番組MCの芸人を隣でサポートする、もう1人の大切な存在。アシスタント、進行、サブMCなど呼称や役割はさまざまだが、共演を重ねるうちにその番組ならではの名タッグとして認識されることも多い。本連載「私のとなりの芸人さん」では、そんな芸人たちの隣の人々に焦点を当て、その視点から芸人たちを語ってもらう。
第2回に登場するのは、「全力!脱力タイムズ」(フジテレビ系)でMCのアリタ哲平(
構成
小澤陽子アナに聞いたアリタ哲平のこと
アリタ哲平(くりぃむしちゅー有田哲平)の印象
初めて共演させていただいた時は、いつもテレビやラジオで観ている、明るくおちゃらけているイメージがあった“くりぃむしちゅー有田さん”の印象とは違い、落ち着いていて、イメージとのギャップがあるように感じました。そして知れば知るほど、仕事に対しての熱意と真剣さが凄くて、芸人さんとしての「プロフェッショナルさ」を、隣でひしひしと感じています。この6年で、有田さんの隣で学ばせていただくことは多く、またこれだけ長く一緒に共演させていただいていても、未だに毎回「緊張感」があります。
小澤アナの「全力!脱力タイムズ」での役割
私の役割はとにかく、キャスターアリタの横で「空気作り」に徹すること!です。ほとんど喋ることはないので、アナウンサーとしての役割はほとんどありません(笑)。ただ、本物の「報道番組」っぽく見せることもそうなのですが、この番組は「作り込んだ空気感」が肝になってくるので、笑わないようにするのはもちろん、台詞も、アドリブの合いの手も、そして「表情」も……コメンテーターとして来ている芸人さんに「いかに信じてもらうか」を拙いながらも大事にしています。
キャスターアリタを見ても混乱するのか、ゲストの芸人さんは私の目を見て「これは本当なのか?」「どれが本当なのか?」とよく様子を伺ってくるので、それらにリアクションをせず、アリタさんのイメージしている世界観を「演じる」つもりで、目線や表情を必死に作っています。台本に目を落とすような仕草からでも芸人さんに伝わってしまうので、なるべく見ないようにするなど、オンエアではわからないけど現場で重要になってくる、細かい工夫があります。とっさの動きにも、あたかも「こういう予定でしたけど?」という顔で合わせます。
ちなみに本当に報道番組(「イット!」)を担当することになった時には、有田さんをはじめ、「脱力」側には喜んでいただきました。より本物の報道“っぽく” 見えるようになるのでは、と……。
アリタの「ここがスゴい!」
“名クリエイター” です!
よく「有田さんも内容にはちょっとは関わってるの?」と周りの方に聞かれます。もちろん番組制作側の演出・P、作家さんもいるのですが、「がっつり」関わられています。毎回の収録が終わったあとも、楽屋で次の収録の打ち合わせをしていて、その後も番組スタッフはアリタさんと別日でも打ち合わせしたりと、本番までに常に密な構成のやりとりをしているそうです。
構成からゲストを考えるケースも、ゲストから構成を考えるケースもあるようなのですが、毎回新鮮に感じる構成、新しいスタイルがどんどん出てきて、本当にすごいな、名クリエイターだな、と感じます。何回も出演してくださってる芸人さんでも、「前回こうだったし、今回こうくるかな?」というような予想も、裏の裏の裏をかいて毎回裏切るので、「なに準備しても無駄なんだな……」と言われています。仕事に対して厳しさもありますが、優しく、温かみもあって、特にお笑いに向き合う姿は本当にプロフェッショナルさを感じます。
隣にいる小澤アナだけが知っているアリタの意外な一面
たわいもない会話の中で、お子さんのお話になり、「一時期、僕が(娘さんの前に)顔を出すと、毎回泣かれる時期があってショックだった……。でも、今は顔を見せるたびに毎回ケラケラ笑ってくれるんだ」と、今まで見たことのないような幸せそうな表情で嬉しそうに教えてくださって、パパの一面が垣間見えます。
「全力!脱力タイムズ」での一番の思い出
さまざまなゲストの芸人さんの新しい表情に出会えたり、生で見たかった芸を見られたり、壮大なマジックをしたりと、たくさんの光栄な経験があるのですが、私自身が迷惑をかけてしまったことがきっかけで、アリタさんの凄さを改めて実感したことを思い出します。
「脱力タイムズ」の収録は、回しっぱなしで基本的に止めることはありません。そしてキャスターアリタと私は、ボードの横で立ちっぱなしのことが多いのですが、何年か前に、本番中に私の体調が悪くなってしまい、我慢をしていたのですがそれも限界で、「本当に申し訳ない……自分が倒れてしまったら、この収録どうなってしまうんだろう……」と思いながらも、体調の悪さがどうしようもなく耐えられないところまでいってしまったので、その場でしゃがみ込んでしまいました。
もちろん、台本にはないことです。するとアリタさんが、とっさに機転を利かせてくださり、収録を止めることはせず、あたかも、私が“演技で”倒れたようにしてくださったのです。
その時のコメンテーターの芸人枠は、オリエンタルラジオの藤森慎吾さんだったので、「私が藤森さんが嫌で仮病でいなくなった」という体(てい)を、とっさに作り上げてくださったのです。ちなみに、その次の藤森さんの回までも、そういう体を守るという徹底ぶりだったので、もしかしたら藤森さんは今でも、当時のことが本当に「演技だった」と思われているかもしれません。
迷惑をおかけして本当に申し訳なかった気持ちも大きかったですし、そのとっさの判断と発想力に脱帽で、その一件からアリタさんへの尊敬の念が更に大きくなりました。
「全力!脱力タイムズ」の番組としての魅力
番組も7年目に突入しました。本当にアリタさんをはじめ、携わっている制作スタッフも凄いので、どんどん新しい構想が生まれて、毎回飽きられないような内容になっているのが一番の魅力だと思います。話題になった一昨年末のアンタッチャブルさんの復活回であったり、先日の次長課長河本さんの回のような、感動するような場面もありますが、アリタさんがいるからこそ引き出せる、ゲストの芸人さんの慌てる様子や驚く表情など、ここでしか見られない“素”が私は一番面白いと思います。また台本から想定できていた笑い以上に、その場で生まれた「偶然の笑い」に堪えるのが大変です……幸せな悩みですが(笑)。
ゲストの芸人さんにとっては大変な番組なのかもしれませんが、ぜひ今後ともフジテレビの「全力!脱力タイムズ」を、どうぞよろしくお願いいたします!
アリタへのメッセージ
ほぼ新米だった私を見捨てず、番組を通して、さまざまな挑戦・貴重な経験をさせてくださり、本当に感謝しています。収録の指導から、人生相談まで。本当にいつもありがとうございます。これからも劇団アリタの団員として、どこまでもついていきますのでよろしくお願いします!あと……いつかアリタさんに仕掛けたいです(笑)。
小澤陽子(オザワヨウコ)
フジテレビアナウンサー。2015年入社。神奈川県出身。「全力!脱力タイムズ」に、MCのアリタ哲平(くりぃむしちゅー有田哲平)と共にキャスターとして出演中。そのほかの担当番組は「イット!」「Tune」「馬好王国」「BSスーパーKEIBA」など。
全力!脱力タイムズ
フジテレビ系 毎週金曜23:00~23:40
<出演者>
MC:アリタ哲平(くりぃむしちゅー有田哲平)
キャスター:小澤陽子(フジテレビアナウンサー)
ほか
世界各地の最新ニュースや日本で論点となっている問題を、有識者たちが独自の視点から読み取り、思わず“脱力”するような切り口で解説する新感覚ニュースバラエティ番組。
バックナンバー
くりぃむしちゅーのほかの記事
リンク
イクオ @ikumi
脱力タイムズサブキャスター小澤アナのインタビュー。有田哲平のプレーイングマネージャーとして能力値が桁違いなんだろうな…。本番中のとあるハプニングの話鳥肌モノ。 / アリタ哲平のとなりに小澤陽子アナ | 私のとなりの芸人さん 第2回 https://t.co/b4hY1xHrNl