何を受け取り、何を与えられたか
──歌詞に関しては、どのように書いていったのでしょうか?
優河 そばにいた人がいなくなったらやっぱり寂しいじゃないですか? 最初に歌詞を書いたタイミングで、私のおばあちゃんが亡くなって、そのときもすごく悲しい気持ちになったんです。でも少し時間が経ってから考えると、失った悲しみではなく、その人がくれた時間、言葉、愛情とかを思い出すようになって。そっちのほうが大事だなと思ったんです。その人がそばにいてくれることももちろん大事だけど、いつまでも捕まえておくことはできない。でも、受け取ったものは肌に染みこんでいて、どこにも行かないものなんだと思ったら、すごくホッとしたんです。一番大事なのは何を交わしたかであって、何を受け取って、何を与えられたかということだなって。
──なるほど。
優河 とはいえ、どうしたって悲しいのも事実で。「灯火踊る夜は 彼方に想い馳せて」という部分は、ため息だったり、涙を流したときの息で、目の前の火が揺れるような、踊るような、そういうときもあると思って書きました。だから「どこへも行かないで」「あなたのそばにいたい」と思うけど、でもやっぱり一番大事なのはその人がくれたもので、それは肌に染みついてるものだって、そういうイメージで作っていきました。
──「灯火」という言葉をタイトルにしたのはなぜですか?
優河 誰かから何かをもらったら、今度はそれを自分も次の誰かに渡せると思うんです。親子の関係はまさにそうで、自分が受け継いだことを子供にもしてあげたり。そうやって誰かに愛情をもらうと、心に火がポッと灯るじゃないですか。そうやって火を受け渡していくように生きていけたらいいなと思ったんです。
幸せについて考えるきっかけに
──ドラマ自体の魅力については、どのように感じられていますか?
優河 けっこう笑っちゃうような部分もあるというか、堤さんの無邪気さとかもおかしくて笑っちゃうし、麻衣の恋愛シーンは私がうれしくなっちゃって、「恋が始まる!」と1人で盛り上がったりして(笑)。シリアスとポップの塩梅が皆さん絶妙で巧みだなと感動しながら観ています。
──巧みと言えば、やはり子役の毎田暖乃さんの演技はすごいですよね。
中井 このドラマをやるにあたって、「キャスティングどうするの? こんな演技できる子がいるわけないじゃん」と原作を読んだいろんな人から言われたんですけど、オーディションで毎田さんとお会いしたときに全会一致で決まって。本当によかったなと思いました。
優河 素晴らしいですよね。
中井 あと、さっきのシリアスとポップということで言うと、人間生きていく中で大事な人との別れは必ずあるから、そこは共感していただけると思うんですね。とはいえそればっかりだと疲れちゃうので、1時間を通して楽しんでいただけるようなドラマ作りは意識しています。
──劇中音楽を担当しているパスカルズがドラマにいい意味での軽さを与えてもいますよね。
中井 パスカルズさんとは以前、ドラマ「凪のお暇」でもご一緒させていただいて、あのドラマも明るい内容ではないというか、心の動きとしては前を向こうとするけど、主人公が人間関係に疲れて「ちょっとお休みしたい」という、暗くなりがちなテーマではあって。そのときに監督の坪井敏雄さんが「ぜひパスカルズさんに」と提案してくださって。今回も坪井さんの提案でパスカルズさんにお願いして、シリアスになりすぎないように、うまくカバーしていただいています。
──主題歌にしろ劇伴にしろ、やはり音楽の力は大きいですよね。では最後に、ドラマの視聴者へメッセージをお願いできますか?
優河 好きなドラマを観ていると、「いつかは最終回がきてしまう」と寂しい気持ちになることがあると思うんですけど、そういう不安と幸せが隣り合わせにあることって、現実の世界もそうだよなと思うんです。だから、終わってしまうことを変に怖がる必要はなくて、それは当然のことだし、「終わる」というよりも、ただ形が変わっていくだけ。そういう危うさの中で成り立つ幸せが私たちの幸せというか、私たちの幸せは常にそういう瀬戸際にあるものだから、そういうことを少しでも考えるきっかけになったらいいと思います。私自身そんなことを考えながら、ドラマを楽しませていただいています。
中井 もちろんドラマにも最終回がありますし、自分の身近にいる人といつかはさよならをするタイミングが来るわけですけど、それに悲観することなく、愛をもってその人と接するきっかけになれたら、この上ない喜びです。
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優河 単独インタビュー