音楽ナタリー Power Push - YON FES 2016
GEN(04 Limited Sazabys) × TAKUMA(10-FEET)対談 フェスを主催するということ
京都大作戦が温かい理由
GEN 去年、僕らのライブのPAをやってくださっている方が、音響を担当しているバンドを集めたイベントを東京・ANTIKNOCKでやったんですよ。そのイベントに出演したのが、僕らとWiennersとWHITE ASHっていう3バンドで。そのときにバックヤードに流れる空気感が、なんだか「京都大作戦」みたいだったんです。「それはなんでだろう?」と考えたときに、みんなその主催者さんが好きなんだってことに気付いたんです。「京都大作戦」も、出演者みんな10-FEETのことが好きですし。世代やジャンルが違っても、そうやって共通項が1つあれば、こんなにいい空間になるんだっていうのをすごく感じて、「YON FES」もそういう空間にしなきゃって思いました。
TAKUMA ありがとうね。そうやって「京都大作戦」を褒めてもらえるのは、本当にみんなのおかげ。「京都大作戦」の初回の話をすると、その当時ってバンド主催のフェスがまだそんなに多くなかったから、どうなるのかわからん状態で。僕らもフェスに関して素人やから、不安が山ほどあった。バンド自体もそんなにいい状態じゃなかったしね。そんな状態やのに、第一線で活躍する名のあるバンドばかりが出演を快諾してくれて、僕らはただただ助けられたと思ってる。ゲストからしたら1回目なんて出るメリットはなかったはずなんだよ。「京都で野外フェスをやる」っていうだけで、お客さんが入るかどうかもわからないし。だけど全アーティストが「メリット関係なしに、10-FEETがフェスをやるんだったら出ますよ」って言ってくれて。10-FEETより有名な人ばっかりだったから、僕らは「完全におんぶに抱っこやな」っていう自覚120%やった。「え、Dragon Ashが出るの? 湘南乃風が出るの?」っていう感じで注目してもらえて、それをきっかけに10-FEETのことをたくさんの人に知ってもらえたから。だから、10-FEETの3人とも一生「俺たちがやってるんだぞ」っていう気持ちにならないと思うよ。褒めてもらっても、謙虚なんじゃなくて「いや、本当に僕らは何もやってないんで」っていう気持ちになってしまう。
GEN そんなそんな。
TAKUMA あと「京都大作戦」は初回が台風で中止になったんやけど、次の年にまったく同じアーティストがそろってん。みんな1年前からスケジュールを空けていてくれて。そういうバンドの心意気がお客さんに伝わった時点で、お客さんも「いいライブ、いいイベントを見せてくださいよ」やなくて「ちょっとみんなで盛り上げてみましょか」みたいな雰囲気になってくれた気がする。それは、すごく著名なアーティストさんたちが10-FEETのことを助けてくれたというのが伝わったからなんよね。だからお客さんの中に「じゃあ僕らもなんかしますよ!」っていう気持ちが生まれて、ゴミを拾ってくれたり、スタッフさんやアルバイトさんに挨拶をしてくれるようになって。そうしたら今度は、セキュリティのスタッフさんがお客さんを見かけたら話しかけたりするようになって。そうやって、回数を重ねるごとにいろんな関係がどんどんできあがった。変な義務感じゃない……例えば「友達の家に遊びに行ったらポイ捨てしない」みたいな、みんながそういう意識を持つようになっていったんかなって思う。
「お前すごいな」「夢あるっしょ?」
GEN 「京都大作戦」の会場はすんなりと決まったんですか?
TAKUMA うん。最初は京都市内で構想も立てたんやけど、京都市内はホントに苦情が厳しいみたいでなかなかね。「京都大作戦」は宇治市で開催してるんだけど、宇治市は京都市内に比べて観光地が少なくて、観光客があんまり足を運ばない場所なんだよね。だからせっかくだったら、「人が集まったらいいな」って思う場所でやるほうが開催する意味があるかなと思って宇治にした。俺は滋賀県に住んでた時期もあるから“都会の近くの田舎”の人の気持ちとかも、ものすごくわかるし。
GEN 今回「YON FES」を開催する場所が長久手っていうところで、僕が学生時代に住んでた街なんですよ。
TAKUMA ええやん、そういうの。
GEN モリコロパークは学生時代に友達とよく遊んだ場所なので、開催することを発表したら友達から「あそこでやるの?」ってたくさん連絡が来ました。「お前すごいな」「夢あるっしょ? 絶対に遊びに来て!」みたいなやりとりをして。
TAKUMA いいねえ、ドキドキするなー。それ。
GEN あと、モリコロパークに向かうには東部丘陵線(通称「リニモ」)っていう電車に乗るんですけど、「YON FES」の当日、リニモが増便するんですよ! それが僕的にすごくアツいんです。
TAKUMA おお! それはすごいことやな。
GEN はい、街が動いてるって感じがします。
街に根付くフェスにするには
GEN 今まさに長久手の人に「こういうことをやるんです」っていう話をしてるところなんです。「京都大作戦」って、いまや街の人みんなに認知されていると思うんですけど、TAKUMAさんはどうやって地元の方と「一緒にやろう」っていう空気感を作り上げたんですか?
TAKUMA そういう空気感になっていったのは、開催から数年経ってからっていう気がするね。もちろん宇治市は、初回からいろんな人がいろいろとやってくれたんやけど、街中でポスターを貼ってくれたり、名前がより知られるようになったのはちょっとあとだったと思う。
GEN そうなんですね。
TAKUMA 何よりも現地の人たちと話をするのが一番やと思うよ。駅から「京都大作戦」の会場までの、おばちゃんがやってる雑貨店とか喫茶店とかに行って、直接そこの人たちと話をすることによってものすごく認知が広まった。地元のコミニュティ、おっちゃんおばちゃんたちのパワーって、ネットより強いから。しかも話を聞いてると面白いしな。市町村とかも大事やけどね。
GEN 街の人も主催者の顔が見えると安心しますよね。
TAKUMA そう。それに、1回話すと、ちょっとしたことでの文句やクレームみたいなものはなくなる。すごく協力的になってくれるよ。「知り合いの子がやってるんやったらしゃあないわ」みたいな(笑)。なんなら「大変なことはおばちゃんらに任しとき!」くらい頼もしい。
GEN 僕ら、まだ会場近隣のお店とかにはあまり行けてないんですよ。まだまだやることがあるなって思いました。
TAKUMA 全部のお店に行く必要はないと思うよ。だけど、1人と話すだけでものすごく変わると思う。自分もその場所に対しての認識が深まるしね。その場所と自分が1つになっていく感じがすると思うよ。「これをやったら、あのおっちゃん悲しむかな?」とか「これをやったらあのおばちゃん、喜ぶやろうなあ!」って頭によぎることって、すっごく大事。たくさん行かんでも、1軒でも何かが必ず変わるから。
GEN 「京都大作戦」のときに、Dragon AshのKjさんがタクシーに乗って目的地を告げたら「あ、大作戦行かれるんですか?」って運転手さんに言われたってMCで言ってて。それを聞いたときにタクシーの運転手さんにも「京都大作戦」って根付いてるんだと思って、すごいなあと感じました。
TAKUMA うれしいよねえ。さっきリニモが増便してうれしいって言ってたけど、その気持ちめっちゃわかるわ。すっごいうれしいよな。自分が住んでたところやったらさらにな。
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「YON FES 2016」
2016年4月2日(土)
愛知県 愛・地球博記念公園(モリコロパーク)
OPEN 9:30 / START 11:00 / END 19:00(予定)
- 出演者
- [SKY STAGE]
BACK LIFT / THE ORAL CIGARETTES / SPECIAL OTHERS / クリープハイプ / WANIMA / 04 Limited Sazabys - [LAND STAGE]
SpecialThanks / Wienners / HAPPY / Brian the Sun / My Hair is Bad - [クリエイター]
池田嵩浩(ペイント) / ハジメファンタジー[センチメンタル研究家](恋愛相談) / フクザワ(ペイント) / 村本咲(ペイント) / 原田聡[桑名はらだ歯科クリニック](ギター弾き語り) / VERDY[VK DESIGN WORKS](ペイント)
2016年4月3日(日)
愛知県 愛・地球博記念公園(モリコロパーク)
OPEN 9:30 / START 11:00 / END 19:00(予定)
- 出演者
- [SKY STAGE]
THREE LIGHTS DOWN KINGS / キュウソネコカミ / BLUE ENCOUNT / SHANK / KEYTALK / 04 Limited Sazabys - [LAND STAGE]
LUCCI / ENTH / sumika / Rhythmic Toy World / SUPER BEAVER - [クリエイター]
池田嵩浩(ペイント) / ハジメファンタジー[センチメンタル研究家](恋愛相談) / フクザワ(ペイント) / 村本咲(ペイント) / 原田聡[桑名はらだ歯科クリニック](ギター弾き語り)
04 Limited Sazabys(フォーリミテッドサザビーズ)
2008年に愛知県名古屋市にて結成された、GEN(B, Vo)、HIROKAZ(G)、RYU-TA(G, Cho)、KOUHEI(Dr, Cho)によるロックバンド。2013年5月に発表した2ndミニアルバム「sonor」より日本語詞を多く取り入れ、楽曲の幅を広げる。メロディックパンクやギターロック、ラウドロックなど、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、2014年2月に3rdミニアルバム「monolith」発売を経て、同年9月に1stシングル「YON」をリリース。2015年4月に1stフルアルバム「CAVU」を日本コロムビアから発売し、メジャーデビューを果たした。同年10月にメジャー1stシングル「TOY」を、2016年3月に1st DVD「MOMENT」を発売。4月には初の主催フェス「YON FES 2016」を開催する。
10-FEET(テンフィート)
TAKUMA(Vo, G)、NAOKI(B, Vo)、KOUICHI(Dr, Cho)の3名によるスリーピースバンド。メロディックパンク、ヘヴィメタル、レゲエ、ヒップホップ、ギターポップ、ボサノバなどのさまざまなジャンルを取り入れたサウンドで人気を集めている。また精力的にライブ活動を続け、その迫力満載のライブパフォーマンスや人間味あふれる深いメッセージが込められた楽曲、笑顔を誘い出すキャラクターでもファンを魅力。さらに日本はもとよりアメリカや韓国、台湾でもライブを行うなど、活動の幅を世界に広げている。また自身で主催するフェス「京都大作戦」も例年大成功におさめている。
2016年3月31日更新