ナタリー PowerPush - 打首獄門同好会会長 × KenKen × shyou(韻シスト)
通じ合う男たちの酒呑みトーク
それを歌うには、俺はまだたこ焼き歴が浅い
──では会長さんより今回のアルバム「一生同好会します」について聞かせてください。
会長 もう2人がいろいろ言ってくれたから何もないけど、結局俺らはライブバンドなので、曲作りもレコーディングも、生で演奏できないアレンジは避けてるんですよ。ライブ空間の疑似体験を詰め込んだものがCDだと思ってるから、まずは音源を聴いてもらって、会場に行きたいなって思ってほしいということだけです。この曲はライブでこんなだろうな、って好き勝手想像してもらいたい。俺らはその妄想以上のものをライブで見せるのが責務だから。
KenKen うんうん。自分が聴きたい曲って自分でしか作れないし、結局はそのクオリティなんだよね。何かに寄っていくのは一番自分を失う行為だし、このオリジナリティを追求していてほしいよ。
会長 いい意味での自己満足だけどね。
KenKen でもそれしかないんだよ。気に入ってくれた人がライブに来てくれればいいわけだしさ。
shyou たださ、言うてることとか思ってることが全部そのまま歌詞になるってすごい芸術性だよ。スイッチを入れて作るんじゃなくて、普段から話したり感じた感情がそのまま曲になるんでしょ。
会長 そうだね。この前もKenKenが「だから貯金が貯まらない」って言ったのよ。あ、コレ歌詞にしようってピンと来たもんね。
KenKen そこに引っかかるんだ!?って感じだよ(笑)。ポイントが面白いよね。しかもさ、曲がめちゃくちゃよくできてて、ぬかりないんだよ。
会長 でもこだわりもあってね。今回のアルバムの「マイクロウェーブアタック」は電子レンジの歌なんだけど、あれは「たこやきー!!」って言いたかっただけなの。でもそれを歌うには、俺はまだたこ焼き歴が浅いなと。
KenKen そこのストイックさがすごい(笑)。
shyou なるほど。「ヤキトリズム」もさ、歌詞でマイナーな部位がすっごい出てくるでしょ? あれも勉強したんだ?
会長 早朝に市場にいって、自分で串に刺して焼くのが日課だったからね。
shyou ずっとそのスタイルなん?
会長 初期はマジメな歌も作ろうとしたけど……。
shyou マジメな歌!(笑)
会長 でもこのほうが面白がられるし、俺もラクなんだよね。今はもう、マジメに書くなんてテレくさくてできない。
KenKen だけど、コミックバンドではないんだよね。これをカッコよくやるのってすごく難しいと思うんだよ。どのミュージシャンに聴かせてもファンになるし、音楽やってる人のほうが刺激されるところはあるんじゃない? このスピード感は。
「いや、せせりは譲らん!」
shyou 確かに自分でいろいろ音源聴いてみるけど、ありきたりやったら何も引っかからないんよ。でも打首は聴いた瞬間「アレ?」って思った。
KenKen 個性が音源にしっかり出てて、ちゃんとパッケージされてるバンドが減ったんだよね。でも打首と韻シストにはそれがあって、0から1を作り上げてるから大好き。メンバーのバランスもどっちも最高じゃん?
shyou そうそう、打首のほかの2人の話も聞いてみたい。どうやって曲作ってるのかすげえ興味ある。
KenKen 会長を理解してるんだよね。しかも会長もすげえ優しいんだよ。女の子とバンド組む大変さって、けっこうあるじゃん?
会長 まあ、気を遣いますわな。
KenKen でしょ? 打首のワンマンに出させてもらったときにリハから見てたんだけど、やっぱり会長はキツくは言わないのよ。「もっとこうのほうがいいかもよ?」みたいな。いいヤツだなーって(笑)。
会長 そのへんのやり取り見られるの、一番恥ずかしい!(笑)
KenKen でもさ、いいミュージシャンって絶対いいヤツなんだよね。これはマストだよ。
shyou 歌詞についてメンバーから文句言われたりしないの?
会長 あるよ、「ヤキトリズム」でも「私は砂肝がいい」とか。
shyou そこ!?(笑)
会長 こっちも「いや、せせりは譲らん!」って。
KenKen 面白れーなー(笑)。
演奏はガチだし、そこしか取り柄がないんだよ。
shyou 俺らはヒップホップをバンドで始めたから、ずっとヒップホップシーンからは別物として扱われてたのよ。上の人からも、コアなヒップホップファンからも、悪い意味で「これは違うね」って。そういう難しい時期があったから聞きたいんだけど、打首はヘヴィメタファンから何か言われたりしなかった?
KenKen なるほど、確かに気になるね。
shyou ミュージシャンシップ的に言えば「見てほしいのはそこじゃない」ってことあるやん? シーンの立ち位置が難しかったり。
KenKen でもさ、メタル好きの知り合いに打首を聴かせても「これヤバいわ!」ってわかってくれたのよ。それって結局、打首にはスキルがちゃんとあるからなんだよね。韻シストも実力は間違いないから今があるわけで、伝わる人には伝わるんだと思う。
会長 演奏はガチだし、そこしか取り柄がないんだよ。でもいわゆる下北系とか、メロコア系とか、そういう界隈に属しづらいっていうのはある。
KenKen まあ、ある種最強だよね。超パンクな外人のお客さんとかもいるじゃん? まさか焼き鳥について歌ってるとは思ってないだろうけど(笑)。
会長 あと、俺も韻シストを聴いたとき衝撃だったのよ。本当に感銘を受けて、どうしたらこのグルーヴ感が生まれるんだろう?って不思議だった。それでちょっと挑戦してみようと思って作ったのが、ボーナストラックで入ってる「塔」ね。いやあ、苦労しましたね。
KenKen わはははは!(笑)
会長 同じようなビートにして譜面通り弾いてるつもりなのに、聴いてみるとぜんっぜん違う!!
- 打首獄門同好会ニューアルバム「一生同好会します」 / 2013年10月15日発売 / 1890円 / LD&K Records / 246-LDKCD
- 打首獄門同好会ニューアルバム「一生同好会します」
収録曲
- 音楽依存症生活
- 88
- ヤキトリズム
- A.G.A.
- マイクロウェーブアタック
- ちょい獄おやじ
- How do you like the pie?
韻シスト 5TH Album「HIPSTORY」Release Party
2013年11月30日(土)東京都 代官山LOOP
2013年12月14日(土)大阪府 なんばHatch
打首獄門同好会(うちくびごくもんどうこうかい)
2004年9月に大澤敦史(Vo, G)、河本あす香(Dr)、高山明(B)の3人で結成。2006年3月の高山脱退を受け、同年11月にjunko(B)が加入し現在のメンバーが揃う。2009年5月には初の全国流通作品「庶民派爆弾さん」を発表。本格的なハードロック / メタルサウンドに生活感あふれる歌詞を乗せた“生活密着型ラウドロック”が注目を集め、幅広い支持を獲得した。同年7月に初の「FUJI ROCK FESTIVAL」出演を果たし、以降は数々の大型フェスやライブイベントで個性を発揮している。2013年9月には北海道・真駒内スタジアムにて開催された「水曜どうでしょう祭 UNITE 2013」に出演し一躍話題となった。同年10月にニューアルバム「一生同好会します」をリリース。
KenKen(けんけん)
1985年生まれ、東京都出身のベーシスト。ロックバンド「RIZE」、「Dragon Ash」、「WAGDUG FUTURISTIC UNITY」、「the day」、「獄門島一家」のベーシストとして活躍。そのカリスマ的な存在感と抜群のベースプレイは、音楽シーンの中で一目置かれている。ベース教則アプリ「KenKenが教えるベースギター #1」のリリースや、資生堂uno CM音楽を担当するなど、LIVE以外での音楽活動も多く、ゲーマーとして週刊 ファミ通で連載コラムページをもつなど、音楽業界のみならず多彩なセンスで幅広く活躍している。
韻シスト(いんしすと)
1998年5月に結成された、3MC+Bass+ Drum+Guitar+Saxのバンド編成によるヒップホップグループ。大阪を中心にライブ活動を展開し、2001年に1stミニアルバム「ONE DAY」を発表した。その後は「SUMMER SONIC」をはじめとするフェスやイベントに多数出演し、2006年10月に自主レーベルから発売したアルバム「FONKY & LOVE」はヒップホップの枠を超えて多くの音楽ファンに支持された。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はBASI(MC)、サッコン(MC)、TAKU(G)、syhou(B)、TAROW-ONE(Dr)の5人編成で活動中。結成15周年を迎えた2013年の9月には通算5枚目のフルアルバム「HIPSTORY」を発表した。