いざ「M-1」へ!
大崎とのコンビ「ストロングマン」が事務所ライブで優勝したり、いおりとの「Hi TEENS」、大崎、堀之内との「エネルギッシュ」、こたけ正義感との「ブルーマウンテン」がバトルライブで3組同時に入賞したり、ヤマトのユニットはそれぞれが着実に仕上がっていった。そんな中で迎えた「M-1」1回戦、ヤマトは「たくさんのユニットで出ること自体がボケとは思われたくない」と考えていたという。そこには「自分たちはネタがちゃんと面白い」というプライドがあった。
「実際の大会では、同じ人が何回も出ていると気付かれないように、ネクタイの色を変えたりしてカモフラージュしていました。8組全部、僕の衣装がちょっとずつ違うんです。でもすぐにバレました。大会に密着してるカメラマンさんに『何回出るんだよ!』って(笑)。8月だけで1回戦に5回出てますからね。改めて見ると相当キモい。でも本気なので、8回の出番はすべて緊張しました」
ヤマトは「むさし野」「ストロングマン」「Hi TEENS」「ブルーマウンテン」「東ニホンズ」の5組で1回戦を突破。特にいおりとのコンビ・Hi TEENSはその日の第3位に選ばれるほどの高評価だった。
「Hi TEENSの3位は本当にビックリしました。単独ライブのときに八田荘・鈴木さんがポツリと『いおりかもな。面白い』と言っていて、観客からもHi TEENSが面白かったという声が多かったんですけど、僕の中ではピンときていなかったんです。ほかのユニットは大声で会場を巻き込みながらガンガン笑いをとりにいくタイプなんですけど、Hi TEENSだけはボケの一発一発がちゃんとウケるかハラハラしながらやるので少し異質。受かるとしてもベスト3に食い込むとは夢にも思わなかったです。でも動画を見返すと、一番変な漫才だし、コンビのコントラストもおかしいし、その新しさを評価してもらえたのかなと思いました」
※動画は現在非公開です。
一方で「チャーリー・マッカーシー」「ヤマト&堀之内」「4WD」は1回戦敗退。チャーリー・マッカーシーはヤマトが実の弟と組んだコンビだ。
「僕と弟は子供の頃から仲が良くて、自分の好きな笑いやノリを一番共有できる相手。大喜利という言葉を知る前からお題に沿ってボケあっていたんです。それもあってか『M-1』では、兄弟感のない、ボケとツッコミの質で勝負するネタをやってしまって普通に落とされました。“素人の弟”という武器をまったく生かしていない。コンビ名も『ヤマト兄弟』とかにすればよかったのに『チャーリー・マッカーシー』。これは昔、VHSに撮って2人で観ていたアニメのキャラクター名で『それをコンビ名にしたら面白いじゃん!』って盛り上がったんですけど、その背景を知らない人にとっては意味不明ですよね。今となっては、俺らはどこで尖っていたんだろうと思います(笑)」
迎えた2回戦、5組で参加するヤマトは会場の浅草・雷5656会館に1週間で5回通った。
「このときには、さすがに予選に慣れてきました。先陣を切ったストロングマンがめちゃめちゃウケて合格したので、そこで緊張もなくなって、会場がまるでホームの劇場のように感じてくるんです。でもその余裕がよくないところまでいっちゃったみたいで、残りの4組は全部落ちました。5組目の『むさし野』なんか、ちゃんとスベりましたからね」
3回戦では、唯一生き残ったストロングマンも敗退した。こうしてヤマトの「M-1グランプリ2021」への挑戦は終了。彼が予選で披露した漫才は最終的に14本となった(1組で参加した場合、1回戦から決勝の最終決戦に進んだとしても披露するのは7本)。
「ストロングマンが2回戦でめちゃめちゃウケたときに『もしかして』と思ったんですけど、そんなに甘くなかったなというのが正直な感想ですね……。今回の『M-1』で学んだのは、前のめりで夢中になっているときほどいい結果が出て、慣れすぎると落ちるということ。そして思いっきりやっている芸人がとにかく強いということ。ランジャタイさんみたいに、本人たちがネタに没入していると観客や審査員も揺さぶられる。逆にちょっとでもビビりながらやっていると面白くなくなるんだなということを強く実感しました」
「どうやったら相方が面白く見えるか」ネタの作り方の変化
ヤマトは『M-1』の期間中、独特な形の漫才を精力的に生み出した。予想もしていなかった化学反応から生まれるアイデアも多く、「自撮り漫才」なる斬新なネタも偶発的に誕生した。
「自撮り漫才は動画ネタライブ用に作ったネタです。ネタの案がないまま撮影用のスタジオだけ予約していて、とりあえず現場に行ったんですよ。そこで『時間がないのでカメラ回しちゃいましょう』ってスマホのカメラを起動したときに、画面から相方のマービンJr.さんを外す面白さに気付きました。面白いものを生み出すときって、その場のノリが大切なんだということはこの1年間で強く思いました」
ユニットを多く経験することで、ネタを作る際の根本的な考え方にも変化があったという。
「コンビ時代は何がウケて何がウケないのかを確かめながら成長している10年で、自分が面白く思われることに必死でした。でもユニットの場合は絶対に『どうやったら相方が面白く見えるか』という部分からネタを考え始めるんです。あとは前説で盛り上げるのが得意だったことも、いい方向に作用しました。相方の変なところを『皆さん、こいつ変ですよね!?』って客席に問いかけるタイプのネタが多くできて、そういうのはけっこう盛り上がるんですよ。コンビ時代は僕が前に出ていましたが、今は相方の変な部分をより広範囲に伝える拡声器のような役割だと思っています」
来年の「M-1」も出場せざるを得ないくらいのものができた
ヤマトは8月に単独ライブ「ヤマト最終形態2」を開催しており、現在は12月21日に実施する「ヤマト最終形態3」に向けて準備を進めている。
「これがね……めちゃめちゃ面白いネタができたんですよ! ヤバいと思います。マジで全組面白くてビックリするんじゃないかと。ユニットネタのクオリティなんてたかが知れてると思っている人にも観ていただいて、『ここまでできるの!?』と驚いてほしいです。今回の『M-1』に参加したユニットのほか、新たなユニットでのネタもたっぷりやります。イヌコネクションさんや八田荘・鈴木さんとのネタは、すでに見てくれた人が『面白い』って絶賛してくれていますし、自分でも来年の『M-1』も出場せざるを得ないくらいのものができたと思っています。1回限りのライブで封印するのはもったいない! 決勝で8ステ、最終決戦も入れて11ステという夢に向かってがんばります」
「解散はつらかったですけど、いろんな人とユニットを組めたおかげで、デビュー当時のワクワク感を取り戻せた気がします。この1年間、特に『M-1』の期間は、楽しいと思うことが本当に多かったんです。『ヤマト最終形態2』が終わったあともめちゃめちゃ手応えがあって、エンドルフィンでキマっちゃってる感じ(笑)。ずっとお笑いをやっていたいなと何度も思いました。こんなにいろんなユニットをやっていると、お笑いの変態と言われることもありますけど、根源にあるのはとにかくネタをやるのが超楽しいという気持ち。『ヤマト最終形態3』も、また『M-1』に出るときも、思う存分楽しみたいです。というか人生楽しみます!」
「M-1グランプリ2021」ではヤマトだけではなく、白桃ピーチよぴぴも6組のユニットで出場し、そのうちの4組で2回戦に進出して話題を呼んだ。おいでやすこがの活躍もあり、ユニットが存在感を増していることは間違いない。彼らが今後の「M-1」、そしてお笑い界にどのような風を吹かせるのか注目だ。
ヤマト
1989年1月13日生まれ、埼玉県出身。ワタナベコメディスクール13期生。たっぷり藤原とのコンビ・ガッツマンで、2016年と2017年に「ワタナベお笑いNo.1決定戦」「あなたが選ぶ!お笑いハーベスト大賞」の決勝に進出した。2021年3月にコンビを解散してからはピン芸人に。同年5月に単独ライブ「ヤマト最終形態」、8月に「ヤマト最終形態2」、12月に「ヤマト最終形態3」を開催。
ヤマト最終形態3
日時:2021年12月21日(火)18:30開場 19:00開演
会場:東京・表参道GROUND
料金:2000円
チケット:TIGETで販売中。
<出演者>
ヤマト
ブチギレ氏原 / 笑撃戦隊・柴田 / クマムシ長谷川 / アユチャンネル / いおり / イヌコネクション / 内間 / ただの大崎 / 八田荘・鈴木 / リンダカラー・デン
MC:ロングロング
ラッキーゲームス @RucKyGAMES
ありなのか : 「M-1グランプリ2021」に8つのユニットで出場した男・ヤマト、その理由を聞いてみた https://t.co/YIfIAAspIc