ナタリー PowerPush - ZEPPET STORE

結成25周年で到達した 色彩豊かで“刺激的”なアルバム

新作のテーマは「5人の個性をもっと強く出すこと」

──アルバムの制作はいつからスタートしたんですか?

五味 7月からプリプロが始まって、8月にはレコーディングに突入してました。

──じゃあ「SHAPE 5」のリリースツアー追加公演が6月末に終わって、すぐだったんですね。

木村 そうですね。実は今回、曲作りやプリプロの期間がすごく短くて。

五味 前作のときは何もないところに5人集まってセッションして曲を作り上げていったんですけど、今回は5人それぞれがネタを持ち寄って、それを5人で詰めていったんです。だからプリプロの期間が短かったんですよ。そこが「SHAPE 5」と「SPICE」の大きな違いですね。

──確かに前回のインタビューで、最初にテーマを設けたり内容について話し合いをしたりせず、まず最初にスタジオに入ったと言ってましたよね(参照:ZEPPET STORE「SHAPE 5」インタビュー)。逆に今作は何かテーマはあったんでしょうか?

木村 それぞれが曲を持ち寄ることで、5人の個性をもっと強く出すことかな。俺はみんなが持ってきた楽曲に、あとからメロディを乗せるのがすごく楽しみなんですよ。バネ(赤羽根)にしか作れない曲に自分がメロディを乗っけたり、まこっちゃんにしか生み出せないコード進行に乗っけたり、中村くんが書いた曲に乗っけたり。さらに今作ではYANAに歌詞を書いてくれないかってお願いしたんです。今回は作詞作曲のクレジットに全員名前が入ってるからね。より5人の個性がより強くにじみ出てると思うんです。

五味 1曲1曲の持ち味をさらに研ぎ澄ますっていうか。この曲はこういう感じ、この曲はこういう感じっていうのをよりデフォルメして作りたいなって思ってました。

──このアルバムを何度か聴いてるうちに、「SHAPE 5」のとき以上に1stアルバム感を強く感じるようになって。前作以上に曲やサウンドにカラフルさがあって、そういう部分にフレッシュさを感じたんです。

赤羽根謙二(G)

赤羽根 制作するにあたって、多彩さは前回よりも考えましたね。リズムを録り終わってからギターをダビングするんですけど、正直アレンジ的に行き詰まることもあったんです。1曲目「DELIGHT」のイントロなんて4日くらいかかっちゃいましたから。

木村 そうなんだ(笑)。

赤羽根 どうしてもカッコよくならなくて。妥協したくなかったんで、本当に時間をかけてる部分が多いんですよ。10曲目「WALKING IN THE MOONLIGHT」もアレンジで悩んだし。みんなが考えてきたアイデアをこちらで勝手に変えちゃって「大丈夫かな?」って心配したんですけど、できたアレンジを聴いて納得してもらえたのでよかったです。あと、歌詞によってメロディも変えたりして。

木村 そうだ、変えたよね。

赤羽根 プリプロやレコーディングには前作よりも時間がかかってないんだけど、実はアレンジを練る作業にはかなり時間をかけたのかもしれない。そうしたことで、バンドとしてももう一段階上に進むことができたんじゃないかな。

この曲順が一番スムーズに聴ける

──曲順もかなり練られているなと感じました。「DELIGHT」で勢いよく始まって、前半は攻めた曲が続く。中盤に入った「MELODY」から緩急に富んだ曲が並んで、最後に軽やかな「SPY」で終わるという構成はすごくいいと思いました。

五味誠(G)

五味 いろんな色彩の曲があるだけに、全体のバランスを考えなくちゃいけない。並べ方1つでアルバムの印象がずいぶん変わるので、曲順を決めるのにはけっこう時間がかかりましたね。

木村 あと英語詞と日本語詞があるので、その配置にも気を遣ったし。前作では日本語詞の「NOTHING」がオープニングを飾ったんですけど、今回はどうしても英語詞の曲から始めたくて。いろいろ意見を出し合って、最終的に「DELIGHT」に決まったんです。そこから曲順のアイデアをみんなで出していったんですけど、あるときにバネが「『SPY』が最後っていうのはどう?」って言い出して。その意見が出たときに、なんかパズルの最後のピースがハマった気がしたんです。

──バラードナンバーの「WALKING IN THE MOONLIGHT」で終わるのと、ポップで勢いのある「SPY」で終わるのでは、聴き終えたときの印象が全然違いますよね。

木村 確かに。

赤羽根 最初は「WALKING IN THE MOONLIGHT」で終わるアイデアもあったんです。ZEPPET STOREのアルバムってバラードで終わるのが定番だったし。

五味 でもこれは本当にいい曲順だと思いますよ。いろんなパターンを作ったけど、この曲順が一番スムーズに聴けるから。

震災以降、歌詞に悲壮感を出したくない

──歌詞についても聞かせてください。 世治さんは今作の作詞において、どういう点に注意しましたか?

木村世治(Vo, G)

木村 前作では心情的なところを深く描いたものが多かった気がするんですけど、今回はもうちょっと物語性が強いかもしれないですね。あと、今まではあまりなかったんですけど、今回はタイトルを先に決めて、そこから歌詞のストーリーを展開させていく曲があって。「SPY」はまさにそうなんですけど、仮歌のときに「SPY」って仮タイトルを付けて歌ってたらそこからどんどんストーリーが生まれていったんです。それと個人的にYANAの歌詞が本当に楽しみで。今回は英語詞を依頼してたんですけど、仮歌にばっちりハメてきて、歌っててすごく気持ちよかったですよ。しかも自分が歌詞に使わないような難しい単語も取り入れてるし。まあ完成したのはだいぶ遅かったですけどね(笑)。

一同 あはは(笑)。

──そのYANAさんが作詞した「DAZZLING SUN」もそうですし、どの曲の歌詞にもポジティブで力強いフレーズが用いられているのが印象的です。

木村 震災以降、歌詞に悲壮感を出したくないっていうのはやっぱり頭の片隅にあるのかもしれない。そういう言葉を無意識で選んでいるというか、自然に出てきたものなんですよ。

ニューアルバム「SPICE」/ 2014年1月15日発売 / DELIGHTS RECORDS / DRSCD-1001
[CD] 2800円 / DRSCD-1001
収録曲
  1. DELIGHT
  2. 夜に這う
  3. DAZZLING SUN
  4. 星くずと少年
  5. 無情な世界
  6. SELFISH
  7. MELODY
  8. DRIVE AWAY
  9. BREAKETHROUGH
  10. WALKING IN THE MOONLIGHT
  11. SPY
ZEPPET STORE Tour 2014
"GREAT DELIGHT"
  • 2014年3月7日(金)
    東京都 渋谷CLUB QUATTRO
  • 2014年3月15日(土)
    福島県 club SONIC iwaki
  • 2014年3月16日(日)
    宮城県 enn 2nd
  • 2014年3月21日(金・祝)
    大阪府 FANJ twice
  • 2014年3月22日(土)
    愛知県 池下CLUB UPSET
ZEPPET STORE(ぜぺっとすとあ)

1989年に結成されたロックバンド。1994年に1stアルバム「Swing, Slide, Sandpit」をリリース。このアルバムがhide(X JAPAN)の目に留まり、彼の設立したレーベルLEMONedから1996年に 2ndアルバム「716」をリリースした。1996年にアルバム「CUE」でメジャーデビュー。その後もライブやリリースなどの活動を精力的に展開するが、2005年に解散。6年後の2011年、東日本大震災を受けて楽曲配信でのチャリティを目的に再結成を果たす。再結成時より初代ギタリストの五味誠(G)も加わり、木村世治(Vo, G)、赤羽根謙二(G)、中村雄一(B)、YANA(Dr)との5人編成で活動を行う。8月には新曲「SMILE」を配信およびライブ会場限定CDでリリース。2012年5月、hideのメモリアルイベント「hide FILM ALIVE!! ~hide Memorial Day 2012~」にて再結成後初のライブを開催。同年12月に約8年ぶりのオリジナルフルアルバム「SHAPE 5」を発表した。2014年1月には10thアルバムであり、5人編成での2ndアルバムともなる「SPICE」をリリース。3月にはトリプルギター5人編成でのライブツアー「Tour 2014 "GREAT DELIGHT"」の開催が決定している。