いい歌はテンポを遅くすると違う情景が見えてくる
──モンパチの皆さんは「1106」を選んでいます。
キヨサク WANIMAといえば自分の中ではこの曲、というのがありつつ、自分も歌いたいという純粋な気持ちもあって。カバーしてモンパチ色にすると考えたときに、ゆっくりめなアプローチはすんなりイメージできていました。そうすることでメロディもより引き立つし、歌詞の意味もより噛み締められるようなものになるし。いい歌ってテンポを遅くするともっと違う情景が見えてくると思うので、そこに対して迷いはなかったです。新しいアレンジ、アプローチなんだけど、その楽曲がもともと持っている空気感や情景をよりイメージしやすくなったと思うし、このカバーを聴いてWANIMAの「1106」に入っていく人がいても面白いし。「原曲もいいけど、このアレンジもいい」と思ってもらえたら本望ですね。
高里 WANIMAの原曲はストレートに歌う感じですけど、今回のカバーはヘッドフォンで聴いたらめちゃくちゃ気持ちいい、空間を感じられる音になっていると思うんですよね。その世界観をいい感じに出せたのかなと思うので、そこに注目しながら楽しんでもらいたいです。
──こうしてお互いの曲を演奏することによって、改めて発見できた相手の魅力もあったのではないでしょうか?
KENTA 「愛彌々」をセッションしながら、キヨサクさんとサッシさんの持っているミュージシャンとしての実力を近くで見られたのは刺激的でした。モンパチの強みは聴く人それぞれ生活のリズムや生まれ育った環境が違ったとしても、歌の情景が浮かぶところ。どこか懐かしい感じが真っ先によみがえると思うんです。モンパチのサウンドには島育ちの方々が出す独特のグルーヴがあるので、そこが懐かしさにもつながっていて、そういうところも僕はすごく魅力だなと思うし、ほかのバンドやミュージシャンの中には珍しい……といったらちょっと上からに聞こえますけど、本当に特殊だなと思います。僕も同じく島育ちなのでそこはずっと追いかけてきたところでもあるなと、今回改めて感じました。
──ツアーだとかフェスやイベントで共演はしていたものの、それ以上に音楽抜きのプライベートでの付き合いをここまで積み重ねてきたからこその強い信頼関係もありますし。
FUJI しかも、それが嘘くさくないですよね。
KENTA それがなかったらできてないです。
キヨサク お互いに好いてもらっているという両思い感もあれば、あとはリスペクトもあるし。この関係性じゃなかったら、もしかしたら1曲ぐらいはどうにかして作れるかもしれないけど、何曲かまとまった作品を作ることは難しいと思う。
KENTA お互いのスケジュールもある中で1年では完成していないですね(笑)。
キヨサク アイデアのキャッチボールもテンポよくできなかっただろうし。今までの関係性があって信頼があるから、任せるところは任せられるし。
余白を作るMONGOL800、余白を埋めるWANIMA
──では、モンパチのお二人が再発見したWANIMAの魅力はどういったところでしょう?
高里 音楽的にいうと、妥協しないところ。なんでも1回では終わらせずに突き詰めていくところはすごいなと尊敬できるし、コーラスワークもめちゃくちゃ細かいところまで提案してきて、本当にすげえなと思ました。でも、何よりも感覚的に近いものがあることに気付けたのが一番大きいかな。さっき、タイム感がどうのこうの言ってたけど、それを合わせられるのはもともと持っていたからだし、一緒に楽しくできるのは根本的に同じところにいたからだろうな。すごくやりやすかったですし、めちゃくちゃ勉強になりましたね。
キヨサク タイム感でいうと、俺らはわりと余白を作るほうで、WANIMAは余白を埋めるほう。そこが重なると1曲になったときにパズルが完成するんです。役割がうまいことバラけていて、それぞれの個性も立っているんだけど、一緒になったときにこういう合致の仕方があるんだってことも知れた。モンパチはこれまでいろんな人とコラボしてきたけど、あえて色が違う人たちとやっていて、お互いの色をどう出し合うかみたいなことにこだわっていたんです。今回のモンパチ×WANIMAは色もほぼ一緒でいる場所も近いんだけど、できあがったものはみんなの想像を超えているはず。なので、お客さんの反応が素直に楽しみですね。
──8月にはスプリットツアーも控えています。
キヨサク この作品を作ったら、おのずとライブもやりたくなるし、かといって普通に対バン形式というのも違うし。
高里 せっかくだし、面白いことをしたいですね。
FUJI 中身に関しては、これから作っていくところです。
KO-SHIN ギターのライブアレンジもこれから考えます。
キヨサク 普通のことだけはしたくないねってことだけは、みんな共通認識として持っているので。
KENTA このスプリットは歴史に残る1枚だと思いますし、僕の中でも財産になる1枚ができたので、それを反映させたライブにしたいです。
ツアー情報
MONGOL800×WANIMA -愛彌々- TOUR 2022
- 2022年8月15日(月)大阪府 オリックス劇場
- 2022年8月17日(水)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2022年8月18日(木)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
- 2022年8月23日(火)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2022年9月11日(日)沖縄県 沖縄コンベンションセンター
プロフィール
MONGOL800(モンゴルハッピャク)
1998年夏にキヨサク(Vo, B)と高里悟(Dr)によって結成された、沖縄県出身で同県在住のバンド。通称モンパチ。自然体の言葉や平和を願うメッセージが込められた楽曲が共感を呼び、幅広い世代から支持を得ている。作品のリリースやツアーの開催、大型フェスへの出演などの勢力的な活動のかたわら、世代やジャンルを超えたアーティストへの楽曲提供やコラボレーションも行っている。また2009年より沖縄にて主催フェスを開催している。2022年6月にはWANIMAとのスプリット音源「愛彌々」をリリースした。
WANIMA(ワニマ)
熊本出身のKENTA(Vo, B)、KO-SHIN(G, Cho)を中心に2010年初夏に結成されたロックバンド。2012年12月に同じく熊本出身のFUJI(Dr, Cho)が加入し、現在の編成となる。2014年にPIZZA OF DEATHとマネジメント契約。同年10月に同レーベルより1stミニアルバム「Can Not Behave!!」をリリースした。2015年11月に初のフルアルバム「Are You Coming?」を発表。2017年5月にシングル「Gotta Go!!」をunBORDEからリリースし、同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出演を果たした。2018年1月にメジャー1stアルバム「Everybody!!」を発表。同年8月には同作のレコ発ツアーファイナルとして埼玉・メットライフドーム(現ベルーナドーム)での2DAYS公演を成功させた。2020年9月にミニアルバム「Cheddar Flavor」、2021年4月にシングル「Chilly Chili Sauce」、8月にシングル「Chopped Grill Chicken」の3部作を発表。2022年6月にMONGOL800とのスプリット音源「愛彌々」をリリースした。