ナタリー PowerPush - ボカロ小説座談会
ボカロ小説刊行記念インタビュー
今度はマンガを書いてみたいなあ
──3人ともボカロを題材にしていますが、それぞれまったく異なった世界観、テイストの作品になってますよね。
YM まあそれは人間の違いだよね。
デP 楽曲だって同じですよ。みんな同じボカロツールを使ってるし、DAWも音源も似たような機材なわけじゃないですか。でもPによって全然違う曲ができる。
cosMo@暴走P みんなボカロ出発だけど、作っているものはだいぶ違うよね。
デP まあでも、楽曲の場合ドラムがあってベースがあって歌があるっていう縛りが無意識のうちにあるけど、小説は何も縛りがないんですよ。なので「コンピCDを作るので曲を作ってください」って言われる場合よりも「小説を書いてください」って言われたほうが、やれることの幅が広いんじゃないかなあとは思うよね。
YM うん。自由度が非常に高いよね。
デP だってコスモさんだったらさ、「早口にしなきゃいけない」みたいなのがあるわけじゃない。
cosMo@暴走P そうね。別に小説は早口じゃなくてもいいからね(笑)。
YM やっぱり音楽だと今まで築いてきたものがあるから、どうしてもそれに縛られがちになる。そういう意味で文章のほうが自由だなと感じました。
cosMo@暴走P 僕はともかくデPさんのも、YMさんのも、ストーリー的にはほぼオリジナルじゃないですか。
YM ボーカロイドって名詞も出てこないしね。
デP 音楽みたいな細かいジャンル分けもないしね。音楽のときって「今回はトランスにしよう」みたいなのがあったりするじゃないですか。
cosMo@暴走P 確かに、小説はジャンル分けが緩いかもしんないね。
──例えば、またもう1本書いてって言われたらやってみたいと思いますか?
デP 次は曲に関係なく普通に小説を書いてみたいですね。ボカロPを引退してラノベ作家として多彩な才能を世に見せつけていきたいです(笑)。今度はYMさんも原作だけじゃなくて自分で書くんすよね?(笑)
YM 今作っている曲でシリーズものも考えているので、まとめたいなっていうのはありますね。小説ももちろんですし、自分でイラスト描くのが好きなので、マンガなんかもやってみたいなあと思っていたり。よくノートにマンガ描いてクラス中に回してましたし(笑)。
デP そういう次元で描いたことあるって言っちゃっていいの? じゃ、オレむっちゃ小説書いたことあるよ。
YM 原稿用紙とかGペンとか使ったことないけどね!
デP じゃあ、ないんじゃないか!!
YM そうかなあ……(笑)。じゃあ、どれくらいから書いたことあるって言えるの?
デP 24ページくらいのをpixivにアップして、1万閲覧とかになったらかな。
YM なにその自分ルール!
デP 曲だってそうじゃないですか。アップしても10くらいしか閲覧されなかったら発表したうちに入らない。フィードバックが返ってきて、それが自分に届くまでが創作じゃないですか。
YM いや、僕だって100ページノートに4コママンガいっぱい書いて学年中からフィードバックありましたよ。最終的に手元に帰って来なかったけど。
Amazonのレビューは怖いので見ないです
──曲の投稿だとコメントが返ってきますが、小説はどうでしょう。
デP やっぱAmazonのレビューじゃないですか? ボカロ小説のあらゆるレビュー読んでますよ。
YM 怖いよー。
cosMo@暴走P 僕もAmazonのレビューは怖いのでTwitterとか生放送とかで聞いてみようかなと思ってます。
デP 今の時代、2ちゃん見るなっていうわけにもいかないし、そういうのを完全に切り捨てて生きていくのは無理な時代なんですよ。だったらいっそのこと受け入れようという広い心を身につけようかなと。
cosMo@暴走P デPすごいな……。
デP すごいでしょ。意識高い系だから。
YM オレ無理だわ。
デP いや、言っとくけどオレ心超弱いよ(笑)。
──でもネガティブなレビューばかりじゃないですよね。
デP 1つのネガティブレビューには1000のポジティブレビューと同じくらいの攻撃力がありますから。
YM そうそう。動画投稿して称賛コメントで埋まっていても。1つ「耳痛え」とか書いてあると……。
デP 1つ「デPマンネリ気味だな」とかあると……。
YM うわあああああああああ。
cosMo@暴走P わかるわああ。
デP ものを作る人たちは繊細なんです!
cosMo@暴走P もうAmazonは見ない。
デP じゃ、感想は一迅社まで直接送ってください!
──最後に読者に向けてメッセージをそれぞれお願いします。
デP えっと、既存のボカロ小説やラノベとは少々違ったものができたという自負はあります。CDも付いてますからぜひお手に取って見てください。
YM マジメだな……。
デP あと、モテたいです。
cosMo@暴走P 僕は正直な話、今まであまり文章を書いたこともないし、小説もそんなに読んだことがなかったんです。そうすると僕みたいなアレな人間になっちゃうので、皆さんはぜひこれをきっかけに活字に興味を持っていただけたら非常に幸いでございます。
YM 「十面相」の小説ということで、手に取ってくださる方の大半は楽曲を知ってくれている方だと思うんですが、歌詞には具体的なことを書いていないので、皆さんいろんな解釈があると思います。今回の小説も「十面相」における1つのストーリーとして楽しんでいただければと思います。小説としても充実した内容に仕上がったと思うのでぜひ手に取って読んでみてください。
YM(わいえむ)
2009年頃から動画サイトにマッシュアップや手描きMADなどを投稿し始め、現在はボカロPとして主にGUMIを使ったオリジナル曲を発表。2010年に公開した楽曲「ハンコウセイメイ」で初めて殿堂入りを果たし、翌年発表した「十面相」が100万再生突破の人気曲となった。2012年にはEXIT TUNESからアルバム「センセーショナル大革命」をリリース。2013年8月には自身の代表曲「十面相」のノベライズに原作者として携わった。
デッドボールP(でっどぼーるぴー)
2007年から動画サイトで自作曲を発表しているボカロP。過激すぎるエロティックな歌詞で知られ、投稿動画に「直球というよりデッドボール」というコメントが書き込まれたことがアーティスト名の由来となっている。2009年にはネットで発表した楽曲を無修正バージョンで収録したアルバム「EXIT TUNES PRESENTS THE VERY BEST OF デッドボールP loves 初音ミク」をリリース。その後もPSPゲーム「初音ミク -Project DIVA-」への楽曲提供や、さまざまな企画アルバムへの参加など精力的に活動を展開。2013年8月には処女作となる小説「俺のボカロが妹になりたそうにこちらを見ている」を刊行した。
cosMo@暴走P(こすもぼうそうぴー)
30曲以上が殿堂入りを果たしている人気ボカロP。まくしたてるように歌うポップソング「初音ミクの暴走」や、まったく息継ぎができないほど歌詞が詰め込まれたボカロならではの曲「初音ミクの消失-DEAD END-」など、テンポが速くて早口な曲が多い。2010年にはベストアルバム「初音ミクの消失」を発表し、大ヒットを記録した。2012年7月には自らが原作を担当した小説「初音ミクの消失 小説版」を刊行。この小説は好評を受けて翌年文庫化された。2012年8月には2ndアルバム「星ノ少女ト幻奏楽土」を発表し、オリコンウイークリーチャート9位を獲得。