ナタリー PowerPush - WEAVER

“3人の音”にこだわった セルフプロデュース作「Handmade」

2012年は約2カ月にわたるライブハウスツアーを敢行し、たくさんの音楽的発見を得たWEAVER。その日、その場所でしか生まれないセッションや試行錯誤を経て、新たな音を鳴らすことにより貪欲になった3人から届けられるのがセルフプロデュースアルバム「Handmade」だ。

今回ナタリーでは、そんな最新アルバムの制作秘話、前回のライブハウスツアーが3人に与えた影響などをじっくり語ってもらった。さらにバンドの現在までの成果や今後の抱負も訊いた。

取材・文 / 川倉由起子

3人で作る音楽を見つめ直した2012年

──アルバム「Handmade」は、3人の音に対する挑戦やこだわりが詰まった1枚になりました。2012年は“3人だけで鳴らす音”を追求したライブハウスツアーも行いましたが、それも関係していますか?

杉本雄治(Vo, Piano) 2012年は3人で作る音楽をもう一度見つめ直して磨いていこうというコンセプトでやってきて。ライブハウスツアーはまさにそれを探す旅というか、今までにない形のセッションを取り入れたり、とにかく楽器で遊ぶことがたくさんできたんです。それによって今回の制作も今まで抽象的にしか描けなかったプレイのイメージが明確になったりして……やっぱりライブハウスツアーの影響は大きいと思いますね。

奥野翔太(B) 制作自体はツアー中もやってたんですけど、実は「3人だけでアルバムを1枚作りたいね」って話をしつつ、最初は「3人で作るもの」の意味がみんなつかめてないところがあって。例えばそれはピアノとベースとドラム以外の楽器を入れないということか? もしくは3人で作ることに意味があるから、その3人が必要とするなら他の楽器を入れてもいいのか? ……とか、そういう話し合いがなかなか進まなかったんです。結果的には後者になるんですが、ライブハウスツアーを進めていくうちにいろんなセッションの仕方を発見して、3人ならもっと自由にいろいろできるなっていう可能性が感じられて。だからツアー後に改めて曲作りもしたし、それ以前に作ってた曲もリアレンジしているんです。

河邉徹(Dr) 2人も言ったように、やっぱりツアーでいろんな形のセッションに挑戦して、その場の空気でいろんな演奏が怖がらずできるようになったのが大きくて。これまでだと「みんなやっぱり歌を聴きたいんだろうな」っていう気持ちがあったんですけど、今回は演奏で魅せたり音で伝えていくことにもどんどん挑戦していけた。アルバムの1曲目をインストにしたのも、音で、楽器で遊んでその楽しさを伝えることをライブでできたからなのかなって思います。

ツアーで“3人の出す音”の精度を上げた

──WEAVERのライブって歌のメッセージを届けることはもちろん、アウトロやイントロ、間奏の部分にもすごく工夫があって引き込まれるんですよね。前回のツアーはそういった音の部分の精度をより高められましたか?

2012年10月18日に東京・WWWで行われたワンマンライブ「Will!」の様子。

杉本 はい。初めて観に来た関係者の方に「WEAVERって実はこんなアグレッシブで音楽的にもすごく面白いことをやってるんだ」って言ってもらえて、その感想がすごくうれしかったんです。でも同時に自分たちの音楽的な部分はまだまだ外に伝わってないんだなっていうのを痛感して。だから前回のツアーではもっと“3人の出す音”の精度を上げて、その成長が次のアルバムで感じてもらえたらいいなと思っていました。

──先程河邉さんがおっしゃっていたインストのオープニング曲「Performance」からそれはすごく感じましたよ。

杉本 ありがとうございます。最初は「歌がないのに伝わるのかな?」っていう不安もあったんですけど、ライブでインストの演奏をすごく楽しんでる人がいるのを見て、音楽には音で伝えられるメッセージもたくさんあるなってことに改めて気付いて。2曲目「Shall we dance」も途中からどんどん音が増えていくというアイデアが、ライブでのループマシーンを使ったセッションから生まれていたり。ツアーで自信を得たことが、アルバムに生かされた部分も多いですね。

自分が好きと思えることをちゃんとやる

──「Shall we dance」の詞はどんなイメージで書いたんですか?

河邉 奥野からもらった曲自体がすごく明るかったので、ライブで歌って、その場にいる人たちが幸せな気持ちを共有できる曲になればいいなと思って。実は最初に書いたものと今の歌詞は全然違うんですが、みんなの話し合いの中で「今をもっと歌ったもの」というか、今の自分たちの気持ちをストレートに歌詞にしたほうがいいんじゃない?って話になって。この曲に限らず今回のアルバムは全体的にそういうテンションで書いた感じはありますね。

──なぜ今そういうテンションになったんでしょう?

河邉 自分たちが今考えてることや思ってることは、言葉にすると主観的なものになったりしてよくないんじゃないかって感覚がこれまではあったんです。でも今回みたいな3人だけで作ったアルバムなら、そういうものも胸を張って出せるんじゃないかと思って。もし誰かに「私はそう思わない」って言われても、それも受け止めた上で「でも僕はこう思うんだよ」って言える自信があるなって。

──なるほど。

河邉 やっぱり僕らのやってることって答えがないですし、僕らがカッコ悪いと思うことがみんなに受け入れられたり、その逆もあったりして。でも自分が好きと思えることをちゃんとやるのが大事というか。今までは表現するのに勇気が必要だったことも今ならできるんじゃないかって気がしてるんです。

杉本 この曲はそういう意味でアルバムのキーになると思うんですが、結局迷ってても答えは出ないし、僕たちは伝えたいメッセージや意思を自信を持って提示し続けるしかないんじゃないかなって。ネガティブな意味ではなく、もしそこに共感できない人がいても自分たちが嘘をつかずにその意思を提示し続けたらいつか伝わることもあるだろうし。だから、まずはやっぱりそこが核にないとダメなんだなっていうのを再確認させてくれた曲ですね。

ニューアルバム「Handmade」 / 2013年1月16日発売 / A-Sketch
初回限定盤[CD+DVD] / 3300円 / AZZS-14
通常盤[CD] / 2800円 / AZCS-1022
CD収録曲
  1. Performance
  2. Shall we dance
  3. 風の船 ~Bug's ship~
  4. Reach out
  5. blue bird
  6. アーティスト
  7. 君がいた夏の空
  8. ふたりは雪のように
  9. 偽善者の声
  10. Free will
  11. The sun and clouds
初回限定盤DVD収録内容
  1. Hard to say I love you(MTV Unplugged ライブ)
  2. つよがりバンビ(MTV Unplugged ライブ)
  3. 管制塔(MTV Unplugged ライブ)
  4. トキドキセカイ(MTV Unplugged ライブ)
  5. 僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~(MTV Unplugged ライブ)
  6. WEAVERの2012年に行われたライブハウスツアー、レコーディングなどの活動に密着したドキュメンタリー映像
WEAVER (うぃーばー)

杉本雄治(Vo, Piano)、奥野翔太(B)、河邉徹(Dr)の3人からなる神戸出身のスリーピースピアノバンド。2004年に高校の同級生同士で結成され、2007年に現在の編成に。メンバーの卓越した演奏テクニックと、ピアノの音色が印象的なメロディアスな楽曲を特徴とする。2009年10月に配信限定シングル「白朝夢」でメジャーデビューを果たし、デビュー翌日にはflumpoolの日本武道館公演でフロントアクトを務める。2010年2月にメジャー1stミニアルバム「Tapestry」を、同年8月に亀田誠治をサウンドプロデューサーに迎え、au LISMO CMソング「僕らの永遠~何度生まれ変わっても手を繋ぎたいだけの愛だから~」などを収録したアルバム「新世界創造記」をリリースする。その後もコンスタントにリリースとライブを重ね、2011年8月に杉本のピアノ独奏を含むアルバム「ジュビレーション」を発表する。2012年3~5月にメンバー3人だけで全国各地を回るライブハウスツアー「WEAVER Live House TOUR 2012『Piano Trio Philosophy~do YOU ride on No.66~』」を敢行し成功に収めた。2013年1月にセルフプロデュースアルバム「Handmade」を発表。