Zilqy「Vacant Throne」インタビュー|世界を目指すグローバル女性メタルバンド誕生 (2/2)

世界を見据えつつも“日本”を大切に

──「Vacant Throne」の収録曲の歌詞は基本的に英語詞ですが、「Cannonball」と「Realize」は一部日本語詞が入っていますね。

Anna 海外に発信していく基本姿勢をもとに英語詞があるものの、日本のリスナーも大事にしたいと思っていて。ただ、歌っていて英語のほうが言葉が入りやすいし、メロディに対しても英語のほうが乗りやすい5曲でした。でも今後は日本語詞だけの曲も出てくるだろうし、変わっていく可能性はありますね。その曲に一番合うのは英語なのか日本語なのか、言語に縛られずにやっていけたらと思います。

Anna(Vo)

Anna(Vo)

Miho バイリンガルかつ、音楽的素養を備えたAnnaの強みが生かせていると思います。「Cannonball」はサビのメロディが日本っぽいから、「日本語詞が入ってもいいんじゃない?」とみんなで話をしました。

──「声枯れたって」と、唐突に日本語のフレーズが入ってくるのがハッとさせられてよかったです。「Cannonball」と「Realize」の2曲は特にバンド感のある曲だし、日本語詞がハマっていますね。

Toki 私もそう思います。日本語詞を聴いたときに特にグッときた! やっぱり日本人だし、日本語で歌ってくれるのはうれしい。英語はメロディがスッと入ってくるから大好きなんですけど、両方のいいとこ取り。日本語も多すぎないところがいいよね。

Anna レコーディング当日にスタッフさんから「英語のままのほうがいい」と反対もされたんです。だけど「日本語詞にしたい」と戦って、通しました!

Kano 正解だったよ。

世界中でぶちかましていきたい

──そんなデビューEP「Vacant Throne」の聴きどころを1人ずつお願いします。

Miho 「Cannonball」はよくも悪くも浮いていると思うんです。オールドスクールなリフ要素をZilqy風にしたらどうなるかな?みたいなアイデアから作っていって。そこがちょっと浮いてるけど、懐かしさもあり、面白くもあり。突然シンガロングパートとか歌わされたし(笑)。このコーラス、ライブではお客さんに歌ってほしいですね。

Kano ドラムは全曲めっちゃドコドコ鳴ってます。ツーバスと、あとチャイナ(シンバル)! チャイナ大好きっ! とにかく激しくしたくて、全曲バスドラの連打とチャイナを入れて激しめに持っていきました。自分のバンドなので、いつも以上にいっぱいやりたいと思って。手数が多いのが好きなわけじゃないんですけど、「オラーッ!」ってかましたいですから! 自分の味ですね。そこはZilqyでもやらせてもらわなきゃ。

Kano(Dr)

Kano(Dr)

Toki 芯の通ったアレンジを聴いてほしいです。私はずっとツインギターでやってきたし、スタイルがガラッと変わったので。「Realize」はけっこうテンポが速くて、ギターソロやリフもかなりメタリックでバンド感がすごく出てる曲。ギターフレーズは全曲中一番細かくいろいろ詰まっているので、よーく聴いてほしいです。最後に録ったので、一番私の成長が感じられる曲かなと思います。

Anna 「Disguise」はかなりこだわった曲で、なかなか完成しなかったんですよ。Toshiさんとエンジニアさん3人でスタジオに集まって、基盤となるようなものを作ったんですが、リードシンセもなかなか“言うことを聞かないフレーズ”で、じゃじゃ馬を乗りこなすように考えていきました。だんだん形ができていった中で「中毒性のある曲だね」という話になり。Bメロの「I kinda I kinda I kinda like it」と連呼するパートも「もっと中毒性が欲しい」と考えていたんですけど、なかなかアイデアが出てこなかったんですね。「You can't get away from me」の部分も、全然歌詞が出てこなくて。でもスタジオに向かう途中、歩いているときにふとフレーズが降りてきてそのまま録ったという……。そういうことってあるんですね。なかなか歌詞が思いつかなかった曲なので、自分的には思い入れが強いです。

──最初に4人が集まって見えたものと、作品を作り終えて見えたもの、そこに違いはありますか?

Miho ありますね。私は今まで同期やシンセを多用することが正直好きではなかったんです。でもこのバンドを組むまでに、セッションやサポートでライブをしたり、いろんなアーティストやバンドの曲を聴く中で、自分の中で新しい発見がたくさんあって。今の欧米のメタルシーン、海外フェスを見ていてもみんなステージにアンプを置いてないですし、ツインギターで向かい合ってギターソロやるバンドがかなり減っているなと感じたりとか、それでいながらシンプルにサウンド面の進化にも衝撃を受けたりして。あとは、最初にTokiと2人で新しくバンドを作ろうとなったときに、もう1人のギターを探したんですよ。「ギターは2人必要でしょ」というのが頭にあって。

Toki メタルバンドといえばツインギター、というイメージは私もありました。

Toki(G)

Toki(G)

Miho でも「むしろ1人のほうがいいかもしれない」とZilqyの音楽性が固まっていく中で考えが変わりました。AnnaとKanoが入ってきて、彼女たちがギタリスト1人の編成が好きなものもあって、この形に着地したんです。

Toki 私も、ギター1人という話になったときに「マジか、大丈夫かな?」と不安もありましたが、やっていくうちに「ありかも」と感じるようになりましたね。私、ギター歴は長いですけど、今までとはやってきた曲調も違うし、ダウンチューニングも積極的にやってこなかったのでデジタルでエレクトロなサウンドを入れることも初めてだった。これまではズグズグ刻む速いメタルをやってたので、もうゼロからスタートする気持ちでした。Mihoちゃんは知り合いだったけど、AnnaちゃんとKanoちゃんが入ってくれて、彼女たちの意見が私にはすごく新鮮で日々勉強になることが多いんです。違う人生を歩んできた、この4人で作る音楽が新鮮だし、「これからどんなものができあがるんだろう?」という期待と楽しみしかないです!

Kano とにかく早くライブやりたい! 私はライブ大好き人間なので早くやりたいですね。世界中でぶちかましていきたいです。

リスペクトしつつも負けず嫌いな関係性

──12月には初ライブが予定されています。どんなライブになりそうですか?

Miho 今まさに、どういうライブにするかを考えてるんですが、EPの曲だけだと曲数が足りないので……。

Anna 3回ししても1時間ない(笑)。

Miho なので新しく作りつつ、カバーがあってもいいのかもとかいろいろ考えてはいます。「Carry On」のミュージックビデオを撮って、こんなに全員がカッコいいガールズバンドはいないと思うので、そのことをお客さんにも伝えたいですね。Zilqyのメンバーを知っているファンの方でもAnnaを見たことない人は多いと思うんです。MV撮影中にAnnaのピンショット動画をフルで撮っちゃったくらいカッコいいので、4人のパフォーマンスをめちゃくちゃ楽しみにしてほしい。

Miho(B)

Miho(B)

Anna MVは本当に皆さんに感化されました。「負けたくねえ!」って。

Kano 本当にみんなカッコよかった!

Anna Kanoちゃんもカッコいいし! なんといってもZilqyには、やっぱりレジェンド2人がいるので!

TokiMiho (照れながら)ちょっとー!(笑)

Anna メタル界の大レジェンドがいる安心感。リスペクトしつつも負けず嫌いなところもある。それでお互い高め合っていけるし、やはり持つべきものはメンバーですね。

──それにしてもZilqyというバンド名はカッコいいですね。語感を含めて。

Miho Annaさんの案です。

Anna 女性感を出したくて。もともとは“東京アストロベイビーズ”というのを考えてたんですけど……。

Miho ずっと推してたよね(笑)。

Toki 私、東京出身じゃないし。

Kano Kanoも違う。

Anna で、ダメだった(笑)。それで、女性を彷彿させるような単語がいいけど「Ladies」でもないし……と考えていたときに「Queen(女王)」が出てきて。そこに“何もない”という意味で「Zero」を付けようと。でもあんまりカッコよくないから、スラングの「Zilch」にしようって。

Toki 「Zilch Queen」の略だよね。

Anna バンド名が「Zilch Queen」で、略称を「Zilqy」にしようと思ってたけど、略称のほうがいいねという話になり、そっちがバンド名になりました!

Zilqy

Zilqy

公演情報

Zilqy 1st LIVE「Start The Fire」

2025年12月10日(水)東京都 SPACE ODD

プロフィール

Zilqy(ジルキー)

バイリンガルシンガーAnna(Vo)、元AldiousのギタリストToki(G)、2021年までLOVEBITESのメンバーとして活動したMiho(B)、ラウド系にとどまらずラテン音楽やジャズなど多彩なバックグラウンドを持つKano(Dr)によって結成。バンド名は「Zilch(何も無い)+Queen(女王)=誰のものでもない女王」という意味が込められており、「日本発Global All Female Metal Band」を標榜している。2025年9月に始動を発表し、11月に1st EP「Vacant Throne」をリリース。メディアを招いた公開記者会見を含むお披露目イベントとなる1stライブ「Start The Fire」を、12月10日に東京・SPACE ODDで開催することが決定している。