ナタリー PowerPush - コロッケ
DVDが2タイトル同時発売 芸歴33年、新たな挑戦を語る
60才になったときにロボットできるのかな
──もう一方の「ものまね楽語会」はどのような経緯で始められたんですか?
普通の「落語」だと噺家さんたちに対して失礼だと思ったんで、モノマネの“楽しい”ほうのお話として、「ものまね楽語」っていう形を1つの別のジャンルとして作りました。この意図は、やっぱり自分たちもだんだん動けなくなってくるわけですよね。そういうことを考える歳になってきたんです。じゃあ60才になったときにロボットできるのかなとか。
──あはははは(笑)。
そうなったときでもモノマネを楽しんでもらえる形を作っていきたいなと。それと、登場人物をモノマネで演じることによって、もっと落語が身近になると思ったんです。子供たちって落語ってダメじゃないですか。でも登場人物がいろいろ変わったりするだけで、「えー?」とか、別な形で興味を持ってもらえる。あと強いて言えば、やっぱりモノマネやってる子たちも落語好きな子多いし、これを勉強することによって、また違う道ができると思うので。自分なりにいろんな道を作っていかないといけないなっていうのは、正直言うとありますよね。
──人情噺の「文七元結」を選んだ理由は?
「文七元結」っていうのは、名人しかやっちゃいけない演目なんです。それも本当に大ベテラン、20年、30年やってる方しか触れちゃいけないような演目なんですが、僕はこの物語が大好きだったんで、あえて触れてみました。
──特に力を入れた点はどこですか?
一番気をつけたのは、モノマネが似すぎないようにすること。あんまり似すぎちゃうと、お客さんの気持ちがそっちに行っちゃうから。
──話に集中してくれなくなるという。
そう。だから話に集中するために、田中邦衛さんの最初のひと言目とか、ちょっとした動きは似ている形をとるんだけど、少しずつモノマネを削っていくと。そこが僕なりのこだわりでした。
武田鉄矢さんのマネってこんなにバージョンあったっけ?
──コージー冨田さん、ホリさん、葉月パルさん、古賀シュウさん参加の「5人武田鉄矢」も圧巻でした。
落語が好きな面々が集まってやりだしたんですけど、それぞれが違う武田鉄矢になると、「武田鉄矢さんのマネってこんなにバージョンあったっけ?」っていうのがわかる(笑)。モノマネ芸人1人ひとりの解釈によって、どこらへんの武田鉄矢さんなんだろうっていうのがあるんですよ。「金八先生」だったり、「刑事物語」だったり、「101回目のプロポーズ」だったり。で、僕は最近の武田さんなんです。
──声が低い感じの。
そう。
──モノマネをしようと思って出せる音域っていうものがあるかと思うんですが、コロッケさんってわりと早い段階から音域の幅の広さは身についていらっしゃったんですか?
いや、もう低音出す練習をひそかにずっとやってたんです。「あーあーあー」ってやっても響かないんですよ。(実際に低音を出しながら)「あーあー」っていう響くような低音を出す練習をひたすらするんです。これは1年2年でできるもんじゃない。やっぱり武田さんは低音を使ったセリフをあるときからすごく言うようになっていて。「龍馬伝」の勝海舟とかもそうですけど、ここぞっていうときのセリフは低音使いますから。「お前が龍馬か」でグッとくる。「金八先生」の武田さんっていうのはまったくタイプが違いますし、「101回目」なんて、もっと違う。ですから、僕の中で、違う武田鉄矢さんをやってるのがこのメンバーなんです。
──「楽語会」はこれからの展開も楽しみですね。
楽しいほうの話の「楽語」なんで、特別なくくりがないんですよね。今回は一応テーマは大喜利っていう感じでちゃんとした形でやってるんですけど。取っ掛かりなんで、最初にやり出したときはこんな感じで、これが3年、5年、7年、10年って経っていけば、「あ、こんなに形が変わってきた」って言われるようになるのかなって。やっぱりね、ちゃんと噺家さんみたいにできるには10年はかかると思いますよ。
コロッケ
1960年3月13日生まれ、熊本県出身。1980年に「お笑いスター誕生!!」(日本テレビ)でデビューした。モノマネのレパートリーは300以上。モノマネ番組のほか、全国各地でのコンサートや座長公演など精力的に活動している。自著「母さんの『あおいくま』」が好評発売中。