「あいつ、こんなことになってる」って思わせたい

──メジャーデビュー曲の「ピーターパン」についても聞かせてください。「笑う奴など蹴り飛ばせ」「大人の言う常識なんてものは 丸めて捨てちまえ」など、かなり激しいフレーズが並んでいて、夢を目指す強い気持ちが伝わる楽曲だなと。

それはもう、自分の中の気持ちを書いた感じですね。「いつまでやってるの？」みたいなことを言われたこともあったし……その人に対してムカついているわけではないけど、悔しさはありましたから。見返してやるというか、しっかり活動して「あいつ、こんなことになってる」って思わせたいなって。僕だけじゃなくて、みんなもそういう気持ちを持ってると思うんですよ。「自分の夢をつかみたい」という。

──歌にすることで、憤りや悔しさを昇華できる？

うーん、憂さ晴らしで作ってるわけではないですからね（笑）。でも「ピーターパン」を書いたときは「いい曲ができた」と思えたし、すごく大事で好きな曲になりました。「かくれんぼ」は高校生くらいの人から感想をもらうことが多いんですけど、「ピーターパン」は身近な人に「よかった」と言われることもあって。いつも髪を切ってくれている美容師さんが、「すごく響いた」と言ってくれたんですよ。「ネガティブを押し付けてくんな」という歌詞があるんですけど、同じようなことを年下のスタッフに言ったことがあるって、髪を切りながら教えてくれて。音楽をやってる友達に「すごくわかる」と言われたこともあるし、この曲を書いてよかったなと思います。

──ちなみに優里さん、友達は多いほう？

そうでもないです（笑）。すごく仲がいい友達が少しいるという感じかな。音楽とか写真とか、何かを目指している人が多いし、そういう人とはどこかでつながるんですよね。

ずっと歌っていられるように

──そして新曲「ドライフラワー」がリリースされます。「かくれんぼ」で歌われた失恋のシーンを女性目線で描いた楽曲ですね。MVも「かくれんぼ」のアフターストーリーになっています。

「かくれんぼ」が男性目線の歌だったので、女性側からの歌詞も書いてみようかなと思って作り始めた曲です。女性の視点から曲を書いたのは初めてだったので、今まで見てきたこと、聞いてきたことを言葉にして。自分の勝手なイメージも混ぜ込んでいます。

──「『私ばかり』なんて言葉もなくなった」もそうですけど、歌詞にすごくリアリティがあって。

そう言われると、ちょっと恥ずかしいですね（笑）。女性目線で書いたのは初めてですけど、女性アーティストの曲はカバーしていたので、自然に出てきたところはあったかも。「かくれんぼ」もそうなんですけど、物語があると僕自身も歌の世界をイメージしやすいんですよ。聴いてる人たちにもそのほうがグッと入っていくんじゃないかなって。

──しっかり感情が込められたボーカルも印象的でした。歌うことに関しては、どんなところにこだわっていますか？

以前は「高い声を出せることがカッコいい」と思っていた時期もあるし、強く歌うことを意識していたこともあったんですけど、今は「伝える」ということを考えながら歌ってますね。自分で歌詞を書いているからしっかり気持ちを込められるし、うまく歌うよりも「伝える」ということが大事だなって。僕自身もうまい歌よりも、沁みる歌が好きですからね。

──サウンドに関してはどうですか？

「こういうサウンドで歌いたい」というのは正直、あまりないんですよね。もちろんいろんな歌を歌いたいんだけど、この先、自分がどんな曲を作るかわからないので。そのときに作った曲によってサウンドも広がるだろうし、いろいろやっていきたいですね。

──では、アーティストとしての将来像に関しては？

長い目で見て、「いつかこうなりたい」というのはなくて、ずっと歌っていられるようにがんばろうという感じですね。以前のようにライブができるのがいつになるのかわからないけど、まずは曲をどんどん作って、みんなに届けようと思います。YouTubeチャンネルも始めたし、少しでも多くの人に覚えてもらいたいので。

──「この会場でライブしたい」みたいな目標もない？

ないんですよね。でも以前、マーチンさん（鈴木雅之）のディナーショーを観させてもらったら、それがすごく素敵で。いつかこういうライブをしてみたいなと思いましたね。そのためにはみんなが知っている曲がたくさんないとダメだなって……がんばります！

──「ディナーショーをできる歌手」が目標というのはいいですね。歌以外にはどんなことに興味があるんですか？

全然趣味がなかったから、何か始めようと思って、絵を描いてます。テレビを観てたらヤギが映っていて、そばに道具があったから、ちょっと描いてみようと。今も1日1匹描いてます（笑）。あとは特にないですね。ゲームもやるけど、1日30分くらいなので。歌っていると、いつの間にか何時間も経ってるんですけどね。最近は友達と一緒に、ネットにアップされている小説にメロディを付けて遊んでます。好きな文章を選んで、4小節分くらいメロディを付けるという。

──やっぱり歌なんですね。

楽しいですからね。ほかに好きなことがなくてよかったなと思ってます（笑）。