YUKI|変幻自在なYUKIが自分自身へ贈る2度目の1stアルバム

シンクロニシティ=偶然とは思えないご褒美

──アルバムの1曲目は「チャイム」です。「チャイム」という言葉はどこから出てきた言葉なんですか?

「チャイム」という言葉は、歌詞を書いているときに胸の鼓動のことを考えていて出てきました。手をつないだときとか、そばにいるときに聞こえてくる鼓動のリズムが鐘みたいだなと思って。最初は歌詞にもある「地獄耳」をタイトルにしていたんですけど、調べたら意味的にあまりよくなくて。私が使う「地獄耳」は以心伝心的な気持ちの意味で、かわいいなと思って気に入っています。

──このアルバムの中でもっとも勢いのある曲だと思いました。

この曲はNHK「あさイチ」のテーマソングで、番組から「女性に向けて」というリクエストを受けて作りました。私も女性なので、女性に向けてというよりは自分に向けて書きました。それも「女性に向けて」ということになるなと思って。いつもの通り、「理想に近付きたい自分」と「なかなかうまくいかないんだよね」という思いを書きました。

──シングル曲としてすでにリリースされている、2曲目の「トロイメライ」は、映画「コーヒーが冷めないうちに」の主題歌です。

これは映画の主題歌としてお話をいただいたんですけど、この曲で表現した「赦す」というテーマの詩はいつか書きたいなと思っていたことで。生きている中で一番つらいことは、人を赦せないことだと思うんです。赦せない人がいて、それで怒り狂った自分の顔や、そのときの物事の進まなさとかを考えると、すごくもったいないなと思っていて。例えば愛情をかけてほしいとか、無意識にでも何か期待したときに思い通りのことが返ってこないと、やっぱり人は赦せないんだと思います。この映画はある席に座ると過去に戻れるという不思議な喫茶店のお話なんですけど、登場人物はみんな自分のしたことを悔いていて自分を赦せないんです。その人たちが過去に戻っても結局その後の現実は変わらないんですが自分さえ変われば物事の捉え方も変わって、もっと楽に生きていけるというお話で。何度間違えても何度でも赦せばいい。それに気付くだけで違うという思いを込めました。

──3曲目の「やたらとシンクロニシティ」はドラマ「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」の主題歌です。

「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」は弁護士ドラマで、登場人物には“助ける側”と“助けられる側”がいるんですが、実はどちらも助け合っているんですよね。立場が違って、持っている苦しみや幸せは人それぞれかもしれないけれど、誰もが思うことというのは実は変わらないんだなと、このドラマのストーリーを見て思いました。それがこの曲が生まれたきっかけです。私には、自分ががんばったなと思うことがあったり、怒りを抑えて楽しく過ごしたときに、偶然とは思えないご褒美がよくあるんですよ。ちゃんとやっていると神様は見てくれているというか。ご褒美があると「やっぱり私は間違っていないな」と思えるんです。私はそれを「シンクロニシティ」と呼ぶのかなと考えていて、このようなタイトルになりました。

──頭からのこの3曲で、勢いのある始まりになりました。

曲順はすごく悩みましたけど、1曲目は「チャイム」がよかったんですよね。アルバムの曲の中で最初にレコーディングしたのも、この曲でした。

もう「魔法」という言葉しか思い付きませんでした

──「魔法はまだ」はちょっと不思議な歌詞が癖になるような曲ですね。

吉澤嘉代子さんはすごく面白いメロディラインを作る方で、このメロディを私が歌ったらどうなるんだろう、私が彼女のメロディに歌詞を書いたらどうなるんだろうと興味がありました。いただいたメロディを聴いたら、もう「魔法」という言葉しか思い付きませんでした。これは女子高生同士の恋愛の歌です。15歳の頃の「好き」というのは、恋愛なのか友達なのかわからない。あの不安定な感じをいつか詩にしようと思っていて、それを吉澤さんのメロディが思い起こさせてくれました。セーラー服の女の子が線路の上を勢いよく走っていて、紙吹雪でキラキラしているイメージです。そのイメージが出てきて「あの娘は走る 紙吹雪乱れて飛ぶ」という歌詞になりました。

──YUKIさんの15歳の頃のことを思い出して書いていった感じですか?

歌詞の最初のモチーフにはなりましたけど、そこからどんどん広がっていきました。湯の川神社は、私が塾をさぼって行っていた神社です(笑)。

──この曲は跳ねるようなベースラインがとても印象的ですね。

吉澤さんの仮歌では、彼女の歌とギター1本が入っているだけで、リズムは何も入っていなかったんですけど、もっと跳ねる感じにしたいと思っていたら、頭の中でこのベースラインが鳴ったのでプリプロのときに自分でこのベースラインをキーボードで入れました。あとギターもベースとユニゾンで鳴っていたので、そのアイデアからアレンジを進めていきましたね。イメージがどんどん湧いて、たくさん声が重なるコーラスも入れました。なので“YUKI凝縮度”は高いと思います。私が作るとこうなるんです。ハンドクラップも多少ずれていたりして、そういう人の手でやっている空気感は入れたかったんですよね。

──そうだったんですか。

生でやるとリズムは走るし、もたるし、揺れがすごい。でもそういうものを作りたかった。だからクリックを使っていない曲もあるんです。今回はなんの音が入っているのかわからないものにしたくなかったんですよね。そういう思いがあるのがセルフプロデュース作の醍醐味というか、なんの音が入っているかを自分で把握していたかったんです。

「しのびこみたい」と「ただいま」は“旧友シリーズ”

──「しのびこみたい」は古くからの友人であるNONA REEVESの西寺郷太さんと一緒に作られています。

古くからの友人ではあったけれど、なかなか一緒に曲を作る機会がなくて。私がずっと彼の作る音楽のファンだったということもあってこの機会に郷太くんにお願いしました。「私があまり歌ったことのない、音数が少なくて、テンポもゆったりしていて、ファルセットもたくさんある曲」とリクエストして作ってもらいました。演奏はNONA REEVESのメンバーです。歌詞も、いろいろな言葉を思いついては笑いながら作っていって。同級生なので、そういう意味でも気が合うというか、コーラスもノリノリで、レコーディングはすごく楽しくできました。

──「ただいま」は、これまたYUKIさんと昔から交友のある堀込泰行さんの曲です。

この2曲は旧友シリーズです(笑)。「ただいま」は男女デュエットのイメージで、歌詞は1フレーズずつ、男、女、男、女という順になっています。アレンジはスリーピースでシンプルにしたいと思っていて、ギターのリフを沖山(優司)さんが鳴らしたときに「もらった!」と思いました(笑)。私が古くから聴いている曲のようなイメージがあって、すごくうれしいです。