yosugalaロングインタビュー|アイドルシーンを駆け上がるニューカマー、2ndアルバム携え全国へ

PassCodeを世に送り出したwe-B studios、uijinを手がけるsakebiによるプロジェクトWEXSの運営により2022年6月に誕生した4人組グループ・yosugalaがアイドルシーンに大きな旋風を巻き起こしている。

エモーショナルな楽曲とパフォーマンスはアイドルファンの間で高く評価され、口コミによって動員はじわじわと拡大。結成からわずか2年足らずで「チケットの入手が困難なライブアイドル」の筆頭と目されるほどに注目度が高まる中、2月18日に東京・LIQUIDROOMで行われたワンマンライブ「progress the night -LIQUIDROOM-」は文字通りすし詰め状態、フロアは熱狂の渦に包まれた。この2日前に2ndアルバム「ヨモスガラ2」を配信リリースしたyosugalaは、このアルバムを携え、北海道から福岡まで8会場を巡るワンマンツアーを行う。

アイドルシーンではすっかり名の知られた存在となった彼女たちだが、その歴史はまだ浅く、Wikipediaのページも存在しない。音楽ナタリーでは来たるツアーに先駆け、黒坂未来、汐見まとい、未白ちあ、君島凪の4人にロングインタビュー。結成までのヒストリー、注目度が高まる中での自己分析、そして4人が見据える未来図は?

取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 曽我美芽

大盛況のLIQUIDROOMワンマンを終えて

──「yosugalaがすごい」という噂はいろんなところから聞いていたのですが、僕は先日のLIQUIDROOMでのワンマン(参照:yosugala、デビューの地LIQUIDROOMを超満員に「みんなと歩んできた道のりの証」)が初見で。ほとんど前情報なく丸腰の状態で観たのですがなかなかの衝撃で、皆がざわつくのも納得でした。

君島凪 やったあ。

──「ブレイクする要素だけで構成されたグループだな」というのが第一印象でした。

汐見まとい ありがとうございます(笑)。

yosugala

yosugala

──あんなにパンパンのLIQUIDROOMもひさしぶりに観たし、メンバーの皆さんにとってもファンの方々にとっても歴史の大事な1ページとして刻まれた、大成功と言えるライブだったのではないかと思いますが、手応えとしてはいかがでしょう。

未白ちあ これまでのワンマンよりも時間の経過が早く感じました。あっという間に終わっちゃったなって。

君島 自信になりました。

汐見 私は逆に悔しい思いがいっぱいある。あの日、ツアーファイナルをO-EASTでやることを発表したじゃないですか。あと4カ月あるから、そこまでの課題を見つけられたことはよかったなと思います。

汐見まとい

汐見まとい

──もっとやれた、という気持ち?

汐見 そうですね。そこはメンバーそれぞれだと思いますけど。

黒坂未来 私は凪と同じで自信につながるところが大きかったです。ツアーに向けていいスタートが切れたというか。

未白 確かに、それまでの区切りというよりは、次へのいいスタートが切れたという感じはあったかも。

──すでに次のツアーを見据えていたところがあったんですね。

未白 はい。これまで東名阪のツアーはあったけど、北海道から九州まで8会場もワンマンで回るのは初めてなので、わからないことだらけで。

汐見 たまにイベントで地方に行くことはあっても基本は東京拠点だから、ここまで細かく各地を回れるのは大きいなと思っていて。しっかり成功させたいです。

準備期間が長かった……yosugala結成までの道のり

──yosugalaは2022年6月に結成されたグループなので、コロナ禍以前のライブシーンを体験していないわけですよね。アイドルシーン全体で言えば先行きの不透明な時期でしたけど、皆さんはそれぞれどのような動機でyosugalaに入ったんですか?

黒坂 私はもともとアイドル活動に興味があって。でも一度就職したんですよ。就職をしたあと、挑戦の年として1年間、働きながら自分の中で一定の「チャレンジ期間」を設けてオーディションを3つくらい受けたんですけど、全部最終審査で落ちちゃって。でも、そのうちの1組のプロデューサーさんから「新しいグループを立ち上げる準備をしているんだけど」と今の事務所を紹介してもらいました。そこからがスタートですね。次にスカウトされたのがこの2人(未白と汐見)で。

黒坂未来

黒坂未来

未白 私は中学生の頃からアイドルになりたくて、いろんなオーディションを受けてました。でも「どこでもいいからアイドル活動したい」というわけじゃなかったから、自分の好きなグループのオーディションを受けては、なかなかうまくいかないという日々が続いて。服飾系の学校に入学してからは「衣装という形でアイドル業界に関わっていくのもいいな」という思いが芽生えて、特にオーディションも受けてなかったんです。事務所の先輩のuijinさんは普通にファンとして好きだったんですけど、ある日「PassCodeとuijinの事務所が新しくグループを立ち上げるんですけど」って知らない人からDMが来て。

──知らない人(笑)。

未白 事務所からのスカウトだったんですけど(笑)。私からしたら2組ともビッグネームすぎて「だまされてるのかなあ」と思いつつ話を聞きに行きました。渋谷のエクセルシオールカフェまで。

未白ちあ

未白ちあ

汐見 あはははは。

未白 そしたら知らないおじさんがいて……それが事務所の社長のパナさん(法橋昂広氏)でした。

汐見 私は中学、高校、大学と私立に通っていて親の期待もあったからそのまま就職するつもりだったんですけど、大学生のときに歌舞伎町のコンセプトカフェで働いているうちに、オタクがいない人生が考えられなくなって。あの、コンカフェって単価が高いんですよ(笑)。私は自分のオタクたちがめちゃくちゃ好きだったので、社長とかやってる人と学生さんとかでどうしても各差が出てしまうシステムが苦しいなと思ってた。オタクと一緒にいたい、でも単価が高すぎる、それに就職もしなくちゃいけない……と揺れ動いてるうちに「このままオタクと一緒にいたいのなら、アイドルになったほうがまだ単価が安いし、もっと多くのオタクを相手にできる」と。

──珍しい動機ですね(笑)。

汐見 アイドルが特別好きってわけではなかったんですけど……コンカフェ時代に、ちあと同じで知らない人からDMが来たんですよ(笑)。そのうちの1人が今の事務所の方で。受かってからの準備期間は親にも「就活ぼちぼちやってるよ」って嘘ついてました。この3人(汐見、黒坂、未白)がメンバーに決まってから動き出すまで、準備期間に1年半くらいかかってるんですよ。

未白 4人で活動することは決まってたんですけど、もう1人がなかなか決まらなくて。

黒坂 私はもう1つ誘われていたグループを蹴ってこっちに来たのに、2年くらい待たされている状態で。「決まらなかったらもう事務所辞めます!」と社長に伝えたら、その2週間後くらいにこの人(君島)が来た。

──君島さんはもともと汐見さんの単なる飲み友達だったそうですが、汐見さんが声をかけて?

汐見 懸賞金みたいなのが懸けられてたんですよ。新しいメンバーを連れてきたら10万円みたいな(笑)。

君島 名前変えるわ。君島10万円に。

汐見 なかなか決まらなかった理由が、条件として「顔がよくて歌がうまい人」というのがあって。

未白 理想が高かったんだよね。

汐見 凪は顔見知りくらいの付き合いだったんですけど、かわいいし、歌声は聴いてたから懸賞金が懸かったときにピンときて。高田馬場駅のロータリーで「やんない?」って声をかけました。

──あんな治安の悪いところで(笑)。

君島 私はロックが好きで、PassCodeさんとかは普通に知ってたので「えっ? あのPassCodeがいる事務所?」って。小学生の頃はAKB48が好きで、中学のときには地元船橋のご当地アイドルに応募して受かったんですけど、両親が固い人だから勝手に断られちゃったんですよ。自分がやりたいことを強制的にやめさせられるような家庭環境だったけど、アイドルはずっとやりたいと思ってた。でも自分がどういうアイドルになりたいのか、オーディション雑誌を見てもよくわからなくて……ダラダラと過ごしているうちに大学生になり、私も就活しなくちゃいけないタイミングになって。そんなときに、まといから急に声をかけられて「これを逃したら一生アイドルやれないかも」と思って決めました。

君島凪

君島凪

──アイドルになりたい気持ちはずっとあったんですね。

君島 はい。でも、自分はなぜアイドルになりたいんだろう?と考えたとき、誰かに見られたいとかちやほやされたいとかではなく、かわいい服を着て歌って踊るという自己実現の気持ちが強いんだと気が付いて。それができればアイドルじゃなくてもいいんじゃない?と思って、アイドルのコピーサークルに入ろうと決めたんです。コロナ禍だったのでサークルに加入するときはまずダンス動画を送って観てもらうようになってたんですけど、いくつかのサークルに送ってみたら、なんか全部断られちゃって(笑)。

未白 ダンスが下手すぎて(笑)。

君島 yosugalaの審査は歌だけだったから、耐えた~(笑)。

yosugalaは「不器用一生懸命エモ」

──4人が顔をそろえたことでyosugalaの歴史がスタートしたわけですが、どういうグループにしていきたいか、グループ名はどうするか、音楽性はどうするか、どういうコンセプトで活動していくかなどの骨組には皆さんの意見も反映されているんですか? それとも運営にお任せで?

未白 お任せです。ただ、もっとロックな感じになるんだと思ってたのにそうでもなかった。

汐見 わかる。もっと激しい感じになると思ってたよね。

──PassCode所属のwe-B studios、uijinを輩出したsakebiの新プロジェクトということでラウドロックをベースにした音楽を想像してましたけど、確かに先の2組と比較したらもう少しポップですよね。スクリームを入れることもないし、アレンジにはエレガントな要素もあって。「どういうグループですか?」と聞かれたとき、皆さんはどう答えますか?

未白 まだちゃんとわかってないよね。

君島 なんかある?

汐見 私はずっと「不器用一生懸命エモ」だと思ってる。全員性格はバラバラだけど、共通してみんな愚直。めっちゃ不器用だけどまっすぐで、それぞれ別のベクトルで芯がある。方向性の違う“まっすぐ”がyosugalaの楽曲でひとつになる、そこがいいんだなって最近気付いたわけ。

君島 (拍手)

汐見 デビューしてすぐの頃は「なんであたしらを集めて、この曲を渡してきたんだろう?」って、もっとトゲトゲしてたんですよ。まっすぐすぎて。でも4人で活動を続けてきて……もちろんメンバー同士で揉めたりもしたし、意見がバラバラなときもあったけど、4人で歌うとちゃんとyosugalaというひとつのものになるんだなと最近気付いて「すげえ」って思うようになりました。

yosugala

yosugala

未白 俯瞰してるじゃーん。

汐見 わかる? 言いたいことわかる?

未白 わかるけど考えたことなかった。

汐見 ごめん、キモい?

未白 ううん(笑)。正直、今も何も見えてないんです。どこに向かって、何をさせられているのか。自分が何をしたいのかも見えてないし。

黒坂 とりあえず今は一生懸命やろう、って続けてきただけで。

未白 やってたらだんだん色が見えてきた。

君島 わかるわかる。だんだん自分たちが何をすべきかがわかってきた。