ナタリー PowerPush - WHITE ASH

「偽者の王様たちにサヨナラを」のび太、大いに語る

WHITE ASHのニューアルバム「Ciao, Fake Kings」が12月11日にリリースされる。メジャー移籍後初のフルアルバムとなる本作は、「Velocity」「Crowds」といった直近のシングル曲は一切収録されず、全曲新曲から構成された意欲作。バンドの今の勢いをそのまま凝縮した、個性的なロックアルバムに仕上がっている。

WHITE ASHはなぜ今、このような作品を作ろうとしたのか。バンドのブレインであるのび太(Vo, G)に話を聞いた。

取材・文 / 宇野維正

 
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まっさらな状態でゼロから新しい大きな絵を描きたい

──メジャーからリリースする最初のアルバムでありながら、先行するシングルの曲も入れずに、全11曲すべて新曲というのは珍しいですよね。

のび太(Vo, G)

自分にとってシングルというのは小さいサイズの絵みたいなもので、アルバムというのは大きいサイズの絵みたいなもので、まったく別のものなんですよね。それぞれが、それ自体で完結していてほしいという気持ちがあって。新しい大きい絵を描くにあたって、前に描いた絵のモチーフが入っているっていうのはやりにくくて。だったらまっさらな状態でゼロから新しい大きな絵を描きたいと思って作ったのがこの「Ciao, Fake Kings」というアルバムなんです。

──無粋な質問ですけど、レコード会社から「せっかく大きなタイアップもあったシングルなのに、その曲を入れないの!?」みたいなプレッシャーはなかったんですか?

僕自身、好きなアーティストのアルバムを買うときは、既発の曲じゃなくて、1曲でも多くの新曲を聴きたいと思うから。だったら、自分たちでもそういう作品を作りたいんですよね。そこで、WHITE ASHはほかのバンドとはちょっと違うかもしれないぞ、という姿勢も見せられると思ったし。自分はバンドの作品というのは、そこに入ってる曲だけじゃなくて、作品の提示の仕方も含めて作品だと思ってるから。

──バンドを取り巻く環境で、メジャーに移ってから変化を感じるところはありますか?

自分で言うのもなんですけど、ここまでトントン拍子できたところはあったと思うんですよ。ただ、新人バンドのときはちょっと変わったことをやれば周囲からは新鮮に映るし、そこで注目されたこともある。でも、そろそろニューカマーとも言われない時期に入ってきた。それが今の僕たちのいる立ち位置だと思うんですね。

──すごく冷静な分析だ(笑)。まったくその通りで、メディアは新人バンドに唾をつけるのが好きですからね。

そう。「あー、WHITE ASH? 名前は聞いたことあるかも」みたいなことにならないために、どれだけ自分たちの存在と音楽を明確に打ち出すことができるか。僕はこのバンドでとにかくシンプルかつカッコいいことをやりたくて、曲はもちろんだけど、バンド全体のイメージも一貫したものとして突き詰めていきたいんですよね。で、それを突き詰めていけばいくほど、僕たちがやっている意味が深まるというか。

この世界にはあらゆる分野において、偽者の王様が多いなって

──今回のこのジャケット、そしてまるでアンディ・ウォレス(Nirvanaのアルバム「Nevermind」のエンジニア)がミックスしたようなサウンド、これは相当確信犯的に狙っていったものだと思うんですけど。

今回、まずアルバムのタイトルを「C」で始めたかったんですよ。

──最初はそこからなんだ!

はい。で、「C」で始まるタイトルになるような印象的な言葉を探していて、「Ciao(チャオ)」って挨拶の言葉を思い付いたんですね。そこから、挨拶のフレーズが印象的だった作品として思い浮かんだのが……。

──Nirvanaの「Hello, Hello, Hello, How Low」(「Smells Like Teen Spirit」の一節)だった?

そう。それで、その音感を「Ciao」に置き換えてみて、「チャオ……チャウオウ?」「チャウ王?」「王様じゃない?」「偽者の王様」「Fake Kings」っていう連想で。

──ぶっ飛んでるね、発想が。

のび太(Vo, G)

でも、「Fake Kings」って言葉が浮かんだときに、この世界にはあらゆる分野において、偽者の王様が多いなって思って。そういう見せかけの王様に対して、自分たちがカッコいいと信じているこの音楽でもって別れを告げてやりたい、倒してやりたいと思って。そうやって直感で浮かんだことに、あとから本当に思っていたことの意味とか意志とかがついてくるっていうことが、自分の場合すごく多いんですよ。

──話を聞いていて思ったのは、のび太くんってものすごく感覚的なことを、理詰めで語りますよね。普通、直感と論理性って矛盾するものだけど、そこにちゃんとバランスが取れていて、全部つながってるところが面白い。

それぞれの曲のタイトルも大体こんな感じで直感からスタートするんですけど、あとから全部自分の中でつながっていくんですよ。

──「Ciao, Fake Kings」を聴いて新鮮だったのは、Nirvanaというある世代までだったら非常にセンチメンタルにならざるを得ないバンドに対して、別にオマージュを捧げているわけではなく、ある意味ものすごくドライにアプローチしてるなってことで。それは、世代的にリアルタイムで聴いていたわけではないことも影響しているんだろうけど。

自分にとって、そういった洋楽的な大きなムーブメントって、ほとんどのものがリアルタイムではない、後追いだったという実感があって。でも、僕らの音楽やアートワークの遊び心を通じて、聴いている人にいろんな音楽を後追いでいいから発見していくきっかけになったらいいなって思いがあるんですよね。

WHITE ASH ニューアルバム「Ciao, Fake Kings」/ 2013年12月11日発売 / VAP / VPCC-81784
WHITE ASH「Ciao, Fake Kings」ジャケット
収録曲
  1. Casablanca
  2. Number Ninety Nine
  3. Zodiac Syndrome
  4. Vain Promises
  5. Long Time No See
  6. Bacardi Avenue
  7. Delayed
  8. Extreme
  9. Under The Lightless
  10. (Y)our Song
  11. Xmas Present For My Sweetheart
WHITE ASH(ほわいとあっしゅ)

のび太(Vo, G)、山さん(G)、彩(B)、剛(Dr)からなるロックバンド。2010年に音楽コンテスト「RO69JACK 2010」で優勝を果たし、同年夏に開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2010」に出演した。同年9月には初のミニアルバム「On The Other Hand, The Russia Is…」をリリース。以降も数々の作品を発表しつつ、「SUMMER SONIC 2011」「COUNTDOWN JAPAN 11/12」などのロックフェスに出演し、着実に人気を高めていった。2013年5月にはシングル「Velocity」でメジャーデビュー。同年8月にはテレビアニメ「ガッチャマン クラウズ」の主題歌「Crowds」をシングルリリースした。そして12月11日に全曲新曲からなる2ndフルアルバム「Ciao, Fake Kings」を発売。翌2014年2月からは全国9都市を回るライブツアー「WHITE ASH One Man Tour "Lilium"」をスタートさせる。