音楽ナタリー Power Push - 夢色キャスト

奇才・畑亜貴の歴史と「夢キャス」の世界

ミュージカル劇団をモチーフにしたスマートフォン向けゲームアプリ「夢色キャスト」、通称「夢キャス」がリリースされた。

「夢キャス」はミュージカル劇団「夢色カンパニー」に所属する7人の男性をメインキャラクターとした、恋愛シミュレーション型のリズムゲーム。劇中に登場する音楽では、テレビアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」やクロスメディア作品「ラブライブ!」などで知られる作詞家・畑亜貴が全楽曲の歌詞を手がけている。

音楽ナタリーでは「夢キャス」を音楽の側面からクローズアップ。独自の言語センスで作品世界に深い彩りを与える奇才・畑亜貴はいかにして才能を開花させたのか、そのルーツに迫った。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 小坂茂雄

 
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「夢色キャスト」とは…

「夢色キャスト」のプレイ画面。
「夢色キャスト」のプレイ画面。

「夢色キャスト」はミュージカル劇団「夢色カンパニー」に所属する7人の男性をメインキャラクターとした、恋愛シミュレーション型のリズムゲーム。演劇への夢を一度絶たれてしまった女性が、魅力的なキャストたちと触れ合うことで脚本や演出、 劇場運営などで力を発揮し、もう一度夢を取り戻す物語だ。

恋愛ストーリーと青春群像劇が進行する中、ミュージカル公演では書き下ろしの音楽に乗せてのリズムゲーム、劇場運営では観客の“感動ポイント”を集めるミニゲームやインテリア変更によるユーザーカスタマイズなど、さまざまな楽しみが盛り込まれている。

「夢色キャスト」のプレイ画面。
「夢色キャスト」のプレイ画面。

キャラクターデザインは、マンガを中心にゲームやイラストなどで高い評価を集める作家集団「FiFS」が担当。男性キャラクターを演じる声優陣は、逢坂良太(※逢は二点しんにょうが正式表記)、花江夏樹、豊永利行、上村祐翔、林勇、小野友樹、畠中祐といった豪華キャストがそろった。メインドラマは動画技術「Live2D」を使用し、フルボイスで表情豊かに描かれている。

「夢キャス」最大のポイントは、やはりミュージカルの舞台。楽曲と衣装は演目ごとに用意され、煌めくミュージカルの世界が堪能できる。作品内に登場する楽曲の歌詞は、すべて畑亜貴による書き下ろし。物語にいっそうの深みと彩りを加える彼女の歌詞に注目だ。

  • 「夢色キャスト」のプレイ画面。
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  • 「夢色キャスト」のプレイ画面。
  • 「夢色キャスト」のプレイ画面。
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  • 「夢色キャスト」のプレイ画面。
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畑亜貴インタビュー

1人遊びが好きな冒険家、阿久悠の世界に触れる

──畑さんは幼少期、どんな子供でしたか?

1人遊びが好きでした。探検をしながら鼻歌を歌うのが好きで。

──1人遊びが好きだというと、普通は家に閉じこもりがちだったりすると思うんですけど、そんなことはなく。

畑亜貴

冒険家でした(笑)。三輪車でどこまでも。

──心細くはならなかったですか?

子供特有の万能感に包まれてましたから(笑)。「どこまでも行ける!」みたいな。あまりにもどこまでも行きすぎて警察に保護されたりもしたんですけど、それもうれしかったんですよね。みんなが「よくやった」みたいな目で見てくれているような気がして。次の日からはその警察署に遊びに行くようになっちゃって(笑)。

──だいぶアグレッシブですね。そういう冒険心を煽ってくれるような自分の中のヒーロー、ヒロインはいましたか? 今の自分のルーツになるような大きな存在を挙げるとしたら誰になるんでしょう。

その頃はまだ幼稚園児だったので特になかったんですけど、小学校に上がって松本零士先生の「クイーン・エメラルダス」を読んだときに「私の生き方はこれだ!」と思いました。宇宙海賊になろうと。

──音楽的ルーツになるような存在は?

私は童謡がすごく好きだったんです。小学校の高学年や中学生のときって、学校の教科書の歌はみんな嫌がりますけど私は大好きで。あとはピンク・レディーですね。地球の男に飽きる系の歌に影響を受けました(笑)。

──阿久悠先生の詞の世界に。最初から音楽は言葉に興味を持っていたんですか?

そうですね。歌詞を強く意識したのはピンク・レディーをはじめとする当時の歌謡曲で、その前は自分で詩を書いてたんですよ。リボンでキュッと閉じる詩集を作って……もう帰りたいぐらい恥ずかしいです、今(笑)。

──言葉に対して早くから自覚的だったということですよね。国語が得意だった?

得意というか、好きでした。

──では苦手なことは?

人の気持ちを読むことですかね(笑)。思ったことをそのまま言うと、けっこうドン引きされることがよくあって。最初は気が付かなかったんですけど、いつ頃からか「亜貴ちゃんって……勝手だよね」って言われるようになって、これは控えたほうがいいのではないんだろうかと。

オリジナル曲「バナナパフェ」

──思春期を迎える頃にはどんな少女になっていましたか?

詩集の内容がもっと痛々しくなりました(笑)。

──ははははははは(笑)。

中学のときに作った歌モノのタイトルが「バナナパフェ」なんですけど(笑)、たぶんチョコレートパフェよりバナナパフェのほうが大人っぽい、と自分なりに解釈していたらしいです。今でもその曲は覚えてますけど、門外不出ですね。

──「バナナパフェ」は作曲もご自身で?

はい。

──その頃から自分で曲を作るほど音楽にのめり込んでいたということですか?

畑亜貴

ラジオとかテレビで片っ端から、昭和歌謡みたいな音楽をチェックしてました。あと「明星」の付録で付いていた歌本には最後のほうのページに、歌唱指導とか作詞指導のコーナーがあったんですよ。私はそれがすっごく好きで。「歌を作る人っていいな」って思ってたんです。

──最初から歌手やスターに憧れるというよりは、クリエイティブ志向だった?

そうですね。歌本の「この歌詞に曲を付けなさい」みたいな課題に挑戦したりして。ただ子供だから、それをどう出していいかわかんないから、作り上げてはただほくそ笑んでいました(笑)。

──中学生の頃もまだ1人だけで趣味を深めていたんですか?

中学生になったら、なんと仲間ができまして。バンドを始めました。私はキーボードで、ボーカルの子と仲良くなって2人で「バンドやりたいね」って、周りの気の弱そうな人たちに声をかけて(笑)。

──強制的にメンバーに(笑)。

断れなさそうな子をつかまえて「ほらほら、君の好きなThe Beatlesもやるからさあ」って(笑)。そのバンドではポップロックというか、SHEENA & THE ROKKETSみたいなロックをやってました。

ミュージカルリズムゲーム「夢色キャスト」

「夢色キャスト」

ミュージカル劇団「夢色カンパニー」に所属する7人の男性をメインキャラクターとした、恋愛シミュレーション型のリズムゲーム。劇中に登場する音楽では、テレビアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」やクロスメディア作品「ラ ブライブ!」などで知られる作詞家・畑亜貴が全楽曲の歌詞を手がけている。

畑亜貴(ハタアキ)
畑亜貴

1966年8月13日、東京都生まれ。1990年にコナミのサウンドクリエイターとして音楽活動を開始し、1999年にはアルバム「棺桶島」でソロアーティストとしてデビューを果たす。2002年にはテレビアニメ「あずまんが大王」の主題歌「空耳ケーキ」で作詞家として注目を集め、2006年の「涼宮ハルヒの憂鬱」、2007年の「らき☆すた」をはじめとするアニメ関連作品で数多くのヒットソングを生み出した。作品の世界を深く理解した上で紡がれる独特の言語感覚を持った歌詞は高い評価を集め、アニメ・ゲームの分野では引く手あまたの存在に。2010年にスタートしたメディアミックス作品「ラブライブ!」ではシリーズを通じて全楽曲の作詞を担当。2015年現在、JASRAC登録曲数は1400曲以上にのぼる。2015年9月にリリースされたスマートフォン向けゲームアプリ「夢色キャスト」では劇中に登場する全楽曲の作詞を手がける。また2016年1月には、田代智一、黒須克彦、田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)とともに結成したプロデュースチーム・Q-MHz(キューメガヘルツ)による1stアルバム「Q-MHz」をリリースする。