ナタリー PowerPush - 山根万理奈
初カバーアルバム“ざっくばらん”解説
7月にシングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューを果たした山根万理奈が、カバーアルバム「ざっくばらん」をリリースする。
さまざまなアーティストのカバー曲をYouTubeにアップしていたことで注目を浴び、それがデビューのきっかけとなった彼女にとって、このアルバムは自身のルーツを改めて提示した内容と言える。だが、ギタリストをフィーチャーし、歌だけに専念してレコーディングされた本作収録の13曲からは、YouTubeの動画では感じることができなかったシンガーとしての幅広い表現力が伝わってくる。結果、このアルバムは山根万理奈の自己紹介として最高の1枚に仕上がった。デビューから2作目にしてカバーアルバムをリリースするのは異例のことだが、そこにはしっかりとした必然性を感じることができるだろう。
2度目のナタリー登場となる今回も、実に爽やかな笑顔で自らの想いを素直に届けてくれた彼女。“ざっくばらん”なインタビューを堪能してほしい。
取材・文 / もりひでゆき
これからはちゃんとメイクをしなきゃ!
──7月のメジャーデビュー以降、山根さんの生活の中で何か変化はありましたか?
8月、9月は学校の夏休みを利用していろんなところでライブさせていただいたり、ラジオに出演させていただいたり、ものすごく充実した時間が過ごせたんですよ。ただ、基本的に顔を出していないっていうところが大きくて、私生活は全くと言っていいほど何も変わらなくって。
──ああ、なるほど。街を歩いても気付かれないわけですもんね。
そうなんです。もちろんライブでお会いした方は、顔をわかってたりはするんですけど。あ、でもそうだ! つい先日、東京に来る電車の中で「山根万理奈さんですよね?」って初めて話しかけられたんですよ! そのときに、これから顔を出すようになるとこういうことも増えるから、抜かりなくというか、いつでもちゃんとメイクしとかなきゃなって思いました(笑)。
──アハハ。そうやって声をかけられることはうれしいことですか?
うれしかったですね、やっぱり。自分のことをどれくらいの人が知ってくださっているかっていうのがわからないので、ライブ以外でそういった触れ合いがあったりすると、ちゃんと自分の活動が皆さんに伝わってるんだなって思えるというか。自分にとって新しい刺激にもなるので、喝を入れられる感じもしますし。
──では、夏に行われた2度のワンマンライブはいかがでした?
デビューしてすぐのワンマンだったので、最初は心配ばかりだったんですけど、終わってみると新たにできることが増えたのかなって。ライブって楽しいって思えましたし。
──ライブ活動も含め、ご自身の音楽に対する気持ちの変化みたいなものは?
私は自分が歌えればいいっていうところから始まったんですけど、聴いてくれる人がいるっていうことがどんどん見えてきたので、そういう人たちのためにいい歌を歌おうっていう感じで、視野が広がりましたね。自己満足のところから一歩抜けたなっていう感じがあります。
──そうなると今度は歌を届けるという難しさもあったりすると思いますが。
はい。やっぱりそれはありますね。けど、届けたいっていう気持ちは持っていても、押しつけがましい歌は歌いたくないっていう気持ちは変わらないんです。だから焦らずに、いつかみんなに自然に聴いてもらえるようになるぞっていう気持ちで前向きにがんばっていきたいですね。
YouTubeは自分のホームだと実感した
──そう言えば10月末には、YouTubeへカバー楽曲を久々にアップされていましたね。
音飛びが激しいやつですよね(笑)。デビューしてからもYouTubeへのアップは続けていこうと思ってたんですけど、なかなか時間がなくって。そろそろやらないとみんな忘れちゃうかもしれないなと思ったので時間を見つけてアップしたんですけど、カメラの不都合やらなんやらであんまりうまいこといかず(笑)。
──でも、みんな喜んでくれましたよね。
そうなんです。「おかえり」って言ってもらえるなんて思ってなかったので、やっぱりYouTubeはホームなんだなって思いました。すごく自分にとって好きな場所ですね。これからも時間を見つけて積極的にやっていくつもりです。
──しかし、デビュー後にもかかわらずYouTubeの動画は手作り感全開で(笑)。あの場所においてはそれが良さになってるんだよなあと改めて思いました。
個人的には私にもプライドがあるし、演奏に関してもうまくなった姿を見せたいですけど……。でもやっぱり背伸びしてもしょうがないんですよね。周りの人からも、そういう手作り感がいいって言われましたし。あの場所はがんばりすぎなくていいっていうと変ですけど、ゆるーく続けたいなって思うんです。自分は今、ちゃんとしたCDを出せてライブができるっていう環境にあるけど、そこにもうひとつYouTubeっていう楽しみがあってもいいと思うんです。プロとかそういうことは関係なく、音楽って楽しいよね、歌う楽しさってあるよね、っていうことをみんなで共有できたらいいなって。
銀杏BOYZは自分のルーツ
──さて、山根さんの新作「ざっくばらん」についてですが。デビュー2作目にしてカバーアルバムっていうのはかなり異例ですよね。
自分でもそう思います。私も「やろうよ」って言われたときに「いいのかな!?」って(笑)。でも、私のルーツはカバーだっていうこともあるし、いつかやりたいなと思っていたので、タイミングとしていつじゃないとダメっていうのはなかったんです。やるとなったらワクワクしてきたし。
──内容に関してはどうやって決めていったんですか?
今までYouTube上にアップした曲の中からのリクエストもあったんですけど、せっかく音源化するんだったら新しいカバーをやって、新しい私を見てもらったほうが絶対いいなって思ったんです。で、選曲をしていく中でまず挙がってきたのが銀杏BOYZでしたね。
──今回は銀杏BOYZのカバーが3曲収録されています。
デビューシングルの「ジャンヌダルク」に入れさせてもらった「夢で逢えたら」を皆さんに気に入っていただけたということもあって、だったらもうちょっと欲張ってもいいですか、みたいな(笑)。それ以外に銀杏BOYZの曲を2曲を選ばせてもらって散りばめました。今回アルバムのコンセプトは特になくって、言ってみれば山根万理奈の好きな曲集めました、ルーツの曲はこれです、みたいな感じなので、銀杏BOYZが3曲入っちゃってもいいのかなって。それ以外の曲も、小学校のときから聴いていた私の好きな曲だったり、スタッフの方にオススメしてもらった曲を、自分判断で入れさせてもらいました。
CD収録曲
※カッコ内はオリジナルアーティスト
- 夢で逢えたら(銀杏BOYZ)
- Joy(BONNIE PINK)
- 笑顔の未来へ(エレファントカシマシ)
- 冬がはじまるよ(槇原敬之)
- MajiでKoiする5秒前(広末涼子)
- 漂流教室(銀杏BOYZ)
- ハナムケノハナタバ(花*花)
- 夏の日の1993(class)
- タッチ(岩崎良美)
- ジレンマ(speena)
- 年下の男の子(キャンディーズ)
- あなた(小坂明子)
- BABY BABY(銀杏BOYZ)
CD収録曲
- STAR
- 生きてゆくこと
- クレーターストーリー
- M
- 赤い橋の伝説
- STAR(instrumental)
- 生きてゆくこと(instrumental)
CD-extra
- 「ジャンヌダルク」Music Video “MARINA ver.”
山根万理奈(やまねまりな)
島根県在住の現役大学生シンガーソングライター。2009年よりYouTubeで、カバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開する。透明感あふれる声やおっとりしたキャラクターがネットを中心に話題を集め、ファンを獲得。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースし、同年7月にワーナーミュージック・ジャパンから、シングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューを果たす。11月にカバーアルバム「ざっくばらん」を発表。