よしもとが運営するスタッフ養成所・よしもとクリエイティブカレッジ(YCC)の卒業生は、芸人のマネジメントやテレビドラマ制作、バラエティ番組の構成、舞台進行、ロボットUX開発など、エンタテインメント業界において多岐にわたる仕事に就き活躍している。お笑いナタリーではある1日を使って卒業生5人の仕事場を訪問。彼らがどんなふうに働いているのか取材した。
YCCでは何を学べるのか、そしてそこでの経験は今の仕事にどう生かされているのか。エンタテインメントの世界で働いてみたい人は、ぜひ進路選択の参考にしてほしい。
取材・文 / 狩野有理
- よしもとクリエイティブカレッジ(YCC)とは?
お笑い業界だけでなく、音楽、映画、各種コンテンツ制作など、さまざまな分野においてノウハウを築いてきたよしもとが東京・大阪で展開しているスタッフ養成所。座学型、実践型で授業を実施しており、番組制作やイベント制作をモノづくりの現場で学べる。芸人や構成作家、放送局のプロデューサーといったプロを講師に迎えた特別講座も多数。卒業生は吉本興業グループ関連会社をはじめ、テレビ局、広告代理店、制作会社、芸能プロダクションなど、エンタテインメント業界で活躍している。
仕事場
①ガレッジセール・ゴリ出演 読売テレビ ドラマ「リピート」撮影
ドラマ制作 廣瀬郁哉さん
YCC1期生。現在はドラマ制作を担当し、キャスティングや脚本作りにも携わっている。過去にはバックパッカーをしていて、「これまでまともに働いたことなんてなかった!」という廣瀬さんは33歳でYCCに入学し、翌年よしもとに入社。担当ドラマの撮影中は、今日のように丸1日ロケの日もあれば、脚本の打ち合わせに半日費やすこともあり、毎日のスケジュールはさまざま。
マネージャー 松原彩香さん
入社1年目のマネージャーで、ガレッジセールを担当。この日はゴリのドラマロケに同行した。シリアスなシーンの撮影とあって、ゴリがしっかり役に入り込めるよう細やかな気配りでサポートする。YCCに通ったのは大学在学中。ボランティアスタッフをしていた「沖縄国際映画祭(現・島ぜんぶでおーきな祭)」にブース出展していたYCCに興味を持ち、1週間後に入学願書を提出した行動派だ。
今も生かされているYCCでの教えは?
あいさつです。現場に入ったとき、積極的にあいさつしてくださる方ってすごく好印象なんです。「あいさつすることが当たり前」って言葉で聞くと簡単そうなんですが、実は初めての現場であいさつするのって緊張するし、恥ずかしいし、ハードルが高いんです。でも、あいさつからその人との1日が始まるのですごく大切なこと。私はYCCで自然と身についていたので、よかったなと思います。
YCCに入ってよかったことは?
いっぱいありますが、一番は同期との出会いです。たまに会社や現場で会うと「みんなもがんばってるんだな」と活力になりますし、一緒に仕事ができたときはすごくうれしいです。お互いやりたい道を進んでいる途中の“同志”という感覚なんです。またYCCではよしもとの社員さんと交流を持てたので、よしもとという会社のことをよく知ることができて、「この会社で働くぞ」っていう心の準備ができました。よしもとの社員やタレントさんはみんな人に対して愛情があって、とても面白い方ばかりで毎日が楽しいです。
- ゴリからのコメント
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松原は「過ぎる」かもしれないですね! 何もかも一生懸命やるから、“平成のおしん”みたい(笑)。もうちょっと肩の力抜いてもいいんじゃないかなって思います。この業界は、緊張とワクワクどきどきが起きてから寝るまで続くので、楽しい半面疲れも相当なもの。でも「今日も働いた」「疲れた」って思える、やりがいのある現場にいられることは生きがいにつながると思うんです。松原は今、1年目で気を張ることばかりだと思うけれど、数年経って自分が現場を仕切ったり、責任あるポジションについたりすると、また違う楽しさを味わえるんじゃないかな。もちろんこの業界は楽しいだけじゃない。だけど、それでも乗り越えられるくらいの魅力があると思う。人生どの道選ぶか?って岐路に立っている人は、もしこの世界に興味があるなら一度は体験してみるべき。1回しかない自分の人生ですから。
- 木曜ドラマF「リピート ~運命を変える10か月~」
- 読売テレビ・日本テレビ系 毎週木曜23:59~24:54
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出演者
貫地谷しほり / 本郷奏多 / ガレッジセール・ゴリ / 島崎遥香 / 清水圭 / 福田転球 / 猪野広樹 / 松田悟志 / 手塚理美 / 安達祐実(特別出演) / 六角精児
仕事場
②テレビ朝日「※注 芸人調べ」スタジオ収録
構成作家 関野樹さん
放送作家を目指すも「どうすればいいかまったくわからなかった」という関野さん。その方法を調べている際、目に留まったYCCの作家コースに18歳で入学した。卒業2年目で地上波バラエティのほか、ヨシモト∞ホールを中心とする若手芸人のライブに作家として参加している。この日の収録ではマヂカルラブリーが自ら調査したロケVTRをプレゼン形式で紹介。関野さんも台本片手に笑いながら収録を見届けた。
YCCに入ってよかったことは?
芸人さんが漫才の作り方を教えてくれるなど実践的なことはもちろんですが、あいさつや仕事をする上での立ち振る舞い方といった基礎的なことを学べたのは18歳の僕にとって、とても重要なことでした。当時の僕がそのままこの業界に入っていたら、ただの“礼儀のなっていない変な奴”で終わっていたかもしれません(笑)。授業では実際にタレントさんを使ってライブや配信番組を行っていたので、プロとしてお金をいただいて仕事をするようになったときにその経験は役立ちました。また僕はフリーなので会社から仕事を振ってもらえるという環境にはないのですが、よしもとの劇場の手伝いをさせてもらう中で先輩作家さんや芸人さんとの関わりが生まれて、作家としての道を少しずつ切り開いていくことができました。
印象に残っている授業は?
オール阪神・巨人師匠をはじめ、師匠方の漫才を書いている本多正識先生という方がネタを見てくれる授業がありました。僕みたいな18歳のただの若者が書いたネタをそんな方がしっかり見てくれて、アドバイスしてくれたっていうのはすごく勉強になりました。卒業してから先輩作家さんにネタの台本を見てもらうということはあまりないので、YCCならではの貴重な機会だと思います。
仕事のやりがいはなんですか?
作業に追われている時など、しんどい期間も多いのですが、オンエアを観たときやライブが無事に終わったときに感じる、苦労して作ったものを世の中に送り出せたという達成感です。あと、もちろん責任を持ってやっていますが、好きでやっていることなので、実は基本的に仕事っていう感覚もそんなにないんです(笑)。今後は自分で一から考えた企画を番組にしてみたいですし、お笑いが好きでこの業界に入ったので芸人さんがもっと活躍できるような場を作るお手伝いができればいいなと思っています。
- ※注 芸人調べ
- テレビ朝日 毎週木曜25:56~26:21
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仕事場③ ヨシモト∞ホール
- スクール案内2018年4月入学生募集中
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よしもとクリエイティブカレッジは2008年度にNSCの姉妹校として誕生。各種番組やイベント、ライブなどに携わるスタッフや、クリエイター、構成作家の養成を目的としている。
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第3次募集締切:2018年2月末日(必着)
第4次募集締切:2018年3月末日(必着)
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吉本総合芸能学院(NSC)は1982年に大阪校が開校して以降、さまざまなタレントを輩出。2015年にはトレンディエンジェルがNSC東京校出身者としては初の「M-1グランプリ」王者に。新人オーディションなど芸人としての実力を試すチャンスが豊富で、成績優秀者は在学中から舞台やテレビなどで仕事の現場に立つ。
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第3次募集締切:2018年2月末日(必着)
第4次募集締切:2018年3月末日(必着)
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よしもと沖縄エンターテイメントカレッジは2011年4月に開校。独自の芸能文化が根付いている沖縄での新たな才能の発掘を目指す。「沖縄から世界に発信するコンテンツを」という志を掲げてタレントやスタッフ志望者によしもと流のノウハウを教えている。沖縄国際映画祭など県内各所で行われるイベントにて実践を積む機会も多数。
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願書受付締切:2018年4月末日まで(消印有効)
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2018年4月に開校する沖縄ラフ&ピース専門学校は、マンガコースとCG・アニメコースからなるクリエイティブ学科、パフォーマーコースとプロダクションコースからなるパフォーミングアーツ学科を用意。各コースでは元「週刊少年ジャンプ」編集長の堀江信彦氏やNetflixオリジナルドラマ「火花」を手がけたプロデューサー・古賀俊輔氏、トニー賞を3度受賞したヒントン・バトルといったクリエイターをレジェンド講師に迎える。入試はなく、入学資格を満たしていれば誰でも出願できる間口が広い学校だ。
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2018年3月24日(土)まで願書受付中。
YCCに入学したきっかけは?
漠然と芸能界に興味があって、けれども“出る側”、つまりタレントになろうという発想はなかったんです。そんな僕にとっては、面白そうな匂いしかないよしもとが運営している学校(=YCC)は芸能界に一番近い場所だと思えました。お笑いはもちろん、映画やドラマなど芸能界の仕事に関わることをまるごと勉強できるんじゃないかなと。それと専門学校以外に裏方の養成所ってあまりなくて、33歳のおっさんが入るのには一番適していましたね(笑)。
今も生かされているYCCでの教えは?
YCCの授業を受けたことによって、「作り手になる」っていう心構えを持つことができました。在学時にライブや映像を制作する中で、もちろん技術的なことも習得しつつ、ゼロから何かを生み出すという経験は作り手としての覚悟が芽生えるきっかけになりました。
YCCに行っていてよかったと思うことは?
僕はなんとなく芸能界に憧れるだけで明確に「○○になりたい!」という目標はなかったんですが、YCCでいろんな仕事があると知れたのはよかったことの1つですね。プロの仕事を見学する授業もあって、現場の空気を肌で感じることで自分の可能性を探ることができました。また、僕のように新卒じゃなくても、キャリアがなくても就職先が見つかったというのは大きいです。よしもとだけじゃなく、ほかの芸能プロダクションやテレビ局、広告関連やIT企業など、多方面で働いている卒業生はたくさんいます。10年の実績がある学校なので各業界で活躍中のYCC卒業生と横のつながりを持てたり、就職先にYCCの先輩がいたりと、卒業後のメリットも多いと思います。