ヤバい番組の制作秘話~誰がどうやって企画した!?~ [バックナンバー]
真空ジェシカ・ガクが「年忘れにっぽんの歌」裏配信で寒空の下6時間ボイトレ!? 裏側を城谷Pに聞いた
歌を通して1つになった真冬のロンドンバス
2026年4月12日 10:00 4
ユニークなテレビ番組を企画・演出している裏方を取材する「ヤバい番組の制作秘話~誰がどうやって企画した!?~」。第2回には、大晦日、走るロンドンバスの中で
取材
※取材は2026年1月下旬に実施。
「年忘れにっぽんの歌」裏配信の内容
「年忘れにっぽんの歌」は大晦日恒例の歌謡・演歌番組。2025年は番組の宣伝として、特別仕様のラッピングを施したロンドンバスが期間限定で都内を走行していた。そのロンドンバスに真空ジェシカ・ガクが乗り込み、ボイストレーナーでありYouTuberとしても知られるしらスタからの指導を6時間受け、ラストに北山たけし&大江裕と共にその成果を披露。MCを
なぜロンドンバスで6時間ボイトレ?
──ユニークな番組を企画されているテレビの制作者にお話を伺うシリーズです。今回は、「年忘れにっぽんの歌」の裏配信を担当した城谷さんにご登場いただきました。真空ジェシカ・ガクさんがロンドンバスで移動しながら6時間ボイストレーニングを受けて、番組本編の最後に北島三郎さんの「まつり」を歌うという、一見わけのわからない企画で、プレスリリースを拝見してびっくりしたことを覚えています。
あはははは(笑)。記事でも盛り上げていただきありがとうございました。
──そもそも「年忘れにっぽんの歌」は王道の演歌・歌謡番組ですよね。
お堅い歌番組というイメージですよね。今年から面白い要素を入れていこうという流れがあって、本編にも水谷千重子ファミリーのみなさんに出演していただいているんですが、私は途中までこの番組に配属されていなかったので、「今年はお笑い芸人さんも出るんだな、面白そうだな」と遠目から見て思っていたんですよ。そしたら急に、「生配信やれる?」と声がかかって、担当することになりました。
──「ロンドンバス」「6時間」「ボイトレ」など、いろんな要素が掛け合わさって、いい意味でトンチキな企画になっていると思うのですが、内容が決まった経緯や意図を教えていただけますか?
テレビ東京では、「テレ東音楽祭」や「隅田川花火大会」など、大きい特番で裏配信を行うことはこれまでもちょこちょこあったんです。それで「年忘れにっぽんの歌」でも初めて裏生配信をすることになり、しかもオンエア尺とぴったり同じ6時間やりますという話をまず番組プロデューサーから受けました。それとは別に、「ロンドンバスに番組のラッピングをして都内を巡回するというPRをするから、それをうまく使ってください」と宣伝部からお話があって。なので、「ロンドンバス」と「6時間」が最初に決まっていたことでした。それだけ与えられて、「あとは何をやってもいいよ」と。大晦日、ロンドンバスの吹きさらしの屋上で一体何ができるんだ……と考えて、やっぱり歌番組ですし、歌関連で何かしようということで「ボイトレ企画」になりました。6時間ボイトレをして、そのゴールとして地上波で歌唱するということであれば、大みそかの夕方~ゴールデンタイムという皆さんの大事な時間でも応援しながら観ていただけるんじゃないかと。そして、キャスティングも「誰でもいいよ」と言われていたので、好きな人を呼ばせていただきました(笑)。
──ガクさんが好きな人第1候補だったんですか?
そうです。最初にガクさんにお願いして、OKいただけました。
──もしかしたら、そのときには「M-1グランプリ」王者になっていた可能性もありますよね。
そうなんです。準決勝を見て、「絶対真空ジェシカが優勝する」と思ったのでお願いしたという、ちょっと下心もありつつ(笑)。
──企画の内容を伝えたときのガクさんの反応は?
すごくびっくりはされていましたが、快諾していただきました。ガクさんは「死ぬことくらいまではやります」とよくおっしゃっていて。「死ぬこと以外は大丈夫」ではなくて、「死ぬこと」も入っているんですよ。「その覚悟ができるような企画であればどうなってもいいよ」という。そういう方なので、きっとOKしてくださると思っていて、実際に企画を説明したら「やります」と言ってくれました。
──ガクさんの歌声は聴いたことがありましたか?
ライブなどで聴いたことはありました。真空ジェシカの漫才ライブと抱き合わせで「カワマタカケル」というガクさんのピンの単独ライブがあって、そこでめっちゃ歌っていたのを聴いたことがありましたし、ピンネタの「にんにょう」でも歌っていますよね。それがすごく味があって、かと言ってすごくうまいわけではないので、「6時間練習したらうまくなりそうだけど、今は下手な人」という人選に適任かなと思いました。
真空ジェシカ・ガク ピンネタ「にんにょう」
アドレナリンが出て“寒さ”よりとにかく“歌”!
──裏配信当日、Xは「#ガクまつりチャレンジ」で盛り上がりを見せていました。現場の様子はどうでしたか?
とにかく寒かったです!(笑) ただでさえ冬の屋外なのに、走行することによって風もすごくて。でも始まってみたらみなさんアドレナリンが出て、「一旦寒さは大丈夫なので、歌をなんとかしましょう!」という企画の軸の部分にモチベーションを向けてくれていました。配信が終わってから、みんな我に返って「めっちゃ寒い!」となっていました。
──まっすぐ歌の向上に励んでくれたんですね。
そうなんです。北島三郎さんの「まつり」は長く愛されてきた日本の心みたいな曲なので、ちゃんと歌えないと本当に恥をかいてしまうというか、応援してくれていた人をがっかりさせてしまいますよね。歌唱するのは本編大トリの1つ前というかなり大団円な場面でしたし、北島兄弟の北山たけしさん、大江裕さんと歌うことになっていたので、ガクさんも「本当にがんばらなきゃ」と思ってくれていたみたいです。芸人がふざけているだけだと思われるのもガクさんに申し訳ないですし、とにかく練習はしっかりやって、上達しなければと思っていました。
──一番配慮した部分は?
やっぱり、ボイトレの軸をずらしたくなかったので、当日はボイストレーナーのおしらさん(しらスタ)に来ていただいたんですが、おしらさんのボイトレ講座をいかにこの厳しい環境下でやっていただくか、ということにはすごく気を配りました。6時間あるとはいえ、しっかりボイトレをしていかないと何をやってるかわからない配信になってしまうので、その環境作りには力を入れました。
ガクの青春
──一般の方が駆け付けて応援してくれていた場面もありましたよね。
番宣も兼ねているので、渋谷あたりでバスを降りてステッカーを配るタイミングがあったんですが、たまたま居合わせた方だけでなく、「配信の視聴者です」とわざわざ渋谷まで来てくださった方もいて。大晦日のこんな時間に「ガクまつりチャレンジ」に時間を使ってくださることがすごくありがたくて、感動しました。「ガクさんがんばれ」と書いた大きめの紙を沿道から見せて応援してくれる方もいました。なんとなく「今このあたりにいます」とは伝えていたんですが、具体的な場所は公開していなかったので、そういう方にちゃんと遭遇できて本当によかったです。YouTubeのチャット欄もすごかったんですよ。「キビシイ」とか、真空ジェシカ語というか(カナメストーン)山口語がバーっと流れてきて。
──それは、ちょっと怖いですね(笑)。
(笑)。ニコニコ動画の弾幕みたいな感じで、盛り上げていただいてありがたかったです。
──最後に「まつり」を歌いきって、「感動した」という声も多くありました。
現場もそんな空気が漂っていました。例えば「山の神 海の神」の部分は「日本はアニミズムの国だから自然に感謝をしながら歌いましょう」とおしらさんが指導されていたんですが、歌詞の1つひとつがちゃんと練習どおりにできていたかを本当にみんなで集中して見守って、ガクさんが一節歌うたびに「よしよし!」、高音がちゃんと出ていたら「当たった、当たった!」と、もうスポーツを観戦しているようでした(笑)。「ガクさん行けー!」みたいな感じで、すごく楽しかったです。視聴者のみなさんも「声出てる!」とコメントしてくださっていて、全員でガクさんを応援している感じがすごくよかったなと思います。
──ガクさん本人は歌い終えたときどんな様子でしたか?
すごくホカホカしていましたね。バスに戻り、「やりました」「みなさんのおかげです」と言いながら、温かく迎えられていました。「大晦日にこういう楽しい仕事があってよかった」というようなことを言ってくださったので、それはホッとしています。応援ゲストとして
「24時間マイクラ配信」の反省を生かす
──今回の裏生配信の結果はどう評価されていますか?
比較対象があまり見つからないので難しいのですが、大晦日はテレビ番組もそうですけどYouTubeもかなり激戦区で、いろんな生配信が行われていた中、常に2、3000人は観てくださっていたのはよかったと思っています。「まつり」を地上波で歌うところまで見届けてけてくださって、この企画を楽しんでくれる方がたくさんいたということは実感できましたし、想定以上でした。いい意味で、「変なことやってんな」ということはできたんじゃないかなと思います。それによって「年忘れにっぽんの歌」を知らなかった方、例年は観ていない方にも届いたと思いますし、何より真空ジェシカファンの方々に喜んでいただけたんじゃないかなと思うので、個人的には大成功だと思っています。ロンドンバスもうまく使えたし、ガクさんも風邪引かなかったですしね。本当に、そこだけはものすごく注意したんです。少し前に「有吉ぃぃeeeee!」の企画で「24時間マイクラ配信」という企画を担当したんですが、出演者のウエストランド井口さんの声が終わる頃にはガサガサになってしまって。
──それはどうやら配信の前から調子を崩し気味だったようですね。
そうお聞きしましたが、もうちょっとケアできた部分もあったんじゃないかなと反省があって。なので、今回は絶対に体のケアをしっかりやるぞと決めていました。温かいお茶、電気毛布、ベンチコート、手袋、耳あて、防寒で思いつくものはすべて用意して、途中の夕食も冷えたお弁当とかにはならないようラーメン屋さんを予約しました。マヌカハニーのキャンディや、使いませんでしたがスチーム吸入器など、何があっても対応できるように構えていました。
──「24時間マイクラ配信」も城谷さんが担当されたんですね。もしや、変な配信が得意なんですか?
得意というわけではないですが、変な配信を任せていただくことが多いですね。「変な」というか、「自由な」と言いますか(笑)。「有吉ぃぃeeeee!」ではアンガールズ田中さんを主人公に据えて定期的に生配信をやっていたんですが、それも最初から携らせていただいていました。
──城谷さんは2020年の「マヂカルラブリーの君に捧げるTV」(※)を担当されていましたよね。あれもかなり変わった生配信イベントでしたが。
あ、そうですそうです。
※編集部注:「テレ東無観客フェス2020」の一環として実施された「いきなり『冠』ツクル!~一緒に“番組”作ってみませんか?~」のうちの1つ。タレント、スタッフ、視聴者が一緒になって番組を作るという試み。
「勇者ああああ」を観てテレ東だけ受けた
──改めて、これまで担当された番組も含めてテレ東でのキャリアをお聞かせいただけますか?
4月で入社9年目になります。「有吉ぃぃeeeee!」には1年目に入れさせてもらって、4年目くらいまで生配信と本編に携わらせてもらいました。「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」で基本的なディレクターの仕事を学び、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」と「にちようチャップリン」を担当したのち産休に入り、復帰してまた「有吉ぃぃeeeee!」と「チャップリン」を今も続けています。
──テレビ関係のお仕事に就こうと思ったきっかけは?
遡ると、大阪出身なので「炎上base」(関西テレビ、2009年4月~2010年3月まで放送された深夜バラエティ番組)をよく観ていて、お笑いが好きになりました。ただ、制作側に回りたいと思ったのは全然もっとあとのことです。大阪ローカルもそうですし、「水曜どうでしょう」(北海道テレビ)など地方局の番組って演者とスタッフの距離が近くて、それで“スタッフ”というものの存在を知るようになったのが大きいです。就活直前は、テレビ東京の「勇者ああああ」(※)というゲーム番組がすごく好きで。大阪だったのでテレ東は映らなかったんですが、それだけはTVerで欠かさず観て、「勇者~」をやっている局だったら受けてみようと思い、テレビ局はテレビ東京だけ受けました。あとは全部ゲーム会社を受けていて。
──「勇者~」に影響を受けてテレ東を志望されていたとは。この番組もかなり異色のバラエティでしたよね。では城谷さんは、板川チルドレン?
完全に板川チルドレンです。……と言ったら板川さんは嫌がるかもしれないですが(笑)。「マヂキタ大草原~おれネト民だけど何か質問ある?~」という番組を企画していたんですが、第1弾、第2弾とやって、第3弾は決定していたけど私が産休に入るタイミングと重なってしまって。そしたら板川さんが「俺やるよ」と言ってくださって、演出を板川さんにお願いしてなんとか放送できたんです。なので、お世話になりっぱなしの先輩という感じですね。
※編集部注:「勇者ああああ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~」は2017年4月~2021年3月にテレビ東京で放送されていた、ゲームを軸とするバラエティ番組。アルコ&ピースがMCを務め、芸人を中心に料理研究家の園山真希絵、クイズ作家の古川洋平など多様な著名人が出演し、人気を博していた。「マヂカルクリエイターズ」「ヨソの番組乗っかりクイズ 寄生番組パラサイト」といった番組を手がける板川侑右氏が演出を担当。
ガクチャレンジ、今年はあるのか
──最後に、今年の「年忘れにっぽんの歌」も何か面白い企画を期待してもよいでしょうか?
終わったあと、ガクさんに「来年もやりましょう」と言ってみたら、「検討します」と(笑)。「もうやりたくねえ」ではなくて、検討はしてくださるみたいです。テレビ東京としても配信は力入れていくところだと思うので、また芸人さんと何か面白いことができたらいいなと思っています。
──せっかくお話を聞かせてもらいましたが、裏配信のアーカイブはYouTubeに残っていないんですよね。
そうなんです。権利関係が難しくて。「アーカイブないんだ」というリアクションもいただいていて、申し訳ないのですが。真空ジェシカさんのラジオ(TBS podcast「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」)で裏配信の模様を話されてる回があるので、ぜひ聴いていただいて、そちらで残り香を楽しんでいただけたらと思います。
プロフィール
城谷美里
テレビ東京制作局所属。2026年4月で入社9年目。現在の担当番組は「有吉ぃぃeeeee!」「にちようチャップリン」など。「マヂキタ大草原~おれネト民だけど何か質問ある?~」企画演出。
お知らせ
「有吉ぃぃeeeee!」で4月25日(土)、26日(日)開催の「ニコニコ超会議2026」@幕張メッセに参加します! ステージイベントやグッズ販売もあります! 詳細は番組Xをご覧ください!
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ガクまつりチャレンジ面白かったな。全てがいい塩梅だった。ガクだったから見てたけどニシダも良かった。
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