ナタリー PowerPush - 山崎あおい

20歳の感性を凝縮!ニューアルバム「アオイロ」

「アオイロ」は、山崎あおいが抱いた日々の焦燥や淡い恋心などが、正直に書き留められたアルバムだ。彼女の言葉は世の中がきれい事ばかりでないことを受け入れながら、それでもまっすぐ感情に向き合っている。だから誰が聴いても、胸を打つフレーズが見つけられるんだと思う。

13歳でYUIに憧れてギターを弾き始め、2012年に地元・北海道から上京してデビュー。20歳のシンガーソングライターであり、大学生でもある彼女はどんな思いでこのアルバムを作ったのか。そしてアーティストとしてどんな未来像を描いているのか、話を聞いた。

取材・文 / 田島太陽 撮影 / 上山陽介

誰もが通った経験が自分の個性

──いよいよニューアルバムが発売となります。まず率直にどんな作品になりましたか?

山崎あおい

2013年はいろいろな感情が出てきた1年だったんです。迷いがあって不安もあったけど、もちろんうれしいこともたくさん。それがいい意味で出ているアルバムになったと思います。1人の女子大生として幸せだったかはわからないけど、ミュージシャンとしてはすごく充実した1年でした。

──迷いというのは?

私の中ではデビューって1つのゴールだったけど、全然そんなことないじゃないですか。今後どれだけ自分を知ってもらえるかが勝負なんだと気付いて、これでいいんだっけ?みたいな。

──それは音楽の内容に対して?

というより、デビュー当時はわかったような顔してたけど、本当は何もわかってないわけですよ。自分のよさも、やりたいことも全然。でもそんな中でも、シングルを出すたびにお客さんが増えていくのを実感できたことがすごくうれしかった。私が尊敬するアーティストさんたちも、みんなこうやって地道な活動をしていたんだなって。だったら、私はもっとコツコツがんばらないと輝けないとわかって。

──何か吹っ切れた瞬間があったんですか?

「夏海」をリリースしたときに全国でフリーライブをして、そこで歌っているうちに気持ちが変わった気がします。自分のよさがわかったとは言えないけど、輪郭が見えたかなって。

──その輪郭というのは?

ポップスをやりたい!っていう思いですね。私は子供の頃からずっとポップソングを聴いて育ったんですよ。きれいなメロディが好きだったので、映画のサントラもよく聴いてました。だから自分でも、あまり熱くなりすぎず、グッとくるサウンドで、風景が浮かぶ歌詞を柱にしていきたいと思うようになったんです。私が見たきれいな風景を切り取って形にすることで、それが誰かの大切な曲になったり、昔を思い出したりするきっかけになればいいなって。

──自分のよさってなかなか見つけられないし、ブレることもあると思うんです。でも山崎さんはもう芯をつかんだんですね。

例えばカリスマ的な人気があって崇拝される人って、元不良とか、家族の愛を受けずに育ったとかあるじゃないですか。でも私はそんなんじゃないんですよ。だから普通に生きて、中学で部活に打ち込んで、受験に苦しんで、高校でバイトをして、将来に悩んでっていう、誰もが通った経験を私のまっすぐな言葉で曲にすることが個性になるんじゃないかなと気付いたんです。

寂しいです! でも間違ってない

──タイトルを「アオイロ」にした理由は?

山崎あおい

私、カタカナが好きなんですよ、なんとなくなんですけど。それでデビューアルバムを「ツナガル」にしたので、同じカタカナにしたかったんです。今回入っている曲はさわやかな青春の青だったり、落ち込んだときのブルーな気分だったり、全体として青のイメージがあったのと、私の名前も“あおい”だったのでこのタイトルに決めました。

──一人称を「僕」にしている曲もありますよね。この意図は?

「僕」だから男目線っていうわけではないんですよ。女子って普段は僕なんて言わないけど、少年的な気持ちになることはみんなあると思っていて。夢を見ている雰囲気というか、自分の中の少年っぽいことを描くときは「僕」にしたくなっちゃいますね。

──個人的に6曲目の「東京」が好きです。

ありがとうございます!

──書いたのはいつ頃ですか?

北海道から東京に出てきて、半年くらいですかね。2012年の秋頃です。

──詞にあるように「東京に染まって変わってしまう」感覚があった?

そうですね。友達と話していて気付いたんですが、地方から上京した人って誰かしらを地元に残しているんです。恋人と遠距離恋愛の人もいるし、私だって家族と離ればなれ。でも、物理的な距離によって心が離れるんじゃなくて、自分から突き放しているところもあって。

──どうして?

嫌いになったり会いたくないわけじゃないけど、新しい街になじむためには、地元の友達や家族に甘えるべきではないから。そうやって東京でうまくやろうと思っているうちに、いつの間にか染まっていたけど、これが自分の望んでいたことなんだなって。

──寂しくないですか?

寂しいですよ! でも、間違ってないと思うから。

──そういう繊細な揺らぎが出ていますよね。

はい、だから東京に来たのはすごくいい経験になりました。

ニューアルバム「アオイロ」 / 2014年1月8日 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+DVD] 3570円 / VIZL-615
通常盤 [CD] 3045円 / VICL-64090
CD収録曲
  1. Just Friend
  2. 恋の予感
  3. 夏海
  4. カランコロン
  5. 花火のあと
  6. 東京
  7. 嘘だった
  8. もっと
  9. Blue days
  10. レイコさん
  11. 各駅停車
  12. スコーレ
  13. 強くなる人
初回限定盤DVD収録内容
  • Just Friend(ビデオクリップ)
  • 強くなる人(ビデオクリップ)
  • 強くなる人(折り紙アニメーションビデオクリップ)
  • 「恋の予感」フリーライブツアードキュメント
  • レコチョクからダウンロード
山崎あおい ファーストワンマンライブツアー2014
  • 2014年3月18日(火)
    北海道 サッポロファクトリーホール
  • 2014年3月20日(木)
    愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年3月24日(月)
    大阪府 Music Club JANUS
  • 2014年3月26日(水)
    東京都 渋谷CLUB QUATTRO
山崎あおい(やまざきあおい)
山崎あおい

1993年生まれ、北海道出身の現役大学生シンガーソングライター。「YAMAHA Music Revolution」でグランプリを受賞したことをきっかけに、地元を中心に音楽活動を展開。透明感のある歌声と、等身大の歌詞が同性を中心に支持を集める。2012年8月にビクターエンタテインメントよりインディーズ時代に発表した楽曲をまとめたアルバム「ツナガル」を、同年10月に1stシングル「Just Friend」を発表。2013年に入ってからは「強くなる人」「夏海」「恋の予感」という3枚のシングルをリリースした。2014年1月に1stアルバム「アオイロ」を発表。