サラミは10歳のときに戦争から逃れるために家族で北海道の帯広に移住。その後大学受験を機に上京したものの失敗し、NSC東京8期生としてお笑いの道に進んだ。当初デスペラードは3人組だったが、1人は脱退し現在ピン芸人・茶柱立乃助として活動。現在は東京出身の武井とともにライブを中心に奮闘している。
同書でも「こんなネタテレビで放送したら国際問題になっちゃうよ!と怒られたこともしばしば」と語るサラミだが、「M-1グランプリ2010」でデスペラードは準々決勝まで進出。日本のメディアで流れるイラン情報を巧みに織り交ぜて会場を笑わせていた。サラミはネタについて「寝て起きたときとか、コンプライアンスの説明をされているときとかにポッと浮かぶんです。そういうときに男って何考えてるかっていうと9割下ネタだと思うんですよね。僕は残りの1割で悪意のある妄想をしちゃうんで、ネタはそれが形になったようなものです」と説明。「自分としては、なんでそんなに笑うの? って思います(笑)」とネタを客観視しつつ、M-1での成果についても「江戸時代でも士と農工商、さらに下の階層などの身分制度があって“この人たちよりマシだ”って思えるのと同じで、2回戦とかで落ちた人たちが僕らを見て“あんなもんが準々決勝行けるなら俺らもまだいけるぞ”ってエントリー料を払うっていう。そういうスベリ枠だと思ってます」と、独特の観点で解説した。
10歳から日本にいたとはいえ、同書にも随所にみられる豊富な知識について尋ねると、「すごいなってよく言ってもらうんですけど、これは友達がいなかった証拠なんです。友達いなくてすることないんで、本とかテレビばっか見てて」というサラミ。お笑いについては「最初は志村けんさんと、とんねるずさんとか。日本語がわかんなかったんで、見てて楽しくて。だから中学のときはダウンタウンさんが好きじゃなかったんですけど、高校くらいになって日本語とともにやっと理解できたんです。こんなすごかったんだ、やべーって」と振り返った。
執筆については「M-1」が終わったころから書き始め、最終的には1000ページ近くにもなったという。「イランのバザールでは、精肉店で羊の精肉ショーっていう、その場で羊を解体するショーがあるんです。羊は人間が30、40人いるとブルブルブルブル震えちゃうんですけど、そこではプロが軽く羊を触ったりしてリラックスさせるんですよ。そういう一連の行動を加藤鷹のテクニックとリンクさせて語ってるんですけど、全部カットになってました(笑)」とまだまだネタは尽きないようだ。カダフィ大佐の死去、ウサーマ・ビン・ラーディンの死亡報道など、中東情勢に合わせて原稿を書き直すことも。同じ事象でもイランで報道されていることと日本で報道されていることに違いもあり、サラミはイラン現地からの情報も踏まえて、自身の理論を展開している。
また、「『おしん』の視聴率が90%、再放送でも80%。大統領になってほしい人3位くらいに泉ピン子さんの名前が入ってる」というほど、「イラン人は日本人が大好き」と強調。「今イランでは女性の忍者ブームなんですよ。忍者の恰好だったらチャドルの規定にも反してないしカッコいいって。今3500人の女性が忍者になりたくて修行してるんです。主婦業を営みながら手裏剣を習いたいっていうレクリエーション忍者と、水遁の術でイランから三重県の伊賀まで行ってやるっていう本気の忍者との間で、道場の中で争いも起こってて(笑)」という情報も提供した。さらに、ネット規制がないイランでは秋葉原のコスプレも流行中で、アニメのコスプレではなく「天狗」「奈良の鹿」「マタギ」などが人気だという。一度サラミの親戚が日本に来た際、トキのコスプレをしており、それを褒めたところ「その人ボロボロ泣き出して『ありがとう!イラン人みんなトキ知らなくて『鶴だ、鶴だ』って。このトキの良さみんなわかんないんだけど、日本はトキなんだよ!」と感激されたというエピソードを語った。
真剣に「日本の人にイランの良さをわかってほしい」と語ったサラミ。イランの日常生活やイスラム教の戒律など、日本人には理解しにくいことも、サラミが日本で培ったとびきりのお笑いセンスを活かしてわかりやすく説明しているので、気になる人は本屋に足を運んでみよう。
エマミ・シュン・サラミコメント
イランのイメージってすごく悪いと思うんです。「この本をきっかけに、旅行したいって人が増えたらいいじゃないですか。結構、水面下にいるんじゃないですか」って編集者の人に言ったんですけど、世論調査で一番危ない国、行きたくない国がイラン、北朝鮮、パキスタンだったんですよ……。でも実際はイランってものすごく日本大好きな人が多くて、日本人が行っただけで「わー! 日本人だ!」ってなりますし、基本的には冗談ばっかり言ってる楽しい人たちなんです。ペルシャ語わかんなくてもすぐツッコミたくなるような。なので、ぜひこれを読んでイランに行ってみたいなって思ってほしいです。
イラン人は面白すぎる!
第1章 陽気なイスラム教
第2章 豚肉とラマダン
第3章 すべてはバザールと食卓にある
第4章 中東の恋愛不毛地帯
第5章 イランの罪と罰
第6章 学校という名の階層社会
第7章 アラブの中のイラン
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