招待状を待っていた

──松本さんからの招待状を受け取ったときはどんな気持ちでしたか？

ザコシ　やっぱりうれしかったですよ。「やっとか」って。もっと早く呼ばれてもいいと思ってましたから。周りの芸人からも「ザコシさん、まだ呼ばれないんですか」って言われてましたし、Twitterでエゴサーチすると「ザコシショウに出てほしい」っていうのがけっこうありました。

ケンコバ　エゴサーチ？ シャバいことしてんじゃないよ！

──エゴサーチしているんですね。

ザコシ　毎日してますよ。

ケンコバ　シャバ僧やな。

──ケンコバさんもシーズン3で招待状をもらったときに「待ってました」とおっしゃっていましたね。

ケンコバ　3回目まで名前が挙がらなかったっていうのは僕の情けないところです。今回も呼ばれましたけど、「なんでシーズン4は呼ばれなかったんやろな」って考えてしまいます。

──何回でも出たい？

ケンコバ　何回でもいいですよ。お金（参加費）には限度がありますけど。なんとか参加費1万5千円くらいにしてくれんかな。

ザコシ　そしたら賞金いくらになるの？ 15万？

ケンコバ　うれしいやろ、15万でも。

ザコシ　まあね。

──優勝賞金1000万円が懸かっていることで気合いの入れようは変わりますか？

ケンコバ・ザコシ　いやいや！

ザコシ　お金じゃないです。松本さんの催しなので、そこで1位を獲りたいんですよ。お金はあとから。「そういえば1000万円もらえるのか」っていうくらいの。

ケンコバ　だったら（「R-1ぐらんぷり」優勝賞金の）500万返せ！

ザコシ　なんで返さなあかんねん!?

ケンコバ　金じゃないんやろ？

ザコシ　ほんとに返す奴いないんだよ！

ケンコバ　関西テレビに「わかってください、お金じゃないんです」って返しに行ってこい。

ザコシ　「あーそうですか」って言われて没収されるよ。

ケンコバ　いや、「経理ややこしなるんでもらっといてください」って言われると思うよ。

ザコシ　現実的なこと言うんじゃないよ！ 優勝したときもめちゃくちゃなことを言ってきて。「500万のパネルを持ってきた人にドロップキックせえ！」とか。

ケンコバ　それで剥奪のほうが絶対ええやろ。「お前何してんねん！」って止めに入った（「R-1」司会の雨上がり決死隊・）蛍原さんにもラリアットするとか。

ザコシ　狂人やん！

──感動的な優勝は期待していなかった？

ケンコバ　何を感極まった顔で優勝パネル受け取ってんねんって激怒しました。

ザコシ　「ザコシショウが優勝するなんてカンテレ地に落ちた」とか言うんですよ。

ケンコバ　今年は正統派漫談の濱田祐太郎くんが優勝してよかった。カンテレも目、覚めたんやろ。

ザコシ　俺が優勝したときも眠ってないから！

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──ケンコバさんはシーズン3収録後、どんな気持ちでした？ 充実なのか、反省なのか。

ケンコバ　疲れましたね。6時間は長い！ あと、収録が始まるまで参加者は絶対に会わないように管理されてて、声も出せない、番号で呼ばれる、トイレも自由に行けないっていうストレスがすごいんです。めちゃくちゃウンコしたいのに「ちょっとお待ちください。……4番OKです」みたいな。

ザコシ　囚人やな（笑）。

──ケンコバさんといえば、ロバート秋山さんとの「マッサージコント」。お笑いナタリーの読者アンケート企画（参照：「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル Documentary of Documental」特集）でも人気でした。ゾンビルームではどんな作戦会議があるのでしょうか？

ケンコバ　いや、特に作戦会議はなくて。秋山ともなんの打ち合わせもなしですから。ただただ楽屋でよくしゃべっていたことなんですよ。「この前行ったマッサージの話」みたいなものを総合してやっただけで。

──お客さん役、店員さん役も特に決めずに。

ケンコバ　自然の流れでああなりました。

──シーズン5ではどんな場面が辛かったですか？

ザコシ　（狩野）英孝ちゃんの持ってきた小道具が活躍する場面があって、あれはキツかったですね。

ケンコバ　あれを使って僕も仕掛けたんですが、自分で笑いそうになりました。あそこまで破壊力があるとはな。

──収録後も興奮が冷めやらないと思うのですが、誰かと飲みに行ったりしましたか？

ザコシ　バヤシと行きました。僕の後輩も連れて。

ケンコバ　僕はちょっと引いてしまったんですけど、意外とこいつ、後輩にヨイショさせる飲みの場にするんですよ。「素晴らしかっただろ？」みたいな会に。

──言わせてる？

ザコシ　そんなことないって！（笑） バヤシは何言ってもこういうふうに持っていくんです。

ケンコバ　でも、松本さんと飲みに行ったときに「ザコシは素晴らしかった」って言ってましたよ。

ザコシ　うそ！

ケンコバ　うそやったらどうする？

ザコシ　泣く。

ケンコバ・ザコシ　あはははは！（笑）

ザコシ　でもうれしいですね。あの松本さんにそういうことを言われるっていうのは。

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──25年来の仲ですが、お互い変わったところって感じますか？

ザコシ　昔からやってることと何も変わっちゃいないですね。大人になっちゃう人もいますけど、バヤシはそんなことはないです。

ケンコバ　そこそこザコシに経済力がついてきてるのだけが残念です。もっと泥水すすってほしい。

ザコシ　けっこう長い間、泥水すすり続けたよ？

ケンコバ　泥水、煮え湯、冷や飯。そのフルコースで生きてくれ。

ザコシ　あはははは！（笑） 22、3年くらいそれでやってきたからね。

ケンコバ　でも、（バイきんぐ）小峠の説教で劇的に人生変わったよな。

ザコシ　ほんまやなあ！ あんときのジョナサンやろ？

──小峠さんの説教の話、ぜひ教えてください。

ケンコバ　お笑い界の伝説のひとつですよ。天龍源一郎さんの引退試合のあと小峠と3人で飲んでいて、当時のザコシショウは泥水の時代だったのでだいたい僕が支払ってたんですけど、ザコシが「たまには俺にもおごらせろ」って言い出して。「2軒目は俺が出す、ついてこい」って言って、ジョナサンに連れて行かれたんです。

ザコシ　ほかにどこも空いてなかったんですよ。

ケンコバ　おっさん3人、ジョナサンでレモンサワーだけ飲んでたら、ザコシが愚痴りだしたんです。「なんで俺だけ（売れてない）」「お前らはいいなあ」と。僕はニヤニヤして聞いてたんですけど、小峠が怒りだすんです。「ザコシさんね、一度言わなきゃダメだと思ってましたけど、あんた、人のせいにしてんだよ！」って、店内に響き渡るくらいの怒号。そしたら悔しかったんでしょうね、ザコシもウワーって店中を転げ回りだして（笑）。「チクショー！」って。

ザコシ　あはははは！（笑） コウメ太夫ばりに。

ケンコバ　そのあと「R-1」で優勝したんです。あの説教が効いたよな。

──いい話ですね（笑）。「ドキュメンタル」は「本当に面白いことを探る実験」として始まった番組ですが、出演者としてその答えの片鱗は見つけられましたか？

ケンコバ　松本さんと飲んだときに「ドキュメンタル」のお話をしたのはほんまに短い時間やったんですけど、「これからも戦っていこな」って言うてました。笑いとは“世間との戦い”なんでしょうね。お前も感謝せえよ、神に。俺とお前なんてスクールウォーズ事件で死んでたかもしれんねんから。

ザコシ　スクールウォーズ事件ってイモのやつ？（笑）

──「スクールウォーズ事件」？

ケンコバ　ドラマの一挙放送ってあるじゃないですか。昔はそういうのがなくて、「スクールウォーズ」一挙放送っていうのを自分たちで勝手にやってたんです。ビデオをまとめて観るっていうだけですけど（笑）。その間に取れる食事がザコシの実家から送られてきたジャガイモしかなくて、大量の味噌汁を作ったんです。「これで24時間つなごう」言うて。でも早く「スクールウォーズ」が観たいから、ジャガイモの芽を雑に取ってしまって、食べたらしびれて動けなくなって。

──ええ!?

ザコシ　芽が残っていたんでしょうね。

ケンコバ　だんだん目もかすんできて。それでも24時間、「スクールウォーズ」を見続けたんです。そんな状態で観てもやっぱり感動しました。

ザコシ　あはははは！（笑） って今この話まったく関係ないやん！

ケンコバ　だから、生きて「ドキュメンタル」に出ていることを神に感謝せえっていう。いや、もしかしたら本当はあれから今も死にかけてて、昏睡状態で見てる夢なのかもしれん。

ザコシ　長ーい夢やなあ！（笑）