MIRI(我儘ラキア)×R-指定(Creepy Nuts、梅田サイファー) | フリースタイルで戦った2人が語るバトルシーン、ラッパーとしてのプライド

目が怖すぎてファンが離れる

──MCバトルに出てみて、MIRIさんはアイドルとしての変化はありましたか?

MIRI “バトルに出る自分”と“アイドルとしての自分”は切り離してたんですよね。ラッパーはやっぱりリアルが大事。でもアイドルはファンに夢を見せて、幸せを与えるものだから、そもそも存在としてその2つは矛盾してるんです。だからバトルに出ると、ヒップホップ側からしたら「あいつはリアルじゃない」、アイドルファンからは「戦ったりするMIRIちゃんは見たくない」って言われて。

R-指定 難しいなー。

MIRI それから「罵ってください」というファンも現れたり(笑)。

MIRI

R-指定 その角度のファンも出てくるか(笑)。

MIRI だから途中から「バトル前後はアイドルの仕事を入れないで」とスタッフにお願いしてましたね。

R-指定 モードが変わるから?

MIRI そうです。バトルの直後にアイドルの仕事があったときは、ファンの人から「どうしたの?」って心配されるぐらいモードが変わってたみたいで、特典会でも自分の列に誰も並んでくれなくて、「これじゃもうアイドルじゃないじゃん!」って。

R-指定 はー、そんなことになるんや。

──いわゆる“推し”や“おまいつ”も並ばないぐらいだったってことですね。

MIRI いつも並んでくれるファンが別の子に並んでましたからね(笑)。あとでファンにそのときのことを聞いたら「目が怖すぎて並べなかった」って。それで「これはダメだ」と思って、バトルの前後3日ぐらいは空けてもらうようにしたんですよね。

──それぐらいファイターモードになっていたと。

MIRI それに、攻撃的になることでしか自分を守れなかったと思うんです。ちょっとでもアイドルっぽさとかかわいさ、女性の部分を出したら負けると思ってて。気付いたらめちゃくちゃ攻撃的で、性格悪くなってたみたいで。

R-指定 俺もバトルに出てた頃はホントに嫌なことを言う、水を差す、元も子もないことを言うやつだったってDJ 松永に言われますからね(笑)。俺の場合は、そういう攻撃性とかシニカルな部分を楽曲に落とし込むようになって、いろんな視点が増えていったり、性格が丸くなっていった部分はあります。

バトルで味わう快感

──2人の話を聞いて、MCバトルはなんと恐ろしいカルチャーなんだと震えております(笑)。

MIRI でもバトルって、強い中毒性ありません?

R-指定 ありますね。

MIRI 「SCHOOL OF RAP」(DARTHREIDERとHIDADDY主催の20歳以下を対象としたMCバトル)に出たとき、相手から下品な言葉を投げかけられたんですけど、それを全部言い返せたときにめちゃくちゃ気持ちよくて(笑)。それでまた次の大会を探して……って、一時期は本当にバトル中毒みたいになってました。

R-指定

R-指定 “口撃”の仕方、言いくるめ方、刺さる言葉……ひと言で戦局がガラッと変わる瞬間を知るとなかなか止められなくなる。楽曲や表現じゃなくて、即興の言葉で状況が一瞬で変わって、お客さんが沸く瞬間の快感は、かなりすごいものがあるんですよね。それを超える“沸かす快感”を楽曲でも味わうことができるようになったから、俺はそれがバトルから離れるきっかけにもなりましたけど、バトルで味わうあの快感は1回味わったら夢中になりますよ。DJ 松永も「DMC」(DJの世界大会)で同じように戦う経験をしてきたから、その感触はわかってくれて、「もう二度とバトルやコンテストは出たくないけど、あのヒリヒリした状況から一瞬の自分の才覚で会場が沸くカタルシスはたまに味わいたい」って話はしますね。

──性格は悪くなるし、中毒になるし、快感は体に記憶として残るしじゃ、もはやバトルは禁止したほうがいいんじゃないかという気も(笑)。

MIRI バトルって一瞬でヒーロー、ヒロインになれる場所なんですよね。初めてマイクを握ったとしても、優勝する可能性はベテランとも同じようにあるし、優勝すればひと晩でスターダムに駆け上がれるんです。アイドルは下積みや地道な活動が必要だから、そういう勝ち上がり方は難しいし、一気に話題になることができるっていう面白さは、バトルならではですよね。

我儘ラキアに懸けた最後のチャンス

──アイドルの話が出たのでその部分について伺いたいのですが、MIRIさんは2019年7月に我儘ラキアに加入されましたね(参照:我儘ラキアに元RHYMEBERRYのMIRI加入「期待に胸が膨らんでいます」)。

MIRI 2019年4月にRHYMEBERRYが解散したときに、全部辞めようと思ったんですよね。アイドルだけじゃなくて、ラップも止めて人前に出ることは止めようと。私は中学1年からアイドルの世界にいたので、普通の学校生活を送ったことがないんですよ。友だちと休日に遊ぶこともなかったし、文化祭も体育祭もあんまり出たことがなくて。

R-指定 そうなんや。

MIRI だからここで“普通”を味わってみたかったんですよね。大学には通ってたんで、普通の大学生になろうって。そんなときに対バンで知り合った我儘ラキアの星熊南巫から「そんなにラップできるアイドルはいないからもったいない。我儘ラキアに入ってよ」と声をかけてもらったんです。

左からMIRI、R-指定。

──ただ、RHYMEBERRYの活動拠点は東京でしたが、我儘ラキアは大阪ですよね。

MIRI だから大学も辞めて大阪に行こうと即決したんです。これが最後のチャンスかもしれないからって。

R-指定 えー!

──単位はちゃんと取ってたんですか? ここに6単位しか取ってなくて除籍になった人がいますけど。

R-指定 違います。8単位です。

──ほとんど変わらない(笑)。

MIRI 私も留年は確定してました(笑)。それで大学に留年してまで通うんだったら、大阪に飛んだほうがいいんじゃないかなって。

R-指定 飛ぶって(笑)。

MIRI 親にも当然反対されました。「せめて大学は卒業してくれ」と言われたんですけど、「もう決めたから。大阪の家も決まったから」と伝えて。

R-指定 ……親御さんの気持ちになったら震え上がりましたよ(笑)。

MIRI もう即行動タイプなんで。

R-指定 でも熱い話ですね。そうやって声をかけてくれる人がいて、そこで人生がガラッと変わるっていうのは。