ルーツにないものをあえて取り入れた
──不穏な語りが終わると、「Moon Ride」「Take me Take out」とホーンサウンドが印象的なナンバーが続きます。ホーンは村上基さん(在日ファンク)、東條あづささん、武嶋聡さんの3人が担当していますね。
ホーンは自分の中にルーツとしてない楽器だから挑戦でしたね。鍵盤で作ったサウンドをホーンで再現してもらったので、皆さん演奏が大変だったんじゃないかなと思います。
──ビッケさんの曲はこれまでジャズやファンクが多かった印象だったので、オールディーズなアレンジは新鮮でした。なぜこのようなアレンジに?
ディレクターにプリンスを聴かせてもらって、自分なりに解釈した形がこういう感じだったんですよね。母親の影響で洋楽はたくさん聴いていたんですけど、母の趣味じゃなかったプリンスとThe Beatlesは全然聴いてこなかったんです。やっぱり自分でやっていて正解として出せるアレンジって、小さい頃に聴いていたものに寄ることが多くて、「Moon Ride」や「Take me Take out」みたいなアレンジは自分ではピンと来てないんです。でも今は新しいことに挑戦したい気持ちが強いので、あえてルーツにないものを取り入れたという感じです。まだリリースしてないのでリスナーの皆さんがどう思うのかはわからないですけど、チーム内では好評でこういうのもアリなんだなと思いました。
──歌詞の内容も2つで共通していますよね。嫌なことを忘れて今この瞬間を楽しもうという。
そうですね。サウンドと同じように歌詞もノリで持っていく感じです。
日本語と英語の使い分け方
──ビッケさんの曲と言えば「Slave of Love」もそうですが、ミュージカルのように大胆に楽曲を展開させていくイメージがあったんですが、今回はそういう曲が少ないですよね。4曲目の「Want You Back」なんかはループ感がクセになる1曲で。
言われてみればそうかもしれないです。歌詞は今まで通り女の子に逃げられちゃう情けない男の話なんですけど(笑)。
──この曲もそうですけど、今回歌詞で英語の比率が高いですよね。ビッケさんは以前のインタビューで、最初に英語で弾き語りをして、歌詞を日本語に変えたり変えなかったりするとおっしゃっていましたが、歌詞を日本語にするかしないかの基準ってあるんですか?
リズムを聴かせたい曲は英語、メロディを聴かせたい曲は日本語の比率が高くなるかな。今回はメロディに対して日本語が必要ないと思う曲が多かったんです。
──「Stray Cat」もほぼ英語の歌詞ですよね。ビートが強くて、これまでの曲だと「アシカダンス」に雰囲気が似てるなと思いました。
確かにシンセの感じとかが近いかもしれないです。この曲は影のように目立たずにいたい、でもこのままじゃダメだというジレンマを書いた曲で、怪しげな雰囲気を出したかったんですよね。イメージとしては夜の渋谷の街を徘徊してるような感じで。
バラードも、ヒップホップも、弾き語りも
──「さよならに来ました」はシンプルなバラードです。ビッケさんの作品にはバラードは欠かせませんよね。
原曲は8年くらい前からありました。僕のパーソナルな部分が強く出ている曲で、歌詞は今作に入れるために書き換えて、実体験に近いことを歌っています。
──続く「Postman」もきれいな言葉でつづられたメロディアスな1曲です。
「Postman」の歌詞は作詞……つまりは詞を作るという行為を追求した1曲なんです。作詞芸術という意味で本当に気に入っています。昔からストーリーテリングを用いた曲はあったんですけど、これは自分が伝えたい感情も込めつつ、物語性もあって、なおかつ目で見ても美しい歌詞になった自負があります。この曲の歌詞には手紙を出した男、それを届けるポストマン、そしてそれを受け取る男の3人が出てくるんですけど、主人公が好きなのはポストマンなのか、手紙を送る相手なのか、それが人によって捉え方が違うと思うんです。ストーリーが多岐にわたるように見えるところもポイントです。“Love”っていう世界で一番ポピュラーで愛されているであろう単語を印象的に歌えたところも気に入っています。
──バラード2曲からの流れをグッと切り替えるのは続く「Broken」ですね。
「Broken」は僕のルーツにあるヒップホップの要素を取り入れた1曲です。高校のとき、洋楽邦楽問わずヒップホップをめちゃくちゃ聴いていたんです。国内のアーティストだとZeebraとか童子-Tとか。前作に入っていた「Natural Woman」も実はヒップホップのルールで作詞していて、かなり韻を踏んでるんですね。メロディがあるからああいう曲になったけど。
──「幸せのアーチ」はこのアルバム唯一の全編日本語歌詞のナンバーです。
こういうメロは日本語を呼ぶんですよね。最初に英語で歌詞を作ったんですけど、「絶対日本語にしなきゃ」って思ったんです。この曲はなんとなく自分でアレンジは終わってたんですけど、最後のブラッシュアップで横山裕章さんに追加でアレンジを頼みました。王道のJ-POPアレンジをしてほしいっていう発注をしました。メロディがJ-POPにぴったりだと思ったので、“J-POPっぽい”じゃなくてJ-POPど真ん中のアレンジにしたかったんです。
──「Like a Movie」は全編英語歌詞のストレートなラブソングですね。
日本語で歌ったらベッタベタなラブソングです。どうしても弾き語りの曲を1曲入れたかったんですよ。着飾らないスケルトンの状態のビッケブランカを。いろんなアプローチをしてきたけど、その大元になる部分……本当に1人だけでやっている状態のものもみんなに聴いてもらいたかった。そういう思いでこの曲は入れました。
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作品と一緒に成長するということ
- ビッケブランカ「FEARLESS」
- 2017年7月5日発売 / avex trax
-
[CD+DVD]
3780円 / AVCD-93697/B -
[CD]
3024円 / AVCD-93698
- CD収録曲
-
- FEARLESS
- Moon Ride
- Take me Take out
- Want You Back
- Stray Cat
- さよならに来ました
- Postman
- Broken
- 幸せのアーチ
- Like a Movie
- Slave of Love
- THUNDERBOLT
- DVD収録内容
-
Slave of Love TOUR 2017 at Shibuya WWW
- ココラムウ
- Alright!
- 追うBOY
- 秋の香り
- Your Days
- アシカダンス
- Slave of Love
- ファビュラス
- ビッケブランカ「FEARLESS TOUR 2017」
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- 2017年9月14日(木)愛知県 DIAMOND HALL
- 2017年9月15日(金)宮城県 仙台MACANA
- 2017年9月17日(日)北海道 札幌KRAPS HALL
- 2017年9月29日(金)大阪府 BananaHall
- 2017年9月30日(土)福岡県 福岡INSA
- 2017年10月14日(土)東京都 赤坂BLITZ
- ビッケブランカ
- 愛知県出身の男性シンガーソングライター。高校卒業と同時に上京しピアノを習得した後、本名の山池純矢としてソロ活動を開始する。2012年にビッケブランカに改名。その後はライブを中心に活動を続け、美麗なファルセットボイスとピアノが紡ぎ出すポップチューンを武器に各地のイベントなどに出場し話題を集めている。2014年7月に配信シングル「追うBOY」をリリース。同年10月に1stミニアルバム「ツベルクリン」を発売した。2015年8月には2ndミニアルバム「GOOD LUCK」を発表。2016年10月にミニアルバム「Slave of Love」でavex traxよりメジャーデビューを果たす。デビュー作収録の「Natural Woman」はメタボリックのスムージー「enNatural」、「Slave of Love」はGoogle Play MusicのCMソングに採用された。2017年1月にワンマンツアー、5月にツーマンツアーを行い、各公演のチケットはソールドアウトを記録する。7月に1stフルアルバム「FEARLESS」をリリースし、8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」といった大型フェスに出演。9月からワンマンツアー「FEARLESS TOUR 2017」を行う。