スターダストプロモーションの女性アイドルセクション・スタープラネットに所属するアイドルグループukkaが、ニューシングル「T」をリリースした。
今回のシングルのテーマとして設けられたのは「東京の儚さ」。大都市・東京が持つ華やかさ、そこに潜む孤独感などをさまざまな女性像に沿って描いた3曲が収められている。ビジュアルも含め、大人びた表現で新境地に挑む7人の姿が注目ポイントだ。
音楽ナタリーではこのシングルの発売に合わせてメンバーにインタビュー。それぞれ異なる個性を放つ収録曲3曲に対する印象やそれぞれの解釈、現体制になって約1年が経過したグループの近況、今年結成10周年を迎えることへの思いなどを語ってもらった。
取材・文 / 近藤隼人撮影 / 藤木裕之
ちょっと背伸びして歌うukka
──ニューシングル「T」は「東京の儚さ」が作品全体のテーマで、1月に先行配信された「TOUTOI」は都会的でクールな空気感、大人びた歌やダンスが新鮮な楽曲です。今までのukkaにはなかったタイプの楽曲ですし、レコーディングや振り入れでかなり苦労したのではないでしょうか。
芹澤もあ そうですね。裏声と地声の使い分けが難しいなと思いました。
結城りな リズムの取り方が今までと違うし、発音の面でもこの楽曲の女性像に合わせることに気を付けました。
宮沢友 私は最初に聴いたとき、すごくキャッチーで耳に残りやすい曲だと感じました。思わず口ずさんじゃう曲だなって。「尊い」という言葉はファンの方がよく使ってくれるイメージがありますが、ローマ字になっているのがカッコいいです。
村星りじゅ 前作(2024年9月発表の「yummy!!」)とは打って変わって大人びたカッコよさを感じられるんですけど、ちょっと背伸びした歌い方をしていて。私の場合は、22歳の等身大の大人っぽさではなく、もっと年上のお姉さんをイメージして声を作ることを意識しました。あと、すごく難しかったのが英語の発音! 「where you i am please tell me」や「treat treat treat」というフレーズがあるんですけど、「ここはtの発音を弱く」とか、英語の発音についてスタッフさんから細かいディレクションをいただいて勉強になりました。英語の発音もしっかりできてこその大人なんだなって(笑)。
茜空 振付については全身でしなやかに踊るイメージで、手先だけじゃなく上半身を使ってウェーブを作ったり、ダンスの全体像を見たときにきれいに感じられると思います。サビのダンスも難しいんですけど、キャッチーな振付になっていて。歌詞に合わせた手の振りとか、ukkaらしくもありつつ新しい境地に入っているなと感じました。
葵るり 「そうやって周りは私を批判してコメントするけど」という歌詞の部分では、真ん中で歌っているもあちゃんを、ほかのメンバーが指差すんですよ。歌詞が振りとリンクしていて素敵だなと思いました。
仮歌を聴いて「ヤバい!」
──現在15歳でグループ内最年少の若菜さんにとって、「TOUTOI」の大人びた世界観を歌や踊りで表現するのは大変なのでは?
若菜こはる この曲の主人公は私よりもずっと大人の女性なので、仮歌を聴いたときは「ヤバい!」と思いました(笑)。私の知らないこともいろいろと経験している大人の女性のイメージで。今の自分の年齢でそういう女性を表現するために、歌のニュアンスを意識しました。2番の「ご機嫌なんて自分でとるもんだし」では滑らかな発音になるように気を付けたり。
宮沢 曲の主人公は芸能界じゃなくて、一般の企業で働いてる人のイメージなんですよ。どういう歌い方でこの曲を表現すればいいのか、レコーディングに向けて私もすごく考えました。
茜 私としては、この曲の主人公は社会人3年目くらいなのかなと想像しました。社会人として周りとのギャップを感じたり、転職したいなとちょっと考えたりする時期。自分に置き換えると、レッスン場でダンスをしているときに鏡を見て「果たして私はこれで合っているんだろうか」と思う気持ち……振りが合っているかという話じゃないですよ(笑)。
村星 わかるよ(笑)。
茜 自分はこのままで誰かの力になれるのかなって、悩んでしまいそうになる瞬間がときどきあって、そういう気持ちがサビの歌詞と重なります。
村星 私たちは小学生や中学生のときから活動しているわけですが、大人になっていくうちに、それまで気にしなくてよかったことも目に入ってきたりするんですよね。心がより敏感になってくる。それと同じような状況が「TOUTOI」の歌詞にも表れているなと思いました。「これじゃダメなのかな」「私ってこのグループに必要ないのかな」と落ち込んだことも正直あって。でも、日々生きていく中で「私はありのままでもいいんだ」と気付ける瞬間もある。曲が進むにつれて「自分のことを愛してもいいんだ」という意思や芯の強さが表現されていますし、そこが「TOUTOI」で伝えたいことなのかなと思います。共感ができる歌詞が多い曲ですね。
芹澤 私はグループに加入したとき、まだ小学生だったので本当に何も考えていなくて、とにかくほかのメンバーについていくことに必死でした。振りを覚えなきゃ、ダンスを間違えないようにしなきゃという思いでいっぱいだったんですけど、今はそれ以外にも考えることが増えてきて。アイドルも普通に働いている女性と同じ人間ですし、「TOUTOI」からは私も共感できるようなリアルな思いを感じることができます。歌詞がすごく現代的で新鮮ですけど、特に「今はリムってる 煙のように消え 全部幻」という歌詞は、いつも応援してくれているファンの方が急にいなくなったりする状況と重なりますし、「私は自分が好き でもたまに鼓動が乱れる」の部分も共感しますね。キラキラしているアイドルも、実はうまくいかずに悩んだりすることもあると思うので。
──ほかに、この曲の歌詞で共感したところはありますか?
結城 私は「流行の可愛い? 全部思い込み もう正解はない」という部分が心に響きました。私はあまり流行りに乗りたくないというポリシーがあって。自分が好きだと感じるものを好きでいたいし、流されるのが嫌なんですよ。たまにはファッションとか流行りに乗ったほうがいいのかなと思うこともあるんですけど、自分は自分のままでいいんだなと、「TOUTOI」の歌詞を読んで改めて思いました。
葵 私は「BeReal な自分を love yourself で生きてる方が素敵だもん」という歌詞がすごく好きです。おしゃれな写真を撮るためにお母さんと一緒にカフェに行ったり、SNS上では多少着飾った自分を見せてたりしてしまうけど、本来の自分を愛することが大切なんだなって。
宮沢 「ご機嫌なんて自分でとるもんだし」「不機嫌な顔なんて可愛くないよ」も共感できる歌詞だと思いました。曲の主人公がさまよっているような印象で、鏡に映った自分に対して言い聞かせている情景が浮かびます。私も、自分で自分を励まして気持ちを安定させることがありますし。
村星 「ご機嫌なんて自分でとるもんだし」「不機嫌な顔なんて可愛くないよ」の間で歌っている「treat treat treat」も共感ポイントだと思います。東京の人々は自分のことも他人のことも気にしなきゃいけない、忙しい日常を生きている中、自分にご褒美を与えることを忘れがちだと思うんですね。それは私にも当てはまるし、人の顔色を伺っていると自分の機嫌の取り方がわからなくなる。リズミカルに「treat treat treat」と歌っているけど、この歌詞では自分を甘やかすことの大切さを表現しているのかなと思いました。
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7人の東京に対するイメージは