UNISON SQUARE GARDEN「いけないfool logic」インタビュー|新曲は「とにかくハッピー全振り」 (3/3)

一番純度の高いライブができた「Ninth Peel」ツアー

──そしてシングルが出たあと、10月25日にはライブ映像作品「UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2023 "Ninth Peel" at TOKYO GARDEN THEATER 2023.07.01」がリリースされます。こちらはどんな作品になりましたか。

斎藤 昨日、映像を見ながら音をミックスしていたんですけど、いいライブでしたね。「Ninth Peel」のツアーは、ちゃんと各地に行く意味をすごく感じられるものだったと思っていて。安定して活力のあるライブ作りができたし、自分たちの中でも、同じセットリストを20本近く続けるということに対してちゃんと集中力を切らさずに、飽きずに、全公演楽しく終えられた手応えがすごくありました。

田淵 キャリアを重ねたバンドができる、一番純度の高いライブができて、満足感が高いツアーでしたね。セットリストの振り幅もそうだし、構成も年々とにかく無駄がないようにしていったら、だいぶ理想的なところまで来たし、自分が思っている「こういうのが見れたら次も行くよね」というものが、手堅くできるようになってきて、それはキャリアのなせる技だと思います。キャリアが長くなると“お決まり”みたいになってきて、ライブのやり方がつまんなくなることもあるから、そうならないようにと思ってずっと思考実験を続けてきたんですよ。自分の計画に沿ってここまで来れてると思うし、毎回セットリストを作ることを楽しめているのも、ここまでがんばって来たキャリアのなせる技だと思います。手前味噌ですが。

──今回のセットリストもよかったですね。田淵さん的にはどのあたりがキモになってますか?

田淵 最初の頃はセットリストを組むときの基本の「き」として、尊敬する人からのアドバイスもあって、起承転結の4ブロックで構成することを自分の中の肌感覚としてつかんで、ずっとその通りにやってきたんですけど。最近はそれの「崩し」というか、「起承転結の“承”が長くない?」とか、「“承”がふざけすぎじゃない?」とか(笑)、そのへんの外し具合を楽しんでいます。例えば1つ前のツアー(「UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2022『fiesta in chaos』」)はあえて3ブロックにしてみたり、そういうことができる自信があるのが楽しいです。それもキャリアのなせる技だと思うし、例えば“承”を長くしても、曲がよくないとだらけたブロックになるし、つなぎがよくないとダメだし。しかも今回はアルバムのツアーなので、「アルバムのツアーに来ているんだ」と実感する瞬間を定期的に入れるとか、観てる人の気持ちを考えるのは、ずっとライブをやり続けてきたからこそできることではあるので。最近は、そういうことを考えてセットリストを作るのが楽しいですね。

──今回の“承”はすごかったです。特に「WINDOW開ける」から「Phantom Joke」までの怒涛の流れは、息つく暇もないとはこういうことかと。

田淵 そしていよいよ、しゃべらなくてもよくなってきたし。

──そうそう。定着しましたよね。MCをしないバンドとして。

田淵 全然流行らなかったですけど。

──先導しようと思っていたんですか(笑)。しゃべらないムーブメント。

田淵 今も思ってるけど、変わらなかったから、ふてくされてるところもある(笑)。でもまあ、僕らはそれを望んで選び取っているので。曲がよくなればMCもしなくなるだろうと思ってずっとやってきたので、本当になくなったということに、少なくとも僕は気持ちよさを感じてます。これもキャリアのなせるわざですね。

──斎藤さんは、「本当は俺、しゃべりたいよ」とか思ってないですか。

斎藤 ないです(笑)。めちゃめちゃカッコよく言うと、演奏している姿がメッセージになってきてるから。そうすると、より集中して演奏すること、歌うこと、ライブを作ることに気持ちを注げるので、すごくうまく回ってるなと思います。MCをしないことで、それ以外の精度を上げていくことができているので、いいなと思ってます。

UNISON SQUARE GARDEN

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ツアーに行く意味は、その土地のその場所に演奏しに行くこと

──あと1つだけ、気になったことというか、すごいなと思ったことを言っていいですか? 最後の“結”のブロックに入ってから初めてバンドのロゴがステージの背景に登場して、ラスト1曲前の「カオスが極まる」で初めてレーザービームを使って、オーラスの「恋する惑星」で初めてド派手な電飾が登場するという(笑)。たった1曲のために。普通はもっとたくさん使うじゃないですか。あの使い方がすごくぜいたくというか、ある意味ストイックというか。あの演出はメンバーの意志なんですか、それともスタッフの提案ですか?

田淵 いい質問ですね。舞台セットはスタッフの提案ですね。1時間半のライブがあるとして、折り返しあたりで背景が変わるとか、あったほうがお客さんは楽しいよねという理屈はわかるので、そこに関しては「いいですよ」と答えて、それに対して演出プランが出てくるんですけど、どこでどれぐらいの塩梅の演出が入ってくるのが一番効果的なのか、一番ウケるのか。「恋する惑星」に関しては……あの演出で使った電飾にはいろんなパーツがあるから、ライブ中に「Ninth Peel」の曲をやるたびに電飾が1つずつ点いていく、みたいなアイデアもあったんです。でもわりとストイックに進んでいくライブだから、背景の画変わりはそんなにいらないかも、という話をして。4ブロック目の「スペースシャトル・ララバイ」が始まるときにたぶん「待ってました!」っていう感じになるから、そこで初めてメインロゴが降りてくると「私たち、今アルバムのツアーに来ているんだ」という感じが出るだろうと。それだけでもいいと思ったんだけど、だったら、たくさんある電飾のパーツは、最後に全部出てくると面白いんじゃない?と。

──面白かったですね。ここで出す?って、ちょっと笑っちゃいました。

田淵 どう出すと一番ウケるか?を考えたときに、そうなったということです。しかもあれ、1つずつ人力で動かしてるんですよ。そこはアナログなんだ、と思った(笑)。

斎藤 そこだけ毎回リハーサルもして。会場ごとに。

田淵 もともと「恋する惑星」は、絶対にリードだとか、ライブで勝てる曲だとか、そう思って仕立て上げた曲ではなかったんですよね。それが、あれよあれよとMVも作ることになり「大事にしたほうがいいでしょう」という立ち位置の曲になって。「とはいえ、作ってるときにはそんな感覚はなかったしな」と考えて、セットリストを作るときに一か八かで「これが最後に来たときにバカ上がりする空気が作れたら意外と成功かな?」と思って。電飾を全部点けて、みんなで爆笑しながら終わりましょう、ということができればいいかなと思いながら最後に置いたところはあったんです。ガーデンシアターの映像を観ても、予想以上にいい空気になってましたね。

──そして、次のツアーがもう始まります。名付けて「"Ninth Peel" next」。これは「Ninth Peel」ツアーの続編ということですか。

田淵 1周目のツアーではアルバムの曲を全部やっていなかったので、まだ演奏していない曲をやるツアーです。セットリストも決まりました。アルバムの曲で構成されることは一緒なので、「Ninth Peel」のツアーではあるんですけど、“けど……”という感じですね。そのほかの曲は、わりとガラリと変わるので、普通の全国ツアーの中の1本というふうに見えるようにもなってます。

斎藤 春夏にやった「Ninth Peel」ツアーのムードを引き継ぎながらだとは思うんですけど、おそらく今回のシングルの曲もやると思うので、それが「Ninth Peel」の曲に混ざったときにどうなるのか、自分自身も楽しみながらやっていきたいなと。あとは、ひさしぶりに行ける場所がけっこうあって、鹿児島、沖縄、滋賀、高知、秋田とかかな。基本的にツアーをする意味って、その土地のその場所に演奏しに行くことだと思ってるから、それを実感しながら回っていけたらいいなと思ってますね。

ライブ情報

UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2023 "Ninth Peel" next

  • 2023年10月31日(火)神奈川県 CLUB CITTA'
  • 2023年11月2日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2023年11月3日(金・祝)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2023年11月6日(月)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2023年11月7日(火)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2023年11月9日(木)北海道 Zepp Sapporo
  • 2023年11月12日(日)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2023年11月13日(月)秋田県 Club SWINDLE
  • 2023年11月16日(木)大阪府 なんばHatch
  • 2023年11月17日(金)大阪府 なんばHatch
  • 2023年11月20日(月)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2023年11月21日(火)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2023年11月26日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2023年11月27日(月)高知県 高知 X-pt.
  • 2023年11月29日(水)香川県 高松festhalle
  • 2023年12月5日(火)滋賀県 滋賀U★STONE
  • 2023年12月6日(水)大阪府 GORILLA HALL OSAKA
  • 2023年12月11日(月)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2023年12月16日(土)沖縄県 ミュージックタウン音市場

プロフィール

UNISON SQUARE GARDEN(ユニゾンスクエアガーデン)

斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなる3ピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビュー。2015年7月に結成10周年アルバム「DUGOUT ACCIDENT」をリリースし、初の東京・日本武道館単独公演を成功させた。2019年7月にはカップリングベストアルバムとトリビュートアルバムを同時リリース。さらに大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場で結成15周年ライブ「プログラム15th」を開催した。2023年4月に9枚目のオリジナルアルバム「Ninth Peel」をリリース。9月27日にテレビアニメ「鴨乃橋ロンの禁断推理」オープニング主題歌のシングル「いけない fool logic」をリリースし、10月より全国ツアー「TOUR 2023 "Ninth Peel" next」を開催する。

衣装協力
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