音楽ナタリー PowerPush - 上杉周大×北海道日本ハムファイターズ

「ファイターズ讃歌」インタビュー3連戦!

栗山英樹監督

中田翔内野手

大野奨太捕手

上杉周大×栗山英樹

野球の神様に常に宿題を課されている

左から栗山英樹、上杉周大。

上杉 大野選手、中田選手にも聞いたことなんですけど、いかがですか、僕の「ファイターズ讃歌」?

栗山英樹 聴いていると「お前らがんばれよ!」「お前らわかってんだろうな?」って言われてる気がします(笑)。

上杉 あっ、それはすごいうれしいですっ! で、ですね、僕、東京ドームでの試合を含めて、これまでに5回球場で「ファイターズ讃歌」を歌わせてもらってるんですけど、そのときのファイターズの成績って4勝1敗なんですよ。

栗山 素晴らしいですね(笑)。

上杉 できればこの勝率を落としたくないな、と考えておりまして……。

栗山 ははははは(笑)。逆に僕らにしてみると、そういう方がいるとすごく安心できるんですよ。

上杉 そういうジンクスって気になるものですか?

栗山 例えば試合前から小雨が降っている日に先制したとしますよね。そういうとき監督や選手は「雨が強くならないでくれ」「中止にならないでくれ」って思うんです。勝っていた試合をフイにされるとその後の士気に関わるので。

栗山英樹

上杉 まさに運を天に任せるというか。

栗山 そうですね。で、もし試合が続いたら「野球の神様が応援してくれているのかな?」みたいなことは考えます。野球って自分たちにはまるでコントロールできないことが往々にして起きるものですから。完全に打ち取った当たりの打球が誰もいないフィールドに落ちたりすることもあるわけですし。野球の神様に常に宿題を課されている感覚はあるし、最後に勝負を決めるものはそういう存在の力なんだろうなっていう気はしています。だから「上杉さんが歌った日は勝率がいい」っていうお話も気になるんです。

──上杉さんはあまりジンクスは気にしない?

上杉 いや。僕らの場合は対相手チームではなくて、対お客さん。野球とは向き合う相手が違う仕事ではあるんですけど、それでも朝起きてからステージに上がるまでの流れみたいなものは気にはしてますね。なるべく普段通りに振る舞おうみたいなことは考えてます。

プロ野球監督のできるファンサービス

上杉 その向き合う相手についても伺いたいんですけど、お客さんの存在ってどこまで気にするものですか? 例えば選手交代のとき、人気の選手を起用するみたいなことってあるのかなって。

上杉周大

栗山 僕が尊敬している監督に、日本ハム草創期の球団社長でもあった三原(脩)さんがいるんですけど、三原さんって(元西鉄ライオンズ監督の)中西太さんの義理のお父さんなんですよね。で、中西さんが監督時代、初回に送りバントの指示を出したことがあって。それを観た三原さんは「監督に向いてないのかもしれない」と言ったらしいんですよ。

──まさに上杉さんの言うファン目線の話ですよね。まだ雌雄を決する段階ではない1回なんだからリスクを冒してでも派手に攻めたほうがお客さんは喜ぶだろう、と。

栗山 そうなんです。で、僕もやっぱりお客さんのことは気にしてはいます。今季であれば(引退を表明した)稲葉や(金子)誠を観たがっていることはわかっているつもりなんです。でもチームの最大の目標って勝つことなんですよね。

上杉 大野選手もそう言ってました。

栗山 ですよね。僕は監督である以上、その勝つための論理から外れた選手起用をするわけにもいかないし、論理から外れたことをして負けたら逆に球場を白けさせてしまう。だから勝てる上にお客さんが喜ぶ起用やプレイとは?ということは常に考えてますね。

上杉 サッカーの無観客試合みたいなものがプロ野球にもあったら、采配はもっとラクになります?

栗山英樹

栗山 いや。僕の現役時代のヤクルトの場合、ほとんど無観客みたいな試合もありましたけど(笑)、今のファイターズ戦には本当に大勢のお客さんが集まってくださっていて。その声援が選手の力になっている部分がすごく大きいので、逆に頭を悩ませると思います。昨日(9月27日)の10回裏の(中田)翔にしても大声援があったからテンションが上がったし、集中力も高まったんだと思ってますし。実は僕、100年後か200年後には、その場の気持ちの総量が音量のように計測できるようになるんじゃないかと思っているんですよ。ファンの皆さんの応援とか選手の勝ちたいという気持ちって、そのくらい確実に試合に作用するものなんです。だからもし無観客試合になったら、昨日の翔のような奇跡は起きなくなるはずですよ。

今、栗山英樹がしたいこと

上杉 そういえば監督って現役時代にCDを出されてますよね。

栗山 はい。音楽は元々すごく好きでしたし。僕らの時代はフォーク全盛で、松山千春さんや吉田拓郎さんは常にそばにいたっていう感じですし、あとさだまさしさんもそうですよね。

上杉 監督のデビュー曲(「好敵手」)ってさださんの作詞作曲ですもんね。

栗山 ええ。そうやって仲良くさせてもらう前から、まっさん(さだ)の曲に救われた経験が少なからずあったんです。プロに入ったばっかりで全然ダメだった頃に勇気付けられたりとか。だから今の選手が登場曲にこだわったりする気持ちってすごくわかりますよ。

上杉 やっぱり野球にとって音楽って必要なものですか?

栗山 例えばピッチャーが打ち込まれるときって、ものすごくリズムが悪くなってるんです。明らかにそれまでとはリズムが違ってしまっている。それからこれは誰もが言うことですけど、バッティングにおいて一番重要なものはタイミング、やっぱりリズムなんです。そうやってリズムに支配されているという意味では音楽とスポーツには非常に似通ったものがあるし、だからこそ音楽を聴くこと、音楽的な感性を養うことは重要なのかなとは思ってますね。

左から栗山英樹、上杉周大。

上杉 最後に、これは32歳の若造だからこそ教えていただきたいんですけど、監督のように長い野球人生を歩まれていながら、それでもなお高いモチベーションを保つ秘訣って何かおありになりますか?

栗山 その対象、上杉さんなら音楽に感謝し続けるのが一番大切なことだとは思ってます。僕の場合は子供の頃初めてプロ野球を観に行って「すごいなあ」と思った。その「すごい」世界で50歳を越えた今もユニフォームを着させてもらえてることを考えたら、モチベーションが湧いてくるんです。監督をしていると正直眠れない夜が続いたりはするんですけど、そういう勝負をさせてもらえていることも幸せなんだと思っていて。特に監督になってからは野球に対してしか情熱って湧かなくなってるんですよ。

上杉 プライベートでの欲求みたいなものは?

栗山 「○○が食べたい」「××がほしい」みたいな気持ちはホントになくて。「翔が100打点に乗ったか、よかったなあ」とか、そういうことにしか喜びを感じなくなってます。監督はチームに寄与することが仕事だから、その寄与できているっていうことが本当にうれしいんです。

ニューシングル「北海道日本ハムファイターズ 公式球団歌 ファイターズ讃歌」 / 2014年7月2日発売 / 1000円 / VAP / VPCC-82317
「北海道日本ハムファイターズ 公式球団歌 ファイターズ讃歌」
収録曲
  1. ファイターズ讃歌
  2. ファイターズ讃歌 THE TON-UP MOTORS Ver.
  3. ファイターズ讃歌(カラオケ)
  4. ファイターズ讃歌 THE TON-UP MOTORS Ver.(カラオケ)
上杉周大(ウエスギシュウタ)

1982年2月11日生まれ、北海道出身。2000年に北海道札幌市で結成されたソウルロックバンド・THE TON-UP MOTORSのボーカル。バラエティ番組「ブギウギ専務」(STV)で主役を務めて人気を博し、ラジオのパーソナリティやテレビCM出演など、幅広く活躍している。バンドとしても全国各地のライブハウスでの公演のほか、野外音楽イベントや学園祭などに多数出演。2013年12月発売のニューアルバム「THE TON-UP MOTORS」でバップよりメジャーデビューを果たした。さらに2014年には北海道日本ハムファイターズの応援歌「ファイターズ讃歌」の3代目ボーカリストに起用されるなど、ミュージシャンとしてもバンド活動のみならず、さまざまな世界で活動を展開している。

栗山英樹(クリヤマヒデキ)

1961年4月26日、東京都生まれ。創価高校、東京学芸大学を経て、1984年、ヤクルトスワローズ(現・東京ヤクルトスワローズ)に入団する。1988年には規定打席未満ながら.331の打率をマークし、翌1989年にはチームトップの犠打41を記録するなどの活躍後1990年に現役引退。以来野球解説者、大学教授などとして活動し、2011年、北海道日本ハムファイターズの監督に就任する。監督として初めてのシーズンとなった2012年、パ・リーグ優勝。クライマックスシリーズも無傷で突破し、日本シリーズに進出。また2014年シーズンもパ・リーグ3位としてオリックス・バファローズとのクライマックスシリーズ ファーストステージに臨んでいる。