思い描いた絵になるまで何度でも塗り直せばいい
──EP全体のテーマはありますか?
テーマは “生きるってこういうことだよね”という感じです。達観しているわけではないし、表現の角度は4曲とも違うんですけど、EPを通して1つのテーマを描いているというか。もちろん正解はないですけど、4曲を聴いていただいて、さまざまな視点から捉えてもらえるといいなと思ってます。
──2曲目の「Re:Painted」はアンビエントな雰囲気の楽曲ですね。
“Re:Painted”というワードが思い浮かんで、そこから広げていきました。タイトルが先だったんですけど、「人生において“塗り直す”ってどういうことだろう?」と考えてみたんです。人生を絵に例えると、描いていたキャンバスごと変えるんじゃなくて、思い描いた絵になるまで、何度でも塗り直せばいいんじゃないか、そういうふうに生きていけばいいんじゃないかなと思って。それが「Re:Painted」のテーマですね。
──なるほど。Who-yaさん自身もそういう考え方なんですか?
自分というか、周りの人たちを見ていて感じたことですね。それまでやってきたことがあるんだから、「これは意味がない」と決めつけて捨てないでほしいなって。もし捨てようとしても、それまでやってきたことは残っているし、なかったことにするのは違うと思うんです。そういう意味で「Re:Painted」には、自分の主観が強めに入っているかもしれないですね。
──ご友人とそんな深い話を普段からしてるんですか?
そういうわけでもないですけど(笑)、ひさしぶりに友人と会うと、将来のことだったり、「このままでいいのかな」みたいな話になったり。そういう会話から「興味深いな」と感じたことを歌詞に反映しているのかもしれないです。
──トラックの雰囲気も歌詞のテーマに合ってますね。
盛り上がる曲ではないし、バラードでもないんですよね。リズムを刻まず、ギターやシンセを重ねながらイメージに近付けていきました。
──そして3曲目の「Bitty, Not Empty」は、シンプルなロックナンバー。一緒にシンガロングしたくなるようなフレーズがあるのも新機軸なのかなと。
そうですね。いろんな場面で「Who-yaの曲は難しすぎて歌いづらい」と言われることがけっこうあったんですよ。キーは高いし、歌詞が詰まってるし、裏で拍を取ることも多いので、確かに歌うのは大変なんだろうなと。あとはライブの影響も受けてるんですよね。1月のライブも5月のライブもお客さんが声を出せない状態で、皆さんと一緒に歌うライブを経験したことがないんですけど、声出しがOKになったときに今の曲だけで大丈夫なのかなと思ったんですよね。
──オーディエンスと合唱して楽しめるような曲が欲しいと。
はい。イントロから合唱できて、ライブの空間の中で1つになって盛り上がれるような。今後を見据えて、そういう曲があったほうがいいなと思って作ったのが「Bitty, Not Empty」なんですよ。もし曲を知らなくても、その場で聴いてすぐに歌えるメロディだと思うし、ワンマンはもちろん、フェスやイベントで自分たちのことを知らない人たちとも楽しい空間を作りたいので。
──歌詞もかなりポジティブですね。
前向きな意志がはっきり出ていると思います。軽やかなギターサウンドに合わせて、歌詞もあまり難しいことは言わず、できるだけストレートに書こうと思って。早くライブで歌いたいです。皆さんと一緒に歌える日も、そう遠くはないような気がするので……。海外のフェスは、去年くらいから声出しが復活してるじゃないですか。最近の海外フェスの映像を観て、一瞬コロナ前の映像なのかと思って驚きました。
──日本も少しずつ戻ってくるといいですよね。「Bitty, Not Empty」はストレートなロックチューンだけに「この曲のギターを弾いてみたい」と感じる人も多いのではないかと思いますが、Who-yaさんは10代の頃、どんな曲をコピーしてました?
最初はやっぱりシンプルなリフの曲でしたね。Green Dayとかハイスタ(Hi-STANDARD)とか。Linkin Parkも好きなんですけど、難しくて弾けなかったです(笑)。「Bitty, Not Empty」のギターはシンプルだと思うので、ぜひ弾いてみてほしいです。
すべての物事は表裏一体
──4曲目の「half moon」はエキゾチックなムードの楽曲ですね。トラック、メロディを含めて、非常に美しい曲だと感じました。
ありがとうございます。奥行きや深みのあるトラック、印象に残るリフを意識して、いいバランスになったんじゃないかと思います。楽曲全体のテーマは、そのままですけど“半月”ですね。すべての物事は表裏一体というか。誰にでも「これは正しい」「これは間違っている」という思いがあると思いますけど、場所や時間、見ている位置によって、大きく変わってくると思うんです。正解と間違い、いいと悪いは表裏一体というのを“半月”に例えて曲にしてみたいなと。月の形も、住んでいる国や場所によって違って見えるので。日本人は月を見て「美しい」と感じる人が多いと思いますけど、違う国の人は「冷たい」「不吉」というイメージを持つこともあるだろうし。
──立場や生まれ育ち、ジェンダーなどによっても、モノの見方は変わりますからね。意見の違いによる分断も深刻だし。
そうですね。普段からなるべくニュースを見るようにしているんですけど、同じニュースなのに、メディアによって言っていることがまったく違うこともありますし。正解なんてないんだなと感じるし、事実かどうかもわからないまま、信じてしまうのも怖いなと。
──そうですね。ちなみにCDジャケットには初めてWho-yaさん本人の写真が使用されていますが、これはどうしてですか?
これまでCDジャケットやキービジュアルはイラストがメインだったんですが、それは純粋に音楽と歌だけを届けたいという気持ちがあったからなんです。でも、2年と少し活動を続けてきて、「THE FIRST TAKE」や2本のワンマンライブ、ミュージックビデオなどで自分の姿を見てもらう機会が増えてきたんですよね。だからこのタイミングでCDジャケットで顔を出しても大丈夫だろうなと。
──ジャケ写やMVに関しても、Who-yaさん自身のアイデアが投影されているんですか?
そこも話し合いながら進めています。全体のテーマをもとにして、デザイナーの方、映像作家の方とやり取りしながら、任せるところは任せるし、「こうしたい」という思いはお伝えして。「A Shout Of Triumph」のMVも監督としっかりコミュニケーションを取りながら撮影しました。
──“作品ごとにいろいろなクリエイターと組む”というスタイルも進化している?
そうだと思います。歌詞も自分1人で書いているわけではないし、関わってくれる方々もWho-ya Extendedというプロジェクトへの理解度が高まっていると思うので。
──次作の制作も始まってるんですか?
やってます。いつ発表できるかはまったく決まってないですけど、最初にお話したように、今後もそのときにやりたいことを形にしていけたらなと。ずっと試行錯誤しているし、形にするのは難しいなと思うことも多いんですけど、だからこそお届けできるときの喜びがある。簡単だったら、やる意味もないのかなと。ライブも増やしたいですね。ワンマンだけじゃなくて、イベントやフェスにも出たいんですよね。Who-ya Extendedを知らない人の前で、どこまでやれるか確かめたいので。
プロフィール
Who-ya Extended(フーヤエクステンデッド)
ボーカリストWho-yaを中心としたクリエイターズユニット。2019年11月にテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」のオープニングテーマとなったシングル「Q-vism」でメジャーデビューし、2020年4月に公開された映画「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR」でも主題歌を担当した。2021年2月にテレビアニメ「呪術廻戦」第2クールのオープニングテーマ「VIVID VICE」を表題曲とする1stEPをリリース。2022年6月には、アニメ「ビルディバイド -#FFFFFF-(コードホワイト)」のエンディングテーマ「A Shout Of Triumph」を表題曲とする3rd EPを発表した。
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