色」「君の席」「ナイナイアンサー」などの番組・ライブを企画演出。