Who-ya Extended|当たり前を疑い、自分の手で真実をつかめ

世界が変わったとしても、自分は正気でいたい

──そのほかの収録曲はいつ頃に制作したんですか?

「Icy Ivy」を制作し終わったあとですね。なので、どれも今現在の自分自身が持っているものが反映された曲になっていると思います。2曲目の「Growling Ghoul」のテーマも、コロナ禍につながっていて。コロナ禍で社会の形が変わって、どこか退廃的な世界の中でポツンと取り残されている感覚というか。そのイメージを音楽にするとこうなるという感じですね。

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──Who-yaさんの中で、コロナ禍は退廃のイメージなんですね。

そうかもしれないですね。コロナに限らず、世界が昨日とは違ってしまうような出来事が起きたときって、普段通り生きる人もいれば、何かがおかしくなってしまう人、自分を追い詰めてしまう人もいる。その中で共通しているのは、「世界が変わったとしても、自分は正気でいたい」という気持ちだと思っていて。「Growling」は動物の唸り声という意味もあって、自分が表現したいイメージに合ってるなと。

──なるほど。冒頭の歪んだ音のリフはベースですか?

いや、ギターですね。ドロップチューニングで音を下げて、弦をダルダルにした状態でリフを録ってます。あと全体的にホワイトノイズを入れて、ざらついた感じになってますね。

自分を鼓舞するところから始めて、人を元気づけることができたらいい

──3曲目の「RAISE U UP」は、ヘヴィロック、EDMなど多彩な要素が融合したアッパーチューンです。

自分たちなりのミクスチャーですね、この曲は。僕は母親の影響で小さい頃からLinkin Parkを聴いていたんですけど、Linkin Parkってゴリゴリのミクスチャーじゃないですか。見た目もしっかりバンドなんだけど、「これ、ホントにバンドサウンドなの?」という音が入ってる。そういう曲を自分たちでも作ってみたいと思って完成したのが「RAISE U UP」です。

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──そうなんですね。日本のミクスチャーバンドも聴いてたんですか?

聴いてました。上の世代の人たちから「1990年代にミクスチャーのブームがあった」という話を聞いて、RIZEやDragon Ashを知りました。高校生の頃に初めてフェスで観て、「日本にもこういうバンドがいるんだ!」って感動しました。

──Linkin Parkが2000年代以降の日本のバンドに与えた影響も大きいですよね。

そうだと思います。日本だけじゃなく世界中のバンドが影響を受けているし、Linkin Parkのチェスター・べニントンが遺したものを音楽的なDNAとして取り入れながら活動しているバンドは今も多いと思う。ファンとしてもすごくうれしいですね、それは。

──Who-yaさんと同じ世代にも、ミクスチャー系のバンドが少しずつ増えている印象があって。

あ、そうですよね。1990年代のブームから20年以上経って、また戻ってきてるというか。ファッションと同じように、サイクルがあるんでしょうね。

──「RAISE U UP」の歌詞についてはいかがですか?

この曲はメロディが優先で、歌詞は後付けなんです。内容としては……僕はもともと、特定の誰かに向けて歌うというより、自分に向けて歌うことが多くて。「RAISE U UP」の歌詞もそう。誰かを応援する、元気づけるというより、まずは自分を鼓舞する意味合いが強いんですよね。

──この曲を作った時期は、自分を鼓舞することが必要だった?

そうかもしれないです。例えばフェスが中止になったり、毎日のように悲しいニュースがあるけど、音楽にできることは絶対にあるはずだと思ってて。まず自分を鼓舞するところから始めて、人を元気づけることができたらいいなと。それがエンタテインメントの最終地点だと思うんですよね。歌詞の中に「I call your name. I just wanna wake up.」というフレーズがあるんですけど、自分にできることがあるとしたら、それくらいかな。“あなたの名前を呼ぶ。目覚めてほしい”っていう。

目の前の1人に向けて歌いたい

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──今の話は、4曲目「Call My Name」のタイトルにもつながっていますね。

はい。この曲はライブを意識しながら作りました。これまでWho-ya Extendedとしてのライブはオンラインだけで、観客と同じ場所を共有したことがまだなくて。やっぱり直接会いたいし、この曲では皆さんの目の前でパフォーマンスしているところをイメージして、その人たちに向ける音楽を表現したいなと。実際にライブで演奏したときに初めて完成する楽曲だと思います。できれば会場で一緒に歌いたいんですけど、今の状況だと難しい。でも、こちらから一方的に歌や言葉を投げかけるのではなくて、この曲を介して共鳴できたらいいなと。

──スケール感と高揚感があるし、ライブハウスでも、アリーナクラスの会場でも似合う曲だと思います。

そう言ってもらえるとうれしいです。でも、特に会場の大きさは想定していなくて。どれだけキャパが大きくなっても、“1対1”であることは変わらないと思っているんです。お客さんが100人でも1000人でも1万人でも、目の前の1人に向けて歌いたいというか。

──ライブに対する思い、めちゃくちゃ強いですね。

そうですね。メジャーデビュー前、バンドをやってたときはかなりライブをやってたので。その頃はオリジナル曲ではなくて、友達と好きな曲をカバーしてただけなんですけどね(笑)。ライブができない現状はもどかしいですけど、その分次のライブにぶつければいいのかなと。だから、今抱えてるモヤモヤも、ライブのためには必要なものだと思ってます。

自分の色に染められる。そういう存在になりたい

──音楽性の広がりに伴って、今作ではボーカルの表情も多彩になっている印象がありました。Who-yaさん自身はどう感じていますか?

「まだまだ」と言えるところまでにも届いてない気がしています。もちろん制作ではその時点での100%を出していますけど、「まだまだいけるはず」という気持ちがずっとあるというか。「VIVID VICE」のリリースから5カ月が経ちますけど、その間も引き続きいろんな音楽を聴いて、歌っているんです。それが自分たちのオリジナル曲にも生かせていたらうれしいですね。

──Who-yaさんにとって理想のボーカリスト像は?

どんな曲を歌っても「やっぱりWho-yaだね。すごいな」と思ってもらえるようなボーカリストになりたいです。トップアーティストの皆さんは、みんなそうだと思うんです。アッパーな曲で盛り上げることもできて、バラードもしっかり聴かせられるし、カバ―でも自分の色に染められる。そういう存在になりたいですね、僕も。

海外のリスナーにも届く曲を

──8月20日には「Ivy Icy」購入者を対象にした招待制ライブ「『Icy Ivy」Release Special Live『VIVID × VIVID』case of "Icy Ivy"」が開催されます。

パッケージを買っていただいた方から抽選で限定100名を招待するライブです。「呪術廻戦」のイベントに出演させていただきましたけど、自分たちが主催する有観客ライブはこの機会が初めてで。もちろんモチベーションは上がっているし、来てくれる皆さんに楽しんでもらえるライブにしたいですね。それが終わったら、次の作品の制作に入る予定です。

──期待してます! ちなみに最近はどんな音楽を聴いてるんですか?

音楽の趣味はずっと雑食で、何でも聴いてますよ。ここ最近は日本のラッパーだったり、あとは海外のチャートをチェックすることが多いかな。ジャスティン・ビーバーとコラボレーションした曲(「STAY」)がヒットしたザ・キッド・ラロイとか。韓国の音楽も聴きますね。BTSはもちろん、最近はaespaが気になってます。まあ、趣味でもあり、仕事でもあるという感じですね。

──当然、グローバルチャートに食い込めるような楽曲を作りたいという気持ちも?

それを目標にしているわけではないですが、「VIVID VICE」がビルボードのグローバルチャートに入ったときは、モチベーションが上がりましたね。さらにレベルを上げて、海外のリスナーにも届く曲を作っていきたいと思っています。

Who-ya Extended
Who-ya Extended(フーヤエクステンデッド)
Who-ya Extended
ボーカリストWho-yaを中心としたクリエイターズユニット。2019年11月にテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」のオープニングテーマとなったシングル「Q-vism」でメジャーデビューした。2020年4月に公開された映画「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR」でも主題歌を担当。2021年2月にテレビアニメ「呪術廻戦」第2クールのオープニングテーマ「VIVID VICE」を表題曲とするミニアルバムをリリースし、「VIVID VICE」でYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に登場。8月にはテレビアニメ「NIGHT HEAD 2041」のオープニングテーマを表題曲とする新作「Icy Ivy」をリリースした。