結成18年目のvistlipの変わったところ / 変わらないところ
──アルバムタイトル「THESEUS」の語源は「テセウスの船」ですよね? vistlipは結成から18年が経ち、さまざまな変化を経て現在に至っていて。“テセウスの船”にちなんで、自分たちの“変わった部分”と“変わらない部分”についてはどう自覚していますか?
智 まさに、それを表現することがアルバムの裏テーマなんです。vistlipの環境は大きく変わってきて今があるし、それは「THESEUS」にもすごくつながっていて。変わらない部分というのは、僕もぜひメンバーに聞きたいですね。
Yuh そうだな……さっきも言ったんですが、そもそも僕らはミクスチャーが芯にあるんですよ。アルバム、シングルにかかわらず、どの作品にもその要素は入っているし、自分の曲が使われようが、使われなかろうが、そこはずっと変わらないです。
──精神的な部分、バンドの活動に対するスタンスについてはどうですか?
Yuh 独立してからは、活動や発言を含めて、背負うものが大きくなったと感じてますね。ずるい言い方なんだけど、以前は会社のせいにできたところもあったんですよ。今はそうじゃないし、全部が自分たちの責任なので。そこは大きく変わったところですね。
──なるほど。海さんはどうでしょう?
海 変わらない部分か……難しいな。まず思い浮かんだのは初期衝動かな。バンドを組んだときの「カッコいい、これをやろうぜ」的なノリは今も失ってないと思います。音楽性に関しては、確かに最初はメンバー同士で「ミクスチャーをやろう」と言ったんですけど、バンドのコンセプトをそこまではっきり決めてたわけではなくて。バンドによっては「和っぽい」とか「ゴシック」とかイメージが明確な場合もあるけど、vistlipは雑食のままなんですよね。時代の変化もあるし、音楽性の幅も広がってはいるんですけど、「初めからいろいろやってますよ」という根本の部分は貫けているんじゃないかな。関係者の方やファンの子たちにも「変わらないでいてくれる」「ずっとこうだよね」と言ってもらうことが多いです。
──音楽的に雑食であれば、メンバーそれぞれのやり方も出しやすいですよね。
海 そうですね。うちのメンバーは趣味がけっこうバラバラだし、瑠伊が言ってたように、そのときのブームもあるので。ただ、vistlipとして表現したときの「これ、いいよね」という感覚は近いというか、似てるんですよ。そこがブレないのも1つの強みかな。
──瑠伊さん、Tohyaさんはいかがですか? バンドの変わらない部分について。
瑠伊 ざっくり言っちゃうと、5人の仲のよさですかね。今、海が言ったように個人が好きな音楽のジャンルは一見バラバラであるものの、見ている方向性は一緒というか。ライブのときもそうだし、プライベートで一緒にいる時間も心地いいし、だからこれだけ続けられているんだろうなと。もちろん音楽に対して意見のぶつかり合いもないわけではないんだけど、根本の感覚が近い。だからバンドとしてのまとまりが出るんだと思います。
Tohya 同時に不気味なアンバランスさと言ったらアレですけど、「この人たち、どうやってバランスを取ってるんだろう?」と感じることはあると思いますね。表に出てないかもしれないけど、いつ壊れてもおかしくないような感じが、ずっとあるんですよ。ヒヤヒヤするような場面、「大丈夫か?」と思われることがあっても、最後はなんとかなってしまう。ギリギリでやってるからこそ生まれてくる緊張感もあるだろうし、常に新鮮なものを見せられているのかなと。安定しすぎたり、整いすぎちゃったらvistlipではなくなってしまうかも。
──アレンジやサウンドメイクに関しては、Tohyaさんが担っている部分が大きいのかなという印象もありますが。
Tohya いや、違うと思ってます。そこも各々の“自分が自分が”というのが合わさって、形になっているというか。それぞれのフレーズが集まることでvistlipになっていると思うし、智が歌えばまとまる。
──智さん自身、自分の歌がバンドのイメージにつながっているという感覚もある?
智 そうですね。ちょっと変な答えになっちゃうんだけど、歌の滑舌の悪さとか(笑)。海やTohyaにも「なんて歌ってんの?」とか、歌詞と音源を照らし合わせて「この歌詞、歌ってないでしょ?」って言われてたし。前に、MUCCの逹瑯さんに「歌を伝えろよ」と怒られたことがあるんですよ。でも、自分としては声をただ音として出すのが楽しくて。例えば日本語を英語のように聞かせるのも好きなんですよね。1回、人が聞き取りやすいように歌ったこともあるんだけど、そうすると言葉数も減っちゃうし、自分のスタイルとしてはもったいないと思ってしまって。
海 今回のアルバム、ひさしぶりに「マジで何を歌ってるのかわかんねえな」というところがありましたね(笑)。歌詞のチェックをしてるときに、マネージャーから「歌詞が違ってる気がします」という連絡があって。音源と照らし合わせて、僕も「確かに違うな」と思ったんですけど……。
智 こっちにもLINE来たよ。あれはさすがにショックだった(笑)。
海 その後、瑠伊に「こういう感じで歌ってるんじゃない?」と言われて「あ、確かに」って。歌詞は間違ってなかったです(笑)。
智 そもそも発音もヘンだからね(笑)。曲によっては「ボーカルを前に出したくない」とワガママを言ったりするんだけど、そうやって遊ばせてもらってるのもずっと変わらないし、それを含めて「智が歌えばvistlipになる」ということなのかなと。
2025年の動きはすごく精力的に
──vistlipの2025年は、アルバム「THESEUS」のリリースから始まります。そろそろ結成20周年も視野に入ってきますが……。
智 確かに。ヤバいっすね。
──そのことも含めて、2025年はどんな年にしたいと思っていますか?
智 すごく精力的になると思いますね、現時点では。
Yuh 今までやらなかったことをさらにやっていこうかなと。
智 「今さら?」っていうこともあるね。前の事務所のときは、音楽業界とのつながりがほとんどなくて。環境が変わって、今はマーヴェリック(MUCC、DEZERTなどが所属するレーベル)にいろいろと力添えしてもらってるんですけど、例えば「対バンライブをやりたい」というこちらの要望に対して、すぐに「あのバンドに聞いてみましょうか?」と提案が返ってくる。この1年半くらいは対バンやイベントがすごく増えたし、来年もそういうことをやっていきたいんですよね。
海 あと、僕らにはとっつきづらいイメージも若干あるみたいで。なんとなくの先入観で「私、好きじゃない」と聴いてもらえないこともあると思いますが、これからリスナーのすそ野を広げることもやっていきたいですね。
公演情報
vistlip ONE MAN TOUR[Ship of Theseus]
- 2025年1月11日(土)愛知県 ElectricLadyLand
- 2025年1月12日(日)大阪府 BIGCAT
- 2025年1月18日(土)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
プロフィール
vistlip(ヴィストリップ)
2007年7月7日に結成された、智(Vo)、Yuh(G)、海(G)、瑠伊(B)、Tohya(Dr)の5人からなるヴィジュアル系バンド。バンド名は「vista(視覚)」と「lip(聴覚)」を合わせた造語。2008年4月に1stミニアルバム「Revolver」をリリースし、2009年7月にはフランス・パリで行われた「Japan Expo 2009」に出演し初の海外ライブを行う。以降もリリースとライブを重ね、結成15周年を迎えた2002年3月にアルバム「M.E.T.A.」を発表した。2023年に在籍していた事務所から独立。2025年1月に2年10カ月ぶりとなるアルバム「THESEUS」をリリース。同月に東名阪ツアー「vistlip ONE MAN TOUR[Ship of Theseus]」を行う。