「メガネびいき」のあの発表、尺読み失敗
──近い時期に「
宮嵜 小木さんが偏頭痛の治療でお休みしているときに、矢作さんも体調不良で欠席することになり、今度こそアルピーに代打をお願いしました。「カーボーイ」の件が流れちゃったときに「声かけてくれたらいつでも行きますよ」って言ってくれていたので、素直に頼りたいなと思って。もともと彼らは「メガネびいき」との親和性もありますからね。アルピーの「オールナイトニッポン」の最終回に中継を出して出待ちのリスナーにインタビューしたこともありましたし。当時からTBSラジオでやってもらいたいって僕はずっと思ってたので、ANNが終わると聞いてから事務所さんにはお話ししていたんですよ。TBSラジオのリスナーに「彼らはこういう人たちですよ」って紹介してなじませる意味で最終回のあとわりとすぐに「メガネびいき」に呼びました。で、いざ「D.C.GARAGE」を始めるときはディレクターの石井玄くんも、作家の福田卓也くんも、チームまるごとお迎えして。
井口 すごいですよね。そんなことあるんだっていう。
宮嵜 でもそのほうがいいじゃん。アルピーのラジオが好きっていう人はあのチームセットで好きだと思うんだよ。自分がリスナーだったら同じスタッフでまたやるんだって知れたらうれしいし、安心して聴ける。ニッポン放送と戦争しているわけではないから。
──その矢作さんの体調不良での欠席があり、小木さんのがん、矢作さんのコロナ感染など、「メガネびいき」もバタバタだったのではと思います。
宮嵜 小木さんからがんの知らせが届いたときは手が震えましたね。すぐに連絡して、発表するのか、するとしてもどういう言い方がいいんだみたいな話をして。
井口 結局さらっとしてましたよね。
宮嵜 あれは、単純に小木さんが尺を読めてなかった。
井口 逆に考え尽くされた発表の仕方なんだと思いましたよ(笑)。
宮嵜 違う違う。小木さんが3分もあれば足りるっていうから、エンディング3分残しておいたんだよ。そしたら随分手前のディテールから話し出しちゃって。看護師さんがかわいくて、とか。
井口 最後、「えー、がんでした。さよならー!」みたいな感じでしたよね。
宮嵜 生放送終わりの空気すごかったもん。矢作さんが「時間、なかったなあ」って言って、小木さんはずっとだんまり。お通夜みたいな。
河本 失敗だったんですね(笑)。
宮嵜 小木さんは心配させたくない人だから数%は確信犯かもしれないけど、9割9分、尺読みがうまくいかなかった。結果オーライですけどね(笑)。「メガネびいき」で言うと矢作さんにコロナの陽性反応が出たって知らせを受けたとき、ちょうどニッポン放送の冨山(雄一)くんと一緒にいたんですけど、「オールナイト(ニッポン)のパーソナリティで誰か声かけましょうか」って言ってくれて、すごくありがたかった。「オールナイトで助けられることがあったらやりますよ」って。
──各局協力して。
井口 やっている人たちは大変だし、心配はもちろんありますけど、聴いているほうはイレギュラーな放送が楽しかったりもしましたよね。ハプニングこそラジオの醍醐味みたいなところなので。
お笑いライブは空間も共有したほうが面白い
──常にコロナの脅威を身近に感じながら生活する世の中になって、改めて気づいたことはありますか?
井口 さっきも言いましたけど、楽屋で芸人と話すのも僕らの生活の楽しみの1つだったんです。最近は楽屋の入り時間もバラバラですし、ネタが終わったらすぐ帰らなきゃいけないので打ち上げももちろんない。だからすごい……ネタやってるだけじゃん!みたいに思いますね。いや、それが芸人の本分なんですけど(笑)。なんだかんだ、飲んだりするのが楽しかったなーと。
宮嵜 そうだねえ。
井口 あと、出待ちも禁止ですからね。
宮嵜 え、出待ち……?
井口 僕らにもたまにいたんですよ! 「面白かったです」って直接言ってもらえたのがどんだけ幸せだったんだろうって思いますね。配信ライブが増えたことは地方のお笑いファンからしたらいいことなんですけど。
宮嵜 ラジオで言うと、こういう世の中になってからRadikoの聴取数がすごく増えて。原因はいくつもあると思うけどその一つは時間の共有だと思うんです。ただお笑いライブに関しては時間の共有だけじゃなくて空間も共有したほうが面白いっていうことは改めて感じました。
井口 「ラフターナイト」のチャンピオン大会がすごくよかったって芸人からよく聞きますよ。3割くらいしかお客さんいなかったのに、めちゃくちゃ盛り上がったって。お客さんも生のお笑いを求めていたんでしょうね(参考記事:オズワルド、ラフターナイト優勝の先を視野に「このままM-1にも行ける」)。
宮嵜 お客さんの勘がすごくよかったのもあるし、やっぱりMCの山ちゃんがすごかった。形式だけのアイドリングトークじゃなくて、しっかり客席が温まるまでねぶるんですよ。この笑いの量までくれば大丈夫っていうラインを彼は経験でわかっているから、ちゃんとそこに達するまで温め続ける。1組目のファイヤーサンダーの最初のボケに対する笑い声を聞いて「このライブは大丈夫だ」って確信しました。もちろんファイヤーサンダーがすごいんだけど、それと同時にこの笑いは山ちゃんとお客さんが一緒に作ったものだなって思いましたね。
──河本さんも何かありませんか?
河本 僕ですか?
井口 あたりめーだろ! 「河本さん」って言ってんだから。
河本 2月に嫁と子供が帰ってくるはずだったんですけど、コロナのせいで6月までそれが延びちゃって……。
井口 まず別居が気になるから! でも結局戻ってきたわけでしょ? みなさんご家族がいますけど、僕なんて真の1人ですからね。自粛中は3日に1回コンビニに行って食料を買い込むだけの生活だったので、声も出なくなってくる。だからゲーム実況とかを無理やりにでもやって、見られることを意識していました。ちょっと気を抜いたら老け込みそうじゃないですか。
宮嵜 外出自粛中にヒゲ伸ばしてる芸人さん多かったよね。
河本 僕は逆にヒゲ剃るようにしてました。今日もそうですけど、人前に出るときは剃らないままなんですけど。
井口 どういうことなんだよ。
河本 太らないようにも気をつけていて、いつもは食いたいもん食って、飲みたいもの飲めてたんだなって気づけました。
一同 ………。
井口 変な話!
河本 ただ、喉はちゃんと退化してましたね。
井口 今も家のお父さんくらいの声しか出ないから!
笑って振り返れるのはみんな無事で戻ってきてくれたから
──リスナーが知らない話をたくさん聞かせていただきありがとうございました。この連載のお決まりで、最後は「2020年、どんな年でしたか?」というざっくりした質問で終わりにしたいと思います。
宮嵜 僕はもう、コロナにぶんぶん振り回された年でしたね。だけど得るものも大きかったというか。なんか、人の優しさも知れたし(笑)。お笑いをまた改めて好きになった年でもあるなと思います。
井口 太田さんも前ラジオで言っていましたけど、いかにお客さんに依存していたかっていうのがわかった年でしたね。笑い声を聞くことが本当にうれしいし、お客さんいなかったら僕らの存在なんて意味ないし。というのと、しゃべることがすごい好きだったんだっていうのを再確認できました。あとはまあ、僕ら的には2020年はこれからでもあるんで! ここから次第で答えが変わりますね。
河本 まだ(M-1グランプリの予選に)残ってますから。
──現在2回戦の結果が出たところですが、実はこの記事が出るのがけっこう先のことでして……。
井口 あ、じゃあもう終わってるかもしれないですね!
──なんとしても残っていてください……!
井口 もし負けてたら「悔しい1年でした」って書いておいてください(笑)。
※編集部注:ウエストランドは見事「M-1グランプリ2020」決勝に駒を進めました。
──そして、河本さんはどうでしょう。
河本 えー……。
井口 けっこう時間稼いだんだから考えておいてくれよ!
河本 いろんな制限があったことで、大事なことがわかるようになったというか。前は芸人と飲みに行っても、なんか雑だったんですよ。でも最近は行く回数が少なくなったから1回1回がすごい楽しくなって。
井口 飲み会が楽しくなった1年だったってこと?
河本 あと昨日思ったんですけど、お客さんが多ければ多いほど、苦手だなって。
井口 やめちまえ!
──改めて気づけた(笑)。
河本 あと、お分かりだと思うんですけど、おしゃべりも苦手です。
井口 だから、おしゃべり苦手で人前苦手なんだから、もうやめちまえよ!
──(笑)。ではこんなところで終わりにしたいと思います。
宮嵜 まだいろいろなんかあった気がするんだよなあ。
井口 宮嵜さん、バタバタすぎて記憶なくなってますよ。
河本 (宮嵜Pのスケジュール帳を覗いて)字もすごいですもんね。
宮嵜 いつもはしっかりいろいろ書いてるんだよ。この辺の字、やばいね(笑)。
井口 メンタルが出てますね。
宮嵜 これは不謹慎って言われちゃうかもしれないけど……大変な1日だったけど、ちょっと楽しかった部分もあって。ピンチのときこそみんなで知恵絞って、面白い方向に持っていこうっていうチームワークみたいなものは強まった気がしますね。代役を手近なところで済ましてるって言われちゃうと耳が痛いけど、頼れるところは素直に頼らせてもらうのがいいと思いました。今日は
井口 ちゃんと時系列でまとめておいたほうがいいですよ。
宮嵜 でも、こうやって笑って振り返れるのはみんな無事で戻ってきてくれたからだよね。コロナ禍が終わったわけじゃなくて、未だに医療現場で闘ったり、恐怖を感じたりつらい思いをしている人は多くいるし、感染しないための生活をし続けなきゃいけないんだけど。田中さんも、矢作さんも小木さんも、みんながいつもどおり元気でラジオをやってくれているってことがまずは素直にうれしいし、本当によかったなって思います。
井口 そうですよね。「カーボーイ」で田中さんの第一声聞いたときうれしかったですもん。
宮嵜 この前の「カーボーイ」でちょうどコロナの騒動を振り返ってて、田中さんが療養から明けた最初の仕事で「そういうことだから」みたいな顔して太田さんと楽屋で再会したっていう話を聞いて、何があっても田中さんは変わらないなーって思った。その状況が目に浮かんでとても安心したんだよね。
井口 あれだけ長くやっていると照れくささとかもありつつ、でも「よかった」っていう表情なんでしょうね。
宮嵜守史(ミヤザキモリフミ)
1976年生まれ、群馬県出身。TBSラジオ「JUNK」(毎週月~金曜25:00~27:00)、「アルコ&ピース D.C.GARAGE」(毎週火曜24:00~25:00)、「うしろシティ 星のギガボディ」(毎週水曜24:00~25:00)、「ハライチのターン!」(木曜24:00~25:00)などを担当中。
ウエストランド
井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。
河本太(コウモトフトシ)
1984年1月25日生まれ、岡山県出身
中学で出会った2人が2008年に結成。フリーで活動を開始し、オーディションライブからタイタン所属となる。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年の「THE MANZAI」認定漫才師。今年2020年、自身初の「M-1グランプリ」決勝進出を果たす。2011年にスタートしたラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeはじめ、Podcast、audiobook.jpで配信中。
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写写丸めっちゃ語ってんじゃん
2020年、いつもと違う年 その3 TBSラジオ宮嵜守史氏×ウエストランド #SmartNews https://t.co/PvlhKjrCx8