“黄色いもの”をモチーフに

──カップリング曲についても聞かせてください。まずはデジタルなサウンドにオートチューンをかけたボーカルが乗るラブソング「bay side」です。

サウンドを聴いた瞬間、夜の横浜の映像が浮かんだんですよ。なので、昔に横浜のみなとみらいでバイトしているときに見たカップルのことをぼんやり思い出しつつ、そこに妄想を加えて恋愛の歌詞にしていきました。港の風景に似合うような物語を描くつもりで。

──「千羽鶴」とはまた違った表情のボーカルを聴かせてくれていますね。

ウェットなサウンドに優しく寄り添うことを意識して、ちょっとウィスパーっぽい歌い方をしましたね。オートチューンのかけ方も、あまりキンキンさせずに地声がちゃんと感じられるくらいのバランスを考えました。そのほうが、ちゃんと“みんなの曲”として届くんじゃないかなと思ったから。

──続く「パイナップル」はソカの要素が盛り込まれた、聴き手に元気を与えるサマーチューンです。ここで見える表情もまた遊助さんの1つの代名詞のような気がします。しかし、なぜ“パイナップル”をモチーフに選んだんですか？

僕、黄色いものを題材にした曲が多いんですよ。「ひまわり」「たんぽぽ」「いちょう」「ミツバチ」「ライオン」「キリンの涙」「檸檬」……。

──「とうもろこし」もありましたね。

そうそう。羞恥心での担当カラーも黄色だったから、きっとラッキーカラーなんでしょうね。で、今回ひさびさに黄色の曲を書いてみようと思ったんだけど、もうモチーフが全然見つからなくて（笑）。ようやく“パイナップル”をひねり出したけど、それをどう曲に落とし込むかでけっこう悩んだんですよね。

──でも見事にいいメッセージにつなげていますよね。無理に着飾ったり、背伸びしたりせず、ありのままの自分でいいんだよと。

うん。皮も棘もいらないんだよ、だってそのままでも甘くておいしいじゃんというね。ちゃんと人生を曲に反映できてよかったです。季節的にも元気な遊助を感じてもらえる曲を入れたかったから、いい仕上がりになってうれしい。ライブでもやれたらいいな。今後のために黄色いものがあったらぜひ教えてください。僕の中にはもう“からし”と“たくあん”しかないので（笑）。

10年後、振り返ることができるように

──そして通常盤のみに収録されるのが「冬の向日葵」。

僕らは人生の1/3を睡眠に充てているのに、寝ているときのことってほとんど知らないじゃないですか。それをテーマに書いていきました。寝ていて気付いていないけど、実際は大切な人に優しい言葉をささやかれているかもしれないよ、優しく見守られているかもしれないよという。

──2コーラス目にある「寝たい時だって ダルい時だって 誰も気付かない 名前無い家事やって」のところは、世の中の主婦の皆さんが感涙すると思いますよ。

マジっすか！ 家のことをやる大変さって男の人はなかなかわからないですからね。“家事”って言葉でひとくくりにされがちだけど、例えば小さなゴミを拾うとかこぼしたお醤油を拭くとか、さまざまな細かいことがいっぱいあるわけで。だから僕はそれに“名前無い家事”という名前を付けてあげたかった。デビューから10年を経て、また新たな、素敵な“ひまわり”の曲ができてうれしいです。

──本作をリリースした翌日から、全20公演の全国ツアーがスタートします。最後に意気込みを聞かせてください。

遊助の第2章、11年目のスタートダッシュとして大事なツアーになると思うので、初心に帰りつつ、めちゃくちゃがんばりますよ！ ある意味、まっさらな状態から新しいものを生み出せるという貴重な機会を思い切り楽しみたいです。10年後、あの瞬間があったからこそ20周年を迎えられたんだよねと振り返ることができるような、充実した11年目にしたいと思います！