「Walk with FAN supported by FAM」第3回|グソクムズにとってのファンとは?

株式会社Nagisaが運営するファンクラブ開設 / 運営プラットフォーム・FAMの協力のもと、さまざまなアーティストに話を聞き、ファンとの関係性やファンの存在が創作活動にどのように生かされているのかを聞く連載企画「Walk with FAN supported by FAM」。第3回は東京・吉祥寺を中心に活動する4人組バンド・グソクムズから、たなかえいぞを(Vo, G)と堀部祐介(B)をゲストに招いた。

昨年4月発表のアルバム「ハロー!グッドモーニング!」でメジャーデビューを果たしたグソクムズ。環境や活動の規模が変化する中、彼らはファンとどのように向き合い、その存在から何を受け取っているのだろう? 4月2日にリリースされる新曲「春の歌」や、井上園子とYONA YONA WEEKENDERSをゲストに迎えるツーマン企画「イイGライダー」の話題と合わせてじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 石井佑来撮影 / Goku Noguchi

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グソクムズ インタビュー

「みんながいいと感じるものを作れてるんだ」

──今回のインタビューでは、グソクムズにとって“ファン”とはどのような存在か、そしてその存在がバンドにどのような影響をもたらしているのかを中心にお聞きしたいと思います。グソクムズは、昨年の4月にアルバム「ハロー!グッドモーニング!」でメジャーデビューされてからちょうど1年が経ちますが、メジャーという環境に身を移してから変化はありましたか?

堀部祐介(B) 動きの速さだったり関わってくれる方の人数だったりは全然違うので、そこはいろんな学びがありますね。でも“自分がいいと思うものを、いいと思う形にしていく”という本質はそんなに変わってないと思います。そこにプラスアルファで課題が加わったりとか、そういうことはありますけど。

たなかえいぞを(Vo, G) 活動の進め方は今までとけっこう違うと思います。「このアルバムのためにこのツアーを組んで……」と1年後、2年後のことまで考えてスケジュールを組むというのは今までやったことがなかったので、そこはすごく新鮮です。

左からたなかえいぞを(Vo, G)、堀部祐介(B)。

左からたなかえいぞを(Vo, G)、堀部祐介(B)。

──すき家のCMソングや象印のコンセプトムービーといったタイアップも増えましたが、それによってこれまでのファンとはまた違う層の人にもグソクムズの楽曲が届いている、という実感はありますか?

たなか SNSを見てるとけっこうあるんだろうなと思います。

堀部 でも一番反響が大きいのはアコムかな(※アコムのCM「妹の結婚式」編にたなかが出演している)。

たなか それはそうだね(笑)。

堀部 意外とみんな、CMに出てる人の顔を見てるんだなという。

──けっこうな頻度で流れてますもんね。

たなか めっちゃ流れてますね。1日1回は目にするぐらい(笑)。いやでも、ありがたいですね。あのCMをきっかけにグソクムズにたどり着いてくれた人もたくさんいると思うので。

──メジャーデビュー以前と以降でファン層は変化しましたか?

堀部 どうなんでしょうね。最初の頃は「若いのに懐かしい感じの音楽をやってていいね」と評価されることが多くて。僕らが影響を受けた60年代、70年代の音楽をリアルタイムで聴かれていた世代のファンもけっこういたんですよ。そこから徐々に年齢層が広がっていき、最近は親子3世代でライブを観に来てくださる方とかもいて。特定の層の方が爆発的に増えたというより、層が広がっているような実感があります。

たなか 広がってるよね。中学生とかも来てくれますもん。ちょっと前に福岡でライブをやったときに、マッシュルーム頭でメガネをかけた“ザ・サブカル”みたいな中学生がいて。それがめちゃくちゃうれしかった。こういう子が友達に「グソクムズって知ってる?」って広めてくれるんだろうなと思って(笑)。初めてライブハウスに来ました!みたいな感じで、あれはうれしかったなあ。

堀部 やっぱりいろんな年齢層の方が観に来てくれるとうれしいよね。「みんながいいと感じるものを作れてるんだ」と思える。「いろんな世代の人が観に来てくれるようなバンドになれたんだな」って。

たなか 普遍的なものを作ることを目指してるからね。

身内だけでお客さんを呼ぶバンドではなくなった

──世代関係なく、雰囲気で言うとどんなファンが多いと思いますか?

たなか 表現が難しいけど……テキーラパーティとかはやらなそうな人たち(笑)。

堀部 あはははは。

たなか やっぱり文化系の方が多いですね。でも、たまにフロアですごい踊ってる人とかもいて。そういうのを見ると「自由でいいなあ」と思います。

堀部 あとは、普段から自分で音楽をディグってる人たちが多いよね。

たなか それはそうかもね。

堀部 でも、それもここ1年で変わってきているような気がしていて。例えばラジオで曲を聴いたのをきっかけにライブに来てくれる人とか、CMを観て僕らのことを知ってくれた人とか、日常的に音楽をディグっている方とはまた別の層にも徐々に届くようになってきたのかなとは感じています。

左からたなかえいぞを(Vo, G)、堀部祐介(B)。

左からたなかえいぞを(Vo, G)、堀部祐介(B)。

──これまでの活動の中で「ファンが増えたな」と感じたタイミングはいろいろあったと思いますが、お二人の中で特にインパクトがあったのはどのタイミングでしょうか?

たなか 「すべからく通り雨」をリリースしたとき(2021年)とか、CDショップ大賞にノミネートされたとき(2022年)とか、いろいろありますけど、去年出た「CIRCLE」はけっこう大きかったなと感じていて(参照:くるりがトリでキラーチューン連発!絶好天気に恵まれた「CIRCLE」初日)。福岡でワンマンをやったときに「『CIRCLE』で僕らのことを観てくれた人?」って聞いたら、半分ぐらいの方が手を挙げてくれたんですよ。それを見て、やっぱりめちゃくちゃいいイベントなんだなと思った。

堀部 「CIRCLE」の出演者は本当に素晴らしいアーティストばかりだからね。

たなか そういう方たちとうまくマッチできたのもうれしかったよね。

堀部 自分はやっぱり、「泡沫の音」を「POPEYE」で取り上げていただいたとき(2019年)が一番印象に残ってるかなあ。それまで誰かが僕らの存在を広めてくれるなんてことまったくなかったし、今の状態を作ったスタートダッシュみたいな出来事だったので。

──確かに「POPEYE」で取り上げられたのを機に一躍注目され始めた印象があります。たなかさん的にも、やはりあれは大きい出来事だったんでしょうか?

たなか そうですね。あれ以降ライブのお客さんも増えましたからね。30人ぐらいしか入らないライブスペースで友達のバンドとツーマンをやったときに、まったく知らない方がお客さんとして来ていて。それまではお客さんも身内ばっかりだったから、そんな経験なかったんですよ。話を聞いたら埼玉とか山梨からわざわざ観に来てくれていて。「もう身内だけでお客さんを呼ぶバンドではなくなったのかも」とそのとき初めて思いました。

たなかえいぞを(Vo, G)

たなかえいぞを(Vo, G)

堀部祐介(B)

堀部祐介(B)

コピー動画を通じた交流

──普段活動していて、どういったときにファンの存在を感じますか?

たなか 僕は東海ラジオの「SESSIONS 929」でパーソナリティをやっていたので、番組に送られてくるメールで特にファンの存在を感じましたね。番組を続けるにつれてお便りの数が明らかに増えていったし、直接コミュニケーションを取れるというのはめちゃくちゃ大きかったです。すごくいい触れ合いだなって。

堀部 やっぱり一番ファンの存在を感じるのはライブだけど、個人的な話で言うと、僕のベースラインを譜面に起こしてる人がいて。もともと自分も高校生の頃とかは、譜面を買ったり動画を観たりして、好きな曲をコピーしていたけど、いつの間にかコピーされる側になったんだと気付かされました。全然知らない人がそういうことをしてくれているのを見ると「ちゃんと届いてるんだな」と思えてうれしいですね。

たなか それと近いところだと、僕はグソクムズをコピーしている人を観るのがめっちゃ好きです。前にライブでお客さんと話したときに「来週、サークルの演奏会でグソクムズをコピーするんですよ」と言われて、1カ月後ぐらいにネットを漁ってたらその子の動画が出てきたんですよ。しかも「この前グソクムズのライブで『今度コピーするんです』って言ったら応援してくれて」みたいなことを話してて! 「たなかさーん! おーい!」って手を振ってたから、画面越しに僕も「おーい」ってやりました(笑)。

左からたなかえいぞを(Vo, G)、堀部祐介(B)。

左からたなかえいぞを(Vo, G)、堀部祐介(B)。

──実際に本人に届くパターンもあるんですね!

たなか 僕も「こういう交流の仕方があるのか」と思いました(笑)。

堀部 コピーしてもらえるのってうれしいからね。

たなか がんばって演奏してくれてるのを観るとうれしくなるよね。自分たちの演奏は客観的に聴けないから、余計に誰かが演奏してるのを観たくなるというのもあるかもしれない。

──SNSでも、いわゆるエゴサーチとかはするんですか?

たなか 人並みにはしますよ。「グソクムズ」で検索したりするぐらいですけど。

堀部 僕もそれぐらいですね。新曲を出したときとかライブの終演後とかはやっぱり気になるのでしちゃいます。

たなか 本当は来てくれた人に直接聞きたいんですけどね。「今日どうでした? 楽しかったですか?」って(笑)。

──ライブで言うと、特にどういった瞬間にオーディエンスとのつながりを感じますか?

堀部 自分たちの想定とオーディエンスの反応が噛み合ったときに一番感じるかもしれません。セットリストを組む時点でお客さんのことを考えているというか、「ここで盛り上げて、ここで落ちつけて」という流れを想定しながらセトリを組んでいるんですね。僕は、その想定通りの反応が来るとうれしくなるし、「ここで盛り上げよう」と思ったところで実際に盛り上がると「そうそう! そうだよね!」という気持ちになる。「自分がいいと思っているものを、みんなもいいと思ってくれたんだ」って。

たなか 「あるサンセット」や「こんな夜には」、あと最近出した「夢に飛びのって」あたりはすごく盛り上がってくれるからうれしいよね。このへんはライブ活動が増えてから作った曲だからライブ向きだというのもあると思うけど。

堀部 あと、僕は見てなかったんですけど、以前バラードを演奏しているときに泣いているお客さんがいたみたいで。ライブで涙を流すって、なかなかないじゃないですか。そういう、自分たちが想像していなかったレベルの反応があるのも「そこまで深く刺せたんだ」と思えてうれしいです。