音楽ナタリー Power Push - 涼木聡(Yeti)×恒吉豊(OverTheDogs)
音楽に救われた“刺激物”同士の談話
Yetiが2月3日にミニアルバム「光」をリリースし、OverTheDogsが3月16日にミニアルバム「WORLD OF SNEEZER」を発売する。音楽ナタリーでは、2015年にFILM STARSに所属し、同じ事務所の仲間となった2バンドが同時期に作品をリリースすることを記念して、フロントマンの涼木聡(Vo, G / Yeti)と恒吉豊(Vo, G / OverTheDogs)にインタビューを実施した。これまでメンバーそれぞれがバンドを転々としており、「やっとやりたいことが見つかった人たちが集まった」というYetiと、レーベルの移籍やメンバーチェンジを経て活動しているOverTheDogs。多様な経験をしてきた2人だからこそ語る、それぞれの音楽観とは?
取材・文 / 石橋果奈 撮影 / 後藤壮太郎
人見知りは開き直ると克服できる
──YetiとOverTheDogsは今回、同じ事務所に所属してから初めてのCDをそれぞれリリースします。今の事務所に所属したきっかけはなんですか?
恒吉豊(Vo, G / OverTheDogs) OverTheDogsは2011年にメジャーデビューしたんですが、今の事務所の社長はデビュー前からライブに来てくれていて、声をかけてくれてたんです。事務所の人ってメジャーに行くと急に来てくれなくなったり、関係が途切れてしまうこともあるんですけど、社長はデビューしてからもライブに来続けてくれて、僕らがメジャーの契約が切れたときにまた声をかけてくれたんです。やっぱり1人の人が一生懸命になってくれることってすごい大きいと思うし、一緒にできたら面白いかなあと思って。
涼木聡(Vo, G / Yeti) 僕らも完全に一緒です。結成当初から社長がライブに足しげく通って「所属しないか」と声をかけてくれてたんですけど、何回丁重にお断りしても来るんです(笑)。でもすごく熱意がある方なんだなあって思ったし、そこからどんどん距離が縮まって今に至るという感じですね。
──お互い、所属してから何か話しましたか?
恒吉 僕、昔人見知りだったんですけど、聡くんはその頃の僕より人見知りだと思うんですよ。でもこの間ライブのときに「恒吉さん、仲よくしましょう」って唐突に言ってきてくれてびっくりしました。うれしかったですね。
涼木 もともと僕、フェミニンな歌声の男性シンガーがすごく好きなんです。だからOverTheDogsには憧れもあったし、バンド歴で考えても先輩なので。まずは僕からひと声かけないと、と思って。
──恒吉さんは昔は人見知りだったとおっしゃっていましたが、どうやって克服したんですか?
恒吉 昔は本当にしゃべれなくて、ラジオとかでも黙ってたんですけど、「コミュニケーション取ったほうが面白いな」っていうことに気付いて。あと「嫌われてもいいや」って思ったからですかね。開き直ると克服できますよ、人見知り。
涼木 マジですか(笑)。じゃあ今年の目標にします。人見知りっていい印象ないと思うし。
恒吉 確かに、社交的な人からしたら印象悪いって思われるかもしれないですよね。人見知り同士だったら「知ってるこの感じ!」ってなりますよ。聡くんに初めて会ったときも思ったし(笑)。
「夢は叶わないよ」「でも叶うよね、ときたま」
──お2人の書く歌詞からはどちらかというとネガティブというか、暗い印象を受けます。
恒吉 いや、僕はポジティブですよ!
涼木 え、けっこう恒吉さんの歌には闇を感じますよ?
恒吉 あはは(笑)。でも、ポジティブなことを歌うためには、暗い部分も歌わないとただの能天気になっちゃうと思ってるから、そこの部分かもしれないですね。その逆もなんですけど、ネガティブなことを歌うには、ポジティブな部分も歌わないといけない。例えばホラー映画でいきなり殺人が起きるよりも、明るい日常があってから殺人が起きたほうが観てる人は恐怖を感じると思うんですよ。
──では、ネガティブ要素は意識して書いているんですね。
恒吉 まあ、ネガティブっていう言い方が正しいかはわからないですけどね。例えば「愛は大事だよね」っていうわかりやすい歌であっても「でも疑わなきゃね」っていうことを絶対に入れないと気が済まないというか、「愛は素晴らしい」っていうだけで終わるのがすごく嫌で。
涼木 あ、それすげえわかります。そこで言い切っちゃうと、曲の印象が固定されちゃいますよね。僕は、聴く人によっていろんな捉え方をしてほしいと思っているので。
恒吉 そうそう。絶対的なものなんて何もないと思ってるんだよね。優柔不断っちゃ優柔不断なのかもしれないし、信念がないといえばないのかもしれないですけど。「そんなに愛は素晴らしくないよ」とも思うし、「夢は叶わないよ」とも思うし、「でも叶うよね、ときたま」とも思うし。
──涼木さんは曲を書くときに大事にしていることはありますか?
涼木 僕は曲に希望を持たせてあげたいなといつも思っています。希望を歌える人はある程度の絶望を知ってるから歌えると思うんですね。なので、自分がこれから陰も陽も知っていけば知っていくほど、もっともっと深い言葉が出せるんじゃないかなあと思ってます。
──陰から陽が生まれることが多いですか?
涼木 多いですね。僕は根が暗いからこそ、歌詞は明るくしたいというか。自分に歌っている部分もありますね。僕らアーティストって、音楽に救われてる部分があると思うんですよ。
恒吉 うん、絶対あるよね。
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収録曲
- xi-sai-
- uso
- high light
- limiter
- doc
- tear drop
- OverTheDogs ミニアルバム「WORLD OF SNEEZER」/ 2016年3月16日発売 / 1620円 / AKATSUKI label / AK-0057
- 「WORLD OF SNEEZER」
収録曲
- くしゃみ
- 生ハム オン ザ メロン
- ゆーどんせー
- マシュマロガール
- スイミングシミュレーション
- 当たり前の事
Yeti(イエティ)
涼木聡(Vo, G)、沢村英樹(G)、Bikkey(B)、多村直紀(Dr)によるロックバンド。ジャンルにとらわれない音楽性と、涼木の美しいハイトーンボイスで支持を集めている。2013年に1stミニアルバム「家庭の事情」と2ndミニアルバム「賛成の反対」、2014年に3rdミニアルバム「砂糖と塩」、2015年に4thミニアルバム「本音と建前」とコンスタントに作品を発表。2016年2月には5thミニアルバム「光」をリリースした。
OverTheDogs(オーバーザドッグス)
恒吉豊(Vo, G)、樋口三四郎(G, Cho)、星英二郎(Key, Cho)、佐藤ダイキ(B)からなる、「オバ犬」の愛称で知られるロックバンド。2002年に東京・福生で結成したのち、インディーズでの活動を経て、2011年10月にアルバム「トケメグル」でメジャーデビューを果たす。その後も精力的に活動を続け、2014年にはインディーズに回帰してから初のミニアルバム「冷やし中華以外、始めました。」を発表した。2015年5月にはアルバム「君が使える魔法について」を、同年9月にはライブDVD「魔法ふりかけごはん」をリリース。2016年3月に新作ミニアルバム「WORLD OF SNEEZER」を発売する。