ボーカリストとしての成長が感じられる「透明な花」
──続く「Absolute 0」は抑制の効いたアレンジが印象的でした。すごくクールだし、少しシティポップ的な雰囲気もあって。
サウンド的には今までにない感じですね、確かに。歌詞のテーマとしては、この曲も“今”だったり、今の人たちを表現したかったんですよね。さっきも少し言いましたけど、この2年間で世界がすっかり変わってしまって、「せっかく楽しもうと思っていたのに、すべて失ってしまった」と思っている人もいて。それ以外にも、例えば「海外に移住しようと思っていた」とか「早期リタイアするつもりだった」という人もいるだろうし、やろうとしていたことが止まったことで、行き場のない怒りを抱えている人もたくさんいると思うんです。自分ではどうすることもできないし、世界中が虚しさを感じているというか。そういう世界を“絶対零度”に例えているのが「Absolute 0」なんです。
──そのイメージは、最初から明確だったんですか?
そうですね。Who-ya Extendedの制作はまずテーマだったり、景色みたいなものがあって。最初は漠然としているんですけど、それをクリエイターと共有しながら具現化することが多いんです。「Absolute0」のアレンジに関しては、最初のギターリフで「盛り上がる曲なのかな?」と感じてもらいながら、でも、サビはそこまでアガりすぎないというバランスを意識してました。
──10曲目の「透明な花」も、このアルバムのポイントだと思います。とても美しい曲だし、「透明な花」というモチーフも新鮮で。こういうバラード系も、今まではあまりなかったですよね。
日本語のタイトルも初なんですよ。この曲は願いや祈りを表現しているんですけど、「透明な花」は“存在しないもの”を表わしていて。例えば「世界がずっと平和であればいい」とか「環境を守って暮らしていきたい」という目標を掲げるのは素晴らしいことだし、僕もそうなればいいと思っているけど、どこかで「それは非現実的だ」というところもあって。もっと身近なところでも、「周りの大切な人がずっと健康でいてほしい」「幸せでいてほしい。寂しさを感じないで生きてほしい」と思うけど、それは無理かもしないという気持ちもある。でも、だからこそ「成し遂げたい」と思えるし、がんばれるんじゃないかなって。
──なるほど。「透明な花」は、Who-yaさんのボーカルの素晴らしさを味わえる曲でもあるなと。
ありがとうございます。純粋にスキルが上がった部分もあるし、「透明な花」は一番レコーディングに時間をかけたんですよ。冒頭の歌の入り方もそうだし、発音や発声、トラックに対する歌の当てはめ方にも細かくこだわって。「WⅡ」の制作を通してやってきた歌の表現が詰まっているし、僕自身の成長も感じてもらえるのが「透明な花」だと思います。
──続く「Icy Ivy」も、1stアルバム以降の活動を象徴する楽曲ですよね。
音作りに関しては、「VIVID VICE」が1つの分岐点になっていて。それまでとは違うベクトルを示した曲だと思うんですが、そのあとにリリースした「Icy Ivy」は、デビューの頃のサウンドが引き継がれているんですよね。MVをYouTubeに上げたときも、「『Q-ism』(2019年11月リリースのデビューシングル)が好きな人は、この曲も好きなはず」みたいなコメントがあって。デビューシングルと近しいものを感じたということは、最初から聴いてくれてるわけじゃないですか。自分としてもすごくうれしいし、音楽を続けている意味があるなと思います。
──そして最後は「WⅡ -epilogue-」。オープニングの「WⅡ -prologue-」はインストですが、こちらは歌メロと歌詞がありますね。
今のWho-ya Extendedの状態を語る曲があってもいいのかなと思ったんです。英語の歌詞なんですが、直訳すると「僕は今どこにいる? 君は今どこにいる?」と歌っていて。
──実際、そういう思いがある?
そうですね。自分自身はWho-ya Extendedの核にいるんだけど、同時に俯瞰しているところもあって。自分がやりたいことを実現させるというより、「このプロジェクトで、こういうことをやれば面白いんじゃないか」という視点があるんですよね。1人でやっていることではないので、この先、どういう道をたどるのかもわからないし、たぶん誰も知らないんです(笑)。
──プロジェクトの真ん中で歌っているんだけど、同時に冷静に見ているところもある。そういうバランスが居心地いいというか、Who-yaさんの性格にも合ってるんでしょうね。
そうかも(笑)。自分1人でやると、たぶん背負いすぎちゃうと思うんです。クリエイターズユニットだとほかの人と協力したり、話し合いながら作っていけるし、それは自分に合ってるんでしょうね。人と話をするのも好きなんですよ。ほかの人の経験や知見を共有するのもいいことだと思うので。
“今”を見つめながら曲を作っていく
──今後の活動についても聞かせてください。まず2022年1月には初のワンマンライブ「Who-ya Extended 1st solo live(仮)」の開催が予定されています。
ライブに対するモチベーションはずっと持っていて。デビューから2年経ってようやく初ワンマンなんですが、これまで自分たちの楽曲を聴いてくれて、応援して支えてくれた人たちに対する存在証明にもなるのかなと。たくさんの方に観てほしいし、今後もライブはやっていきたいと思います。数がすべてではないけど、ライブをやることで広がるものは必ずあると思うので。
──制作に関してはどうですか?
さっき話したように、どこに向かうかはまだ見えてないです。近いところで決まっているものもあるけど、次のアルバムに関しては何も考えてないので(笑)。まずリリースを決めて、そこから逆算するのではなくて、“今”を見つめながら楽曲を作っていきたいんですよね。
──「WⅡ」以降の展開もめちゃくちゃ期待してます。ちなみにWho-yaさん、最近はどんな音楽を聴いてますか?
相変わらずいろいろ聴いてますね。Red Hot Chili Peppersの作品を遡って全部聴き直したりするし、今のチャートに入ってる曲もチェックしてます。あと、なぜか尾崎紀世彦さんをよく聴いてましたね、最近。
──意外な名前が出てきましたね。
高校生の頃によく聴いていたんですよ。尾崎紀世彦さんもそうだし、玉置浩二さんもそうなんですけど、僕の中では「歌と言えばこの人」みたいな存在で(笑)。音楽の精霊だと思っていて、あれはもう歌手としてのゴールでしょうね。
ライブ情報
Who-ya Extended 1st solo live(仮)
2022年1月23日(日)東京都 Veats SHIBUYA
プロフィール
Who-ya Extended(フーヤエクステンデッド)
Who-ya Extended ボーカリストWho-yaを中心としたクリエイターズユニット。2019年11月にテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」のオープニングテーマとなったシングル「Q-vism」でメジャーデビューした。2020年4月に公開された映画「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR」でも主題歌を担当。2021年2月にテレビアニメ「呪術廻戦」第2クールのオープニングテーマ「VIVID VICE」を表題曲とするミニアルバムをリリースし、「VIVID VICE」でYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に登場。8月にはテレビアニメ「NIGHT HEAD 2041」のオープニングテーマを表題曲とする新作「Icy Ivy」を発表した。11月に2ndアルバム「WⅡ」をリリース。2022年1月には初のワンマンライブ「Who-ya Extended 1st solo live(仮)」の開催を控えている。
Who-ya Extended OFFICIAL WEBSITE