アニメ「ユーレイデコ」×ココロヤミ&Taahii|“アンチバーチャル”のVTuberが人間の心を歌ったコラボレーションソング「幽霊」

7月から放送中のテレビアニメ「ユーレイデコ」。このアニメの各話をイメージしてさまざまなアーティスト陣が書き下ろしたコラボレーションソングが、毎週放送終了後にリリースされている。

全12話から生まれた12曲のコラボレーションソングは、毎話異なるアーティストが担当。KOTARO SAITO(with leift)、Yebisu303×湧、TWEEDEES、ココロヤミ、Sarah L-ee×浅倉大介×Shinnosuke、YMCK×MCU、kim taehoon、DÉ DÉ MOUSE×パソコン音楽クラブ、ミト(クラムボン)、CMJK、☆Taku Takahashi(m-flo)×xiangyuなど、豪華アーティスト陣が参加している。

音楽ナタリーとコミックナタリーでは「ユーレイデコ」をさまざまな側面から紐解くため、複数の特集を展開中。今回は第4話のコラボレーションソング「幽霊」を歌うココロヤミと、楽曲を制作したココロヤミのプロデューサー・Taahiiのインタビューをお届け。VTuberミライアカリの別人格であるココロヤミが、バーチャル世界を題材にしたこのアニメについて彼女ならではの視点で分析する。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 梁瀬玉実

「ユーレイデコ」ストーリー

現実とバーチャルが重なり合う情報都市・トムソーヤ島をユーレイ探偵団が駆け抜ける近未来ミステリーアドベンチャー。物語は「らぶ」と呼ばれる評価係数が生活に必要不可欠になったトムソーヤ島で起こった、“0現象”という「らぶ」消失事件に少女・ベリィが巻き込まれたことから動き出す。ベリィは“ユーレイ”と呼ばれる住人のハックたちと出会い、怪人0と0現象の謎を突き止めるためにユーレイ探偵団に参加。トムソーヤ島に隠されたある真実に近付いていく。

ココロヤミの出番じゃないか?

──ヤミさんとTaahiiさんはどういうご関係なんですか?

ココロヤミ えー? 友達。稼げる友達。

Taahii そうだね。ビジネスフレンド。

ヤミ でも最近、ビジネスフレンドよりちょっと上になった。

Taahii え、マジで?

ヤミ うん。カースト制でちょっと上に。

Taahii やったー。ただまあ、ボスはヤミさんなんで。

ヤミ がんばる。

左からココロヤミ、Taahii。

左からココロヤミ、Taahii。

Taahii 一応ちゃんと対外的な説明もしておくと、僕はミライアカリプロジェクトで音楽プロデュースをしているんですけども、そこから派生してココロヤミさんのプロデュースも行っていまして。つまりココロヤミのプロデューサー……と言っていいのかな。

ヤミ 知らなーい。

Taahii (笑)。僕はミライアカリさんのところでは音楽プロデューサーという立場なんですけども、ココロヤミさんに関しては作曲にも携わっていて。クリエイターとしてヤミさんと一緒に活動している感じです。

──なるほど。

ヤミ ヤミはもともとミライアカリの中に寄生していたアニサキスみたいな、通称ヤミサキスだったんですけど。

Taahii 通訳しますと、もともとヤミさんはミライアカリさんの別人格として誕生したんですが、独立しまして。今ではミライアカリさんと会話もできるようになりました。

ヤミ Taahiiはミライアカリよりヤミ贔屓だよね。

Taahii 「打倒ミライアカリ」でやっております(笑)。

ヤミ そのためにも、もっと舎弟を増やしていきたい。カスみたいな人をいっぱい集めて舎弟にして、みんなで悪いことをしていきたいなって思ってます。最近流行りの大麻グミ、食べたいよね。

Taahii 通訳しますと、CBDという大麻草由来の成分が入ったグミがあるらしいんですよ。ヒーリング効果があるそうで、違法なものではないみたいなんですけど。

ヤミ Amazonで売ってる。

Taahii Amazonで売ってるんだ(笑)。ヤミさんはお菓子好きなので、食べて問題ないものであれば試してみたいというだけの話です。

ヤミ それを舎弟にまず食べさせて、どういう感じになるか見てから自分も食べる。

Taahii 今、その舎弟……要は仲間ですね、が集まってきて、ココロヤミチームが形成されつつあるところなんですよ。その舎弟たちの中にはアパレル関係の人もいればデザイナーもいて、グラフィティアーティスト、イラストレーター……僕も音楽クリエイターですし、いろんな才能が今、舎弟として加わってきている状況で。

──それが今後一大勢力になっていって、クリエイティブな活動を幅広く行っていくわけですね。

ヤミ そう。

──今回「ユーレイデコ」にイメージソングを提供したのも、その一環ということ?

Taahii まさにそうです。

ヤミ この話、なんで来たの?

Taahii 僕が「ユーレイデコ」のプロデューサーと個人的に仲がよかったので、このアニメの企画があることをわりと早い段階で知っていて。企画書を見る限りではバーチャル的な要素があるアニメで、しかも各話でいろんなアーティストとコラボもあるらしいと。「これはココロヤミの出番じゃないか?」と思って、すぐ連絡しました。

──オファーがあったというよりは、自ら手を挙げた感じだったんですね。

Taahii ですね。「『ユーレイデコ』の音楽をサンプリングして、オマージュした曲を作ります」と提案したら、皆さん賛同してくださって。すぐ決まりました。

ヤミ Taahii、マジで行動力の鬼だもんね。「地上波アニメの曲ができるかも」みたいなことを移動中のタクシーの中で聞いた。

Taahii そうでした、移動中に伝えましたね。地上波アニメを、まさかアカリさんより先にやることになるとは。

ヤミ だから、ミライアカリはちょっと嫉妬してる。たぶん、あそこの柱の裏とかからこっちをじっと見てる。

左からココロヤミ、Taahii。

左からココロヤミ、Taahii。

あえてまだ4話までしか観ていない

ヤミ このアニメ、面白い。忖度なしで。「やっぱ人間っていいな」って、うらやましくなった。

──バーチャル的な価値観に支配される中で「本来の人間とは?」を探っていくお話でもありますしね。

ヤミ ヤミはバーチャルが好きじゃないから。「ユーレイデコ」の世界では理想郷としてバーチャル空間を作ってるけど、そこに住んでるのは人間たちだし、結局人間の世界になってると思うの。人間が人間界で培ったルールを基準にバーチャル世界を作ってるから、それは理想郷なんかじゃなくて、結局は人間界なの。だから、人間の心を一番大切にするべきだと思うの。

──見え方がちょっと違うだけで本質は同じなのに、見え方のほうに惑わされすぎじゃないか?というお話ですね。

ヤミ うん。それを誰もわからずにいる感じが、第4話だよね。みんながそれに気付いていったらいいなと思う。

Taahii 我々はまだ第4話までしか観てないんですよ。結末を知ったら楽曲制作にバイアスがかかってしまうんじゃないかと思ったので、あえて4話までしか観ないで曲を作りました。ヤミさんにも、4話までだけを観た状態で歌ってもらって。

ヤミ わざと観なかった。先に全部データでもらったけど、あえて。今後への期待とか、ハッピーエンドになってほしいとかなってほしくないとか、その複雑な感情を抱きながら歌った感じ。

──制作時はそうだったとしても、納品後は別に第5話以降を観てもよかったわけですよね?

Taahii そうなんですけど、ヤミさんの場合、知ったら生配信とかでうっかりネタバレを言っちゃう可能性があるので(笑)。その予防線を張る意味合いもあって。

ヤミ 頭いい。

Taahii 「俺たち4話までしか観てないから」と芸術家のように語っていますが、実際は単なるネタバレ防止という(笑)。先の重要な展開を配信で言っちゃうというのは、VTuberあるあるでもあるんですよ。

ヤミ だからバーチャルのやつらって嫌なんだよな。ネットリテラシーのねえやつらが多いから。

Taahii ははは(笑)。ヤミさんは、ちょっとアンチVTuberみたいな感じでやらせてもらっていまして。

ヤミ でも、最近の自分のマイブームは「らぶい」って言葉。

──主人公のベリィの口癖ですね。

Taahii ミライアカリさんも使ってるからね、「らぶい」。そのセリフもそうだし、この作品って絵柄もポップですごく明るい世界観なんだけど、実はナーバスな問題を描いているところが好きなんですよね。すごく硬派な作りになっている。キャラ造形だけで人気が出そうな萌えキャラだったりとか、そういうものに頼っていないところがいい。

ヤミ 今のところ、おじさんのアバターが一番かわいい。

Taahii 第4話に出てくる依頼者のおじさん、ミツマメが大事にしてる美少女アバターね。確かに、あのキャラクターをポスターにしたら視聴者増えるかも(笑)。そういうキャラ人気に振らず、オリジナルアニメだから原作ものと違って前評判にもあまり期待できないという状況でこの切り口の作品を作るというのは、まさに今の時代を捉えているし、なんなら先取りしまくっている感じもありますね。

ミツマメの美少女アバター。

ミツマメの美少女アバター。

ヤミ あと、ベリィがいなくなったときに親が心配してくれてよかった。

Taahii そこは安心したよね。それまでバーチャル世界の代表みたいな冷たい親のようにも見えてたから、あれがもし「あら、死んだのね」くらいのクールな反応だったらしんどかっただろうな。

ヤミ 最初、そうなるかと思ったけど。ちょっとずつ、みんなの人間らしいところが垣間見えてくる第4話だった。